クリス・カイル・軍人としての生涯、カウボーイ魂は今も生き続ける

イラクの反政府武装勢力を相手に数々の武功をあげたクリス・カイル。

敵からは「悪魔」と呼ばれ恐れられていた彼ですが、残念ながら2013年にPTSDを患った若者の手によって亡くなってしまいました。

今回、書籍「ネイビーシールズ最強の狙撃手」からクリス・カイルの生涯と気になるエピソードをまとめてみました。

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出身、子供時代

クリス・カイルはテキサス州の中心部にある小さな町で、

信仰深い両親のもとで育ちました。

じゃじゃ馬を慣らし、カウボーイのような生活をしていたカイルは牧場経営に興味を持ちつつも

祖父が陸軍航空隊のパイロットだったため、海兵隊員になることも夢見ていたようです。

 

しかし、大学進学を強く進めていた母親の意向を尊重し、

まずは大学に進学し、経営学の道に進むことになります。

 

カウボーイの象徴であるロデオ乗りで思わぬ事故

ロデオ乗り

大学1年生の時、ロデオ会場で暴れ馬がカイルの上でひっくり返り、

下敷きになり、蹴飛ばされ、意識を失うほどの大怪我を負い、気づいた時は病院へ向かうヘリの中だったそうです。

その事故で、打撲・骨折・脱臼し、手首はフランケンシュタインのようにボルトが飛び出した状態で生活。

そんな状態で彼女とデートし、あろうことか腕から飛び出したボルトを

へし折ったエピソードはあまり知られていないでしょう。

 

諦めていた軍隊入り、からの急展開

ロデオの事故で腕にボルトが入った状態のカイル。

海軍では問答無用で不適格と言われ、半ば諦めかけていた矢先に

募集担当官から「まだシールになりたいか?」という意外な電話に戸惑いながらも海軍入りを決めたようです。

 

過酷な訓練・ヘルウィーク

自分の限界に挑戦するために海軍に入ったとはいえ、

ヘル・ウィーク(地獄の週間)を乗り越えられる人はごく僅かだといいます。

上でご紹介したYoutubeの動画で、その苛酷さが分かりますが、

132時間休むこと無く活動しなければならず、9割が脱落すると言われています。

 

クリス・カイルはどうだろうか、

彼はヘルウィーク初日か、2日目にゴムボートを岸へ引き上げる際に、

足へ落とし骨折してしまったらしい。

しかし申告して軍の医者に診てもらうとヘルウィークを最初からやり直さなくてはいけないため、

黙っていたようです。

 

骨折というハンデーを背負いながらも訓練を続け、

ただひたすら食事の時間まで耐える、その繰り返しが続き、

中盤に差し掛かったところで「行けるかもしれない」と悟ったようです。

 

実はこの試験、

ひとつだけ簡単に終わらせることが出来る方法があります。

 

それはベルを鳴らし「やめます」と宣言すること。

そうすれば温かいコーヒーとドーナツにありつけるそうですが、

それと同時に今までの苦労が全てが無駄になってしまうのは言うまでもありません。

 

この過酷な訓練は隊員の精神力を測るもので、

多くの脱落者が出るが、役に立たない人間をふるい落とすための試験と言われています。

実践では「やめます」は通用しないですからね。

 

タヤと結婚、慌ただしいハネムーン

2001年4月にバーで運命的な出会いを果たしたカイルとタヤ。

結婚前に世間では大きな出来事がありました。

忘れもしない世界貿易センタービルに旅客機が追突するという痛ましい事件後は、

アフガンや中東に対応した訓練をし、実戦配備まえに結婚式とハネムーンを済ませたようです。

 

カイルは結婚式前に海軍の恒例行事である”いじめ”の洗礼にあい、

上半身の前と後ろにプレイボーイのあのうさぎ柄をスプレーで落書きされ、

式の間中はボタンをしっかりと留めて見えないようにしていたのは良い思い出になったことでしょう。

 

戦地での負傷

銃撃戦の最中、対戦車兵器RPGの攻撃で壁が崩れ、その崩れたコンクリートが足元へ直撃し、

その後長い間足を引きずりながら生活していたそうです。

結局手術をしなければいけなかったのに2年もの間引き伸ばしにしていたのは

戦前から離脱したくなかったという戦いへの執念深さが伺えます。

 

最長距離射殺記録

1500m以上も離れていると、さすがに撃ってこないと判断した反政府武装集団。

しかしカイルの手にかかれば、いくら1900m離れていようが関係ないらしい。

命中し倒れた敵の回りは慌てて逃げ出したそうです。

この時、スコープのダイヤルでは調整できなかったので、

付近に立っている1本の木を頼りに照準を合わせて引き金を引いたそうです。

「伝説野郎」というアダ名はここから生まれたそうです。

 

秘密の握手

チャレンジコイン

貢献した部隊に贈られるチャレンジコイン。

特にSEALSのチャレンジコインは価値が高く、喉から手が出るほど欲しがっている隊員もいるので

いざというときは持っていると、何かと役に立つようです。

クリス・カイルも正規の手続きでは困難なときは、このコインを使って秘密の握手をし、

相手方の特権を活かして難を乗り切ったことがあるようです、

 

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変わるアダ名

先程もアダ名は触れましたが、

SEALSに入隊した頃は、テキサス出身だったこともあり

「テキサス野郎」と呼ばれていたカイルですが、

長距離射殺を成功させてからは「伝説野郎」に変わったそうです。

それ以外には皆さんも御存知、「ラマディの悪魔」という異名も持ちますが

これは敵方がつけたアダ名ですね。

 

娘の病気で帰国

2006年9月、

妻のタヤからの連絡で一時帰国することになったカイル。

どうやら娘が病気で感染症を患っており、更には白血病という不安も抱えていた。

しかし精密検査で大事には至らず、娘の様態も快方に向かってほっとしたわけですが

この時のカイルの精神状態はかなり不安定な状態であったことは間違い無さそうです。

 

なぜなら2名の退院が負傷し、一人は死亡、目の前で仲間が撃たれたことの

ショックで心身ともに疲労とストレスが溜まっていたのでしょう。

 

退役後、負傷したライアンは結婚して妻が身ごもった後に亡くなられてそうです。

ライアンはムードメーカーでカイルも可愛がっていた仲間。

その訃報を伝えたのは「アフガンたった一人の生還」のマーカスラトレルだったそうです。

 

けんかで暴行事件発生

軍人と言えばプライドが高く、売られた喧嘩は必ず買うというイメージがありますが

まさにカイルもその通りの人間だったらしい。

確かに自分から喧嘩を売りに行ったことはないらしいですが、

バーによく通っていたこともあり、荒くれ者と遭遇する機会も多かったと思います。

カイルいわく、

「SEALSにとって喧嘩は日常だ。わたしもいくつか派手にやった」と語っていますが

その中でも2007年4月に難癖をつけてきた格闘家と喧嘩をした際に

警官が駆けつけ、暴行容疑で逮捕されたそうです。

 

妻を心配させる、このような問題行動は他にもあり、

この時、夫婦の距離が離れていったのは確かです。

 

妻タヤの心境を引用すると、

「自分がクリスの人生の中で一番大切なものではないのだということに気づいた。言葉では何とでも言える。でもクリスの心はここにはなかった」(引用「ネイビーシールズ最強の狙撃手」)

お互いに心が通い合っておらず、家族から心が離れていったのを感じ取っていたようです。

しかし、夫を愛しているということは事実で、子どもと接してるカイルの父親らしい姿を見ると、

前に進まなければいけないと自分を奮い立たせたのでしょう。

 

そう言えばSEALSの離婚率は実に90%を超えるというデータが有り

カイルもまたタヤと結婚する前に一緒になるべきかと考えたこともありますが

そうした一般的なデータよりも自分たちがどうしたいのか考えた時に

結婚を選んだのでしょう。

 

ただ、彼らの夫婦生活を垣間見ると、家族にとって辛いことがあまりにも多すぎて

離婚に至ってしまうのも分かる気がします。

 

クラフトインターナショナル社

クラフトインターナショナル

公式サイト

 

イギリス軍に25年勤務していたマークスパイサーとともに立ち上げたのが

「クラフトインターナショナル社」です。

意外と軍や警察向けの特殊な訓練は需要がある、ということに気づいたのが始まりだったらしい。

 

このクラフト社のロゴであるスカルマークは

「母親の教えに反して・・・、暴力で問題は解決する」

というスローガンと、命を落とした仲間に敬意を表しているそうです。

 

仕事か、家族か

アメリカなので仕事よりも家族を優先する方が多いと思いますが、

カイルは 仕事>家族 という考え方で、

積極的に戦地に行くことを望んでいたわけですから、当然妻と意見衝突が絶えなかったことでしょう。

しかし一般的な「仕事か家族か」という次元ではなく

国家が関わってくるので、事情も少し込み入っており、致し方無いと考えるべきなのでしょうか?

ただ、家で待つタヤは家族を優先してほしいと願っているし、

夫・父親は貴方しか出来ないけど隊員は補充すれば良いというごく自然な考え方をしてるわけです。

 

そんな妻の苦悩も、退役後は時間が掛かりましたがちょっとずつ家族の大切さや

優先すべきことをカイルなりに分かってきたのだと思います。

現在も生きていたら良き夫、良きパパで幸せな家庭を築いていたでしょう。