2016年11月3日に公開されることになった今作。
だらしない叔父さんを演じるのは松田龍平、そして一目惚れのお相手は真木よう子。甥も巻き込み彼女を追ってハワイにまで行ってしまうというドタバタ恋愛コメディ。叔父さんの恋の行方はいかに?というのが映画のストーリーのようです。
さて、兄の息子(甥っ子)目線で描かれるこの作品の原作は、1972年発行なので40年以上も前の物語。北杜夫の実体験を元に作られた半分リアル半分創作のユーモア溢れる児童文学作品で、子供が作文を書いたような文体で読みやすく、大人も子供も温かい気持ちになれるそんなほっこりとした作品です。
もくじ (文字クリックでジャンプ出来ます)
あらすじ
2つの大学に臨時講師として勤務しているお父さんの弟、つまり僕(雪男)の叔父さん。週に8時間しか働かないので、当然収入も少なくアパートを借りることが出来ないので僕の家に居候しているのだ。
野球の人数が足りない時に叔父さんが「ピッチャーだったらやってやる」というので頼んだらボロボロに負け、漫画本をお金を出し合って買わないかと言ってきたり・・・。布団の上でいつもゴロゴロしているのでボクのお母さんから「万年床はやめてください」と言われる始末。
でも本人いわく、怠けているわけじゃなくて難しいことを考えているらしい。でも小学校のぼく(雪男)は気づいている。叔父さんは何か考えているわけじゃなく漫画本を読んでいることを。
そんなだらしない叔父さんにも見合い話が舞い込んだ。自宅に来てくれた相手の女性は、出されたものを全て平らげてしまうほど勢いのある人。叔父さんはと言うと、トンチンカンなことばかり言って、どこかいつもとは違う様子。相手の女性が帰ると、いつもの叔父さんに戻り女性の悪口を言い出す始末。僕たち子供には威勢のいいこと言うけど、女性はどうやら苦手らしい。
そんなダメダメ叔父さんが海外に行くと言い出した。もちろんお金なんて持っていないので懸賞を当てて行ってくるという。いろんな商品の懸賞に応募するけど案の定、当たるはずもなくショックを受ける叔父さん。
でも実は雪男がこっそり海外旅行が当たる作文コンクールに応募していたのだ。題材はもちろんダメな叔父さん。見事当選してしまい、叔父さんとボクが一緒に行くことになったハワイ旅行。
はじめての海外、しかも叔父さんと二人。一体どんな旅になるのやら・・・。
というのがこの物語のストーリーです。子供の作文のような文体なので、読みやすくページ数も少ないので直ぐに読めます。
「ぼくのおじさん」の感想
※多少ネタバレあります
カレーライスが70円、ドル円が360円の固定相場ということは60年台辺りのお話でしょうか。人口が増えたとかどうとか、そんな時事にも触れつつ子供目線で描かれるおじさんとの思い出。
作者の北杜夫は大学病院の勤務医として働いていた時、給料が全然無かったので兄の家に居候し、母親からお小遣いを貰っていたとか。兄の家には子供が4人いて、お小遣いなんてあげたことが無かったらしく、しかも作中にも出てきたように漫画本の代金を子供と出し合って買ったという逸話もあるそうです。
だから子供たちからは尊敬されないダメな叔父さんだったのはある意味事実で、創作もしやすかったのかなと思います。
兄夫婦の家の居候し、ノーテンキでだらしないけど、どこか憎めない叔父さん。甥っ子の雪男くんは子供だけどしっかりしていて、叔父さんにあきれているけど、気を使っているところが微笑ましい。
はじめて買ってきてくれたお土産はおもちゃのムカデで家中大騒動になったり、珍しく見合い話が舞い込んだり、最後は二人でハワイ旅行。
ハワイでは豪華なホテルに泊まった後、安いホテルを探す叔父さんが迷子になり、現地の日系アメリカ人のお宅に世話になる雪男。迷子になった伯父さんは無事見つかり、また行動を共にしますが、現地の人に「あなたは帰ったほうが良い」と言われてしょんぼりして帰る叔父さんがなんだか可愛そうでした。
雪男も自分だけハワイに残るのは気が引ける、叔父さんの寂しい後ろ姿を見て感傷的になったけど、ふと考えてみた。
叔父さんが日本に帰ったら得意気にホラ話を家族にするのだろうと思った雪男はクスッと笑ってしまったのです。自分にとってたった一人の叔父さん。情けないと思いながらもやっぱり雪男くんは叔父さんのことが好きなんだと思えるラストでした。
雪男くんが1人ハワイに残って物語が終わってしまうのは、何だか中途半端な気もしますが、最後の一文で家族愛がしっかりと伝わった心温まるストーリーだと思います。
子供も安心して読めますのでオススメです。