映画「世界から猫が消えたなら」原作の感想ネタバレあり・評価悪いのはなぜ?

2016年5月14日に公開された映画「世界から猫が消えたなら」。

地元の図書館にありましたので、早速借りて読みましたが、

Amazonは星3つと微妙な評価ですが、何故でしょう。

作者は電車男とかモテキをプロデュースした売れっ子の川村元気氏。

大々的に告知していたので期待した程ではなかったという感想が多いようですが、

彼の処女作なので寛大な気持ちで読むべきなのかな。

それではあらすじから簡単にご紹介したいと思います。

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もくじ (文字クリックでジャンプ出来ます)

あらすじ

主人公のボクは医者に脳腫瘍で余命わずかと宣告される。

そんなところにヒョッコリ現れたのが、軽いノリでアロハシャツがトレードマークの悪魔。

姿形は主人公とそっくりで、はっきりと「あなたは明日死にます」とボクに告げる。

 

しかし、世界から何か消せば1日生き長らえると悪魔が囁く。

電話、大好きな映画、父の仕事と大きく関わりのある時計、

一つずつ消していくと世界はどのように変わっていくのか。

そして最後に世界から猫が消えたら・・・。

愛猫のキャベツ君との思い出、亡くなった母親との思い出、

よみがえる記憶とともに消すべき命の選択に迫られる主人公が下した結論とは・・・。
そして彼は余命宣告を受けて何を悟ったのでしょうか?

 

「電話」

母さんが死んでから4年、となり町で時計店を営んでいる父さんとは一度も連絡をとってなかった。

消す前に一度だけ携帯を使わせてくれるというが、頑として父親にかけようとしないボク。
この段階では父子の確執は見えてこない。一体この二人に何があったのだろうか。

大事な最後の電話の相手が見つからないことに自分の交友関係の薄っぺらさに情けなさを感じながらも
携帯に登録していない”あの人”の事がふと頭をよぎった。
大学時代に付き合っていた彼女に電話して、今自分に起きていることを話したい。

この世から何かが無くなると一体どうなるのか?
未知の世界に足を踏み入れてしまったボクですが、
「何かを得るには何かを失う」という母の言葉と、海外旅行先で出会ったトムさんの
「この世界には残酷なことがある、でもそれと同じくらい美しいものもある」
今しっかりと二人の言葉を噛み締めながら、電話が無くなった世界で彼女と向き合っている。

脳腫瘍のせいなのか、彼女と別れた理由も思い出せないし
彼女の好きな食べものも思い出せない。

電話を無くすと決めたのはもちろん悪魔だけど、
考えてみたら彼女と心地よい時間を共有できたのは電話のおかげだった。
会って話すと口数が少なくなるボクだけど、何故か電話だと饒舌になり彼女を楽しませることが出来た。

一番初めに消してしまったものはボクにとってとても大切なものであり
1日と引き換えに、これから新たに何かを消してしまって良いのか?
僕はとても恐ろしいことを初めてしまったのかと不安になるのでした。

 

「映画」

次に消してしまうのは映画。趣味が無くなってしまう、という薄っぺらな不安よりも
とても大事なことがこの世から消えてしまいそうな予感がする。

ふと思う、中学の時に映画好きの親友の影響で自分もどっぷりとハマったことを。
そうだ、彼に意見を聞こう、彼女と最後に観る相応しい作品がなにかを。

でも考えてみたらこの世から映画が無くなると彼と過ごした思春期の数年間や3歳の時に両親に映画館に連れられて
初めて観た「E.T」に感動したことは記憶から消えてしまうのか。
そしてこれまで観てきた作品の名台詞は言えなくなってしまうのか。

ボクは結局何も選ばなかった。
真っ白なスクリーンを眺めながら記憶を辿り、映画とともに成長した自分の姿が映しだされているようだった。

「事実は詳説よりも奇なり」

振り返ると平凡な毎日の中に喜怒哀楽が詰まったノンジャンルの最高のストーリーがそこにある。
母が拾ってくれた子猫のレタスとキャベツ、母の死、幼いころあんなに仲が良かった父。
気がつけば2時間の上映時間は瞬く間に過ぎていき、彼女の声にふと我に返る。
今の感情は正直わからない。でも彼女の最後の質問には的確に答えることが出来る。
悲しい結末の作品はハッピーエンドになるかもしれないからもう一度観るということを。

家に帰るとまた母の言葉を思い出す。
「大切なことは、失われた後に気づく」

これ以上何かを消してしまって良いのだろうか・・・
一度スイッチが入ってしまったボクは1日1日を生きながらえることしか頭になかった。

「時計」

「早く起きるでござるよ」・・・・・、

主人公のボクにとって大切な「電話」と「映画」を消してしまったので、
ささやかなサービスをしてくれた悪魔。そう、キャベツがしゃべるようになったのだ。
いきなり「ござる」と言われて戸惑うボクですが、そう簡単に元に戻せないらしい・・。

さて、次に悪魔が消してしまったのは「時計」
もちろん真っ先に頭に浮かんだのは時計店を営む父親。

黙々と時計の修理をする後ろ姿が目に焼き付いており、
4年も会っていないけどさすがに心が痛むボク。

そして時間の概念が無くなってしまったこの世界でどうやって生きていくのだろうかと
物思いにふけっていると、足元でキャベツが散歩に行きたいと言い出す。

キャベツと話してみると、どうやらボクは彼のことを全く理解していなかったようだ。
食事したい・寝たい・散歩したい、どれも見事にズレていたらしいが
これからは意思の疎通が完璧に行える・・・とても短い時間だけどね・・。

キャベツと散歩に出かけると、幼いころに母親と散歩した思い出が甦る。
とても幸せな時間だったし、キャベツも母親と散歩に出掛けていただろ?と聞くと
母さんの事を知らないという。

嘘だろ・・・・?。

ボク以上に母親と過ごした時間は圧倒的に多いはずなのに忘れてしまったのだろうか。
もしそうだとしたらボクのこともいずれ忘れてしまうのだろうか・・?。

無邪気に見つめるキャベツを見ながら、ふと当たり前に過ごしてきた過去を悔やむ。
時間に縛られて生きてきたのに一切時間を気にすること無く生きてきたけど
今はその逆で時間の概念がなく更に限られた未来だと知ると、急に恐ろしくなる。
時計をなくして改めて時間の大切さを痛感したボクなのに、命が欲しく、まだ何かを消そうとしている。

この章ではもう一つ大切なことが書かれている。
生前母は最後にもう一度だけ家族で旅行に行きたいと提案し、
父親もキャベツも連れて皆で行くという母の願いを受け入れ、仕方なく父親を誘い
本当に最後の家族水入らずの旅行に出かけた。

余命わずかの母は、父とボクの関係を少しでも改善したい、という思いから
貴重な時間を使ってくれたことになる。
時計がこの世から消えたことで、時間の大切さと母親の家族愛を改めて感じるボク。
もう消さないほうが良いいと思うけど、背後で悪魔の笑い声が聞こえてくる・・・

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「猫」

もし、キャベツが居なくなったら・・・
猫を亡くす悲しみは、母とボクは先代のレタスでとても辛い経験をしているだけに
キャベツが突然居なくなる世界なんて想像できないし、そんなことは望んでいない。

でも、朝起きるとキャベツがいない。
あの子が行きそうな所は全部探して、最後にたどり着いた彼女の映画館でようやくキャベツを見つけた。
キャベツの安否が確認できると目から止めどなく涙が溢れ、彼女の前で泣いた。

そんな情けないボクの姿を見た彼女は母から預かっていたという手紙をくれた。
母曰く、別に渡さなくてもいいし、誰かがこれを持っていてくれるだけでいい、とのこと。
ボクと別れた彼女は母と仲が良かったし、大切に保管してくれていたのだろう。

母の手紙を読むと、ボクと同じ様に死ぬまでにやりたいことが書かれており
でも決定的にボクと違う所は、「あなた(ボク)のために何かしたい」という気もちと
ボクの長所があふれるくらい書かれていた。

そんな母親の愛情を改めて感じたボクはまた涙が溢れ出て止まらない。
母親と楽しい時間を過ごした子供時代の記憶がまた鮮明に蘇る。

「悲しい時は笑ってごらん」

いつも泣いてばかりいたボクに、そんな優しい魔法の言葉を掛けてくれた母。
母親の記憶を蘇らせてくれたキャベツを消さなくてよかった・・・
いや・・・消そうなんて思ったこと無いよね・・。

「お母さん、ありがとう」

自然とそんな言葉が出てきたけど、手紙の最後に、お母さんの願いが書いてあるから
ボクはそれを実行しなければいけない。

「お父さんと仲良く暮らしてね・・」

ラストはどうなってしまうのか、
長くなってしまったので2ページに分けました