2015年5月にWOWOWで放送されるドラマ「僕の妻と結婚してください」。
大胆なタイトルに惹かれて気になり調べてみると原作本がありましたので、市内の図書館で借りて早速読んでみました。
著者は売れっ子放送作家の樋口卓治さん。処女作とは思えない作りこまれたストーリーについつい涙してしまいましたが、
余命を宣告された人の突飛な生き方に賛否両論もあるようです。
まあでも、難しく考えずに放送作家で愛妻家の生き様を感じることが出来るのは確かです。
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同じ放送作家としての主人公
恥ずかしながら放送作家の方までは名前を存じ上げないので、この本を手にとって初めて樋口卓治さんを知りました。
この人、すごい方なんですね(笑)。
さんまのからくりテレビ、学校へいこう、笑っていいとも、ココリコミラクルタイプなど、まだまだ書ききれませんが、
人気番組を担当していた作家さんで、今でも10本以上抱えている多忙でやりての方だったとは・・。
そんな業界人さんということもあって、放送作家という設定は、
彼にとって得意分野であり、水を得た魚のようにスラスラとストーリーが出来上がっていったのだと思います。
内容はもちろん業界にまつわる事がポンポンと出てきて、少しだけTV局の仕事も垣間見れる作品になっています。
主人公は45歳で勤続22年、著者の樋口氏も業界ではベテラン。
人脈を活かして残り少ない人生、妻の結婚相手を探すことに全力で取り組む姿が描かれます。
本から読み取る良い夫婦像
仕事が忙しく、すれ違いが多くなる中、主人公・三村修治は、
「僕は家族のことを思って頑張っている。だから、三村家はそれぞれ頑張っている家族でいよう」
受け止め方は人それぞれだけど、場合によっては夫婦の溝を作りかねない言動ですが、
家庭を顧みなかったわけではなく、彼は仕事の愚痴をこぼさず、家族の前では明るく振舞い、
おちゃらけることで笑顔の出る明るい家庭を作っていた。
仕事一筋で家事・育児を妻に押し付けるところがあり、愚痴もこぼしたくなるけど、
夫のことを理解し、全て受け入れていた妻の彩子。
放送作家の夫が担当する番組をこっそり見て笑い、夫の前では別の番組を見て笑うのは、
夫がつけあがるからなのだという。
リビングに飾られた家族写真は全員しかめっ面で、
はたから見たら「なんでこの写真なの?」と思いたくなるような表情。
でも彩子にとって家族3人で共有したその時間を思い出すことが出来るからなのだろうと思う。
夜遅くに帰っていた夫が明日の弁当のおかずを食べてしまってもよいように、
冷蔵庫の手間にダミーを置いておく妻は完全に夫の性格を把握。
夫婦円満の秘訣は夫が仕事に全力で取り組める環境であることと、
夫を立てつつも実は妻の掌で踊らせているという構図が一番理想的なのでしょうか。
また、夫婦仲が良いと、この三村夫妻の一人息子のように良い影響を与え、
特に父親の頑張っている姿に「自分も頑張らなきゃ」と思うことは素晴らしいことです。
そんな理想の家庭に悲劇が起きる
40代、脂ギッシュでバリバリ仕事をこなし、これからという時に、まさかの余命宣告。
すい臓がんで、余命6ヶ月だという。
妻に何て言おうか、言えるのか、
結局、三村は言えないまま、延命治療をせずに、家族の前では明るく振る舞うという決断をくだした。
そしてあろうことか自分の死後、家族を守ってくれる男性を、妻の結婚相手を探すという、
とんでもない企画?を考え、それを実行することに。
妻に言わないこと、結婚相手を探すことなど非現実的な世界に入っていきますが、
余命数ヶ月を冷静なまま過ごすことが出来ない、
家族に打ち明けて悲しみのどん底を共有するのは耐えられないと考えた結果らしい。
彼の仕事のモットーである
「世の中の出来事を好奇心で楽しいに変換する仕事」
を、人生にはめ込んで貫いてしまった夫に、当然ながら事実を知った妻は発狂です。
だって余命残り1ヶ月を切った(余命が分かる書き方になっています)段階で、
夫から打ち明けられたら冷静でいられないのは当然です。
しかも「誰かとお見合いしてくれないか」と言われたら・・・。
放送作家の夫が何を考えて生きているのかだいたい分かる妻でさえも
この時ばかりは受け入れられない事を突き付けられたわけです。
しかし、身勝手でわがままな夫の生命はいつまで続くかわからない・・。
放送作家の妻が考え抜いた末、とった行動は。
妻の悲しむ顔が見たくない、家族を路頭に迷わせたくない、
馬鹿だけど真剣に家族を思い愛妻家だった男の姿に思わず泣いてしまった私。
その夫のわがままに最後まで付き合った妻の彩子もまた、夫を心から愛していた、という心温まる話でした。
これをWOWOWでウッチャンがやるのか・・。
見たいけど、見れないんですよね^^;
小説は5段階評価で5を付けたいと思います。
同じ業界人の川村元気さん著書「世界から猫が消えたら」の感想はこちら。