三浦春馬さん主演映画「真夜中の五分前」原作小説の感想

映画情報 / 「真夜中の5分前」、2014年12月27日~ ロードショー

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見どころ

  • 真夜中の5分前とは何?
  • 私は誰?似過ぎた双子に生まれた女達の迷宮ミステリー
  • 生き残った双子の1人は、誰を愛する誰なのか?
  • 違いの無い双子を愛した男達の苦悩

読後感は、ミステリー要素がハッキリ確定しないまま終わるモヤモヤ
が残りながらも、ほんのり明るく爽やかな好印象を持ちました。
ラストで、やっと主人公が長い呪いから解き放たれた感覚です。

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原作を読み終えた直後に映画の予告動画を覗いてみたのですが、
その変わりっぷりに驚きました。

原作を日常に見え隠れする非日常ミステリー、という解釈をして
読んだからかもしれません。

毎日の生活の中で起こる淡々とした退屈な時の流れが、後半に起こる
ブラックミステリアスに塗りつぶされちゃうギャップが好きです。

それに対して映画は、色々と雰囲気があり過ぎじゃない?という印象。

映画での舞台は海外(原作は東京?)で、過去に縛られている主人公は
時を扱う時計修理人(原作はサラリーマン)…。
恋する相手は見分けのつかない異国の美人双子のひとり…。

ロマンチック好きの人が楽しめる設定になってそうですね。

そんなこんなで映画と原作は色々と違いがありますが、原作となった
小説の感想をまとめます。(一部ネタバレ含みます。)

真夜中の5分前とは何?

まず、気になるのはタイトル。
この小説における「5分前」という単語について説明します。

20歳頃の恋人・水穂は、わざと時計を5分遅らせて楽しんでいました。
皆は翌日0:00、でもまだ私は23:55=5分余った世界を楽しむのです。

クールに考えれば、通学やバイトなど決められた日常生活においては
その5分のしわ寄せに苦しむ事になりそう。水穂ちゃんロマンチスト。

私は、逆に時計を5分ほど早めて生活していた頃があります。
よくある遅刻予防のためですが、出勤まで残り5分しかない世界が実際
には10分あるのですから気持ちが少し優雅になります。現実的な私。

こんな正反対な私なので5分遅らせる楽しみは分かりませんが、
主人公は水穂の交通事故死後も5分遅れた時計を6年間使い続けます。

表面上はクール、しかし物事に淡白過ぎるのは奥底で苦しんでいるから
なのでしょう。普通に暮らしている様に見える主人公は、孤独そう。

そんなガチガチに固まった主人公のハートにひびを入れたのは、
偶然出会った魅力的な美人女性。この女性との出会いで新たな苦しみも
生まれたけれど、5分のずれを上手く使えるようになるのでした。

原作の「5分前」は、ミステリーではなくロマンチック要素かな。
日付が変わる真夜中の5分前、儀式的な5分間と言えると思います。

主人公の甘いのか塩辛いのかは分からないけど、キラキラした5分間を
ラストでふんわり楽しめました。

最後まで読んでみると、主人公はずっと遅れた世界に住んでいたかった
のかなと思えます。水穂のためではなく、自分を騙すために。

会えないから会いたくないと思い込み、愛なんて無かったと思えば
失わないから。でも結局、それで自分を苦しめていたわけですが。

後半では、似過ぎた双子に関連して感じたことをまとめています。

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違いの無い双子

26歳男性の物語なので、仕事を中心に日常に起こりうる悲運や幸運、
ありうる仕事の悩みと成功、身近な恋愛がベースの物語が描かれます。

そこに舞い降りる一人の天使。みたいに、少し日常とは違う美女と
偶然出会い友人の様な関係になるのですが…この魅力的な美女が
この世に2人も居たから混乱!

まるっきり同一の双子姉妹は、産んだ母親にも区別が付かないくらい。
付属品の服装や髪形でしか区別が付かず、仕草も表情もまるで同じ!

見た目だけでなく中身にも違いが無いので、双子の姉妹本人達も
自分が誰なのか分からなくなるくらい酷似しています。

(似過ぎている不安とミステリーと言えば、「複製された男」という
小説を思い出します。自分と違いの無いコピー人間が存在したら自我
が不安定になるのでしょうかね?)

「似過ぎ」に苦しむ姉・かすみや主人公も含めて、明るくなりそうな
展開の前半を終え、後半は一転。双子の一人が海外旅行中に事故死して
しまうことで、あっけなく均衡が崩れてしまいます。

本当はどちらが、生き残ったのか?

後半は「似過ぎ」たことを原因に男達も巻き込み不穏な緊張j感が流れ、
前半のかすみのブラック思考の伏線がミステリー性を増殖させます。

読者の私も読みながら、そして読んだ後もまだ疑いが取れません。

愛が過去に変わってしまう…、
主人公達の結末がどう進むのかは彼らの選ぶ道で文句は言えないけど、
均衡が崩れた儚さが漂います。

愛情とは何なのか?考える物ではなく、感じる物なのかな。

もやが晴れない結末でしたが、生き残った女は新しい環境で双子が融合
した感覚で幸せに生活出来るのかもしれないと思えてきました。