2018年7月19日21時からテレビ朝日系で放送されることになった今作。
2003年に既にNHKでドラマ化されていますが、二作目が発売される前に放送された作品です。そして今回夏に放送されるドラマは、一作目と二作目を原作とし、更にオリジナルの書き下ろしを著者の真山仁さんにお願いしたそうなので、NHKよりもさらに深みのあるストーリーになりそうな予感が!
今回は、ドラマが始まる前に小説が気になったので、読んでみましたが
「実に面白い!」
その面白さを、今回皆さんに徹底紹介したいと思います♪
もくじ (文字クリックでジャンプ出来ます)
主要な登場人物紹介
本当は登場する人物全員を紹介したいところですが、初めて見に来られた方は混乱してしまうので、主な登場人物だけを絞って簡潔に紹介しますね。
鷲津政彦(わしずまさひこ)
音楽大学の名門ジュリアード音楽院卒業。ニューヨークの若きジャズピアニストとして将来を嘱望されていたが、ある事件がきっかけとなり、日本で投資ファンド「ホライズン・キャピタル」の代表として活躍する。彼の巧みな交渉術は商いの名人と言われた祖父の影響が強い。ピアノの腕前は確かで松平貴子が感動して涙するほど。
芝野健夫(しばのたけお)
東大法学部卒。三葉銀行の行員。ニューヨーク支店勤務後、資産流動化開発室長に就任し、不良債権処理チームのリーダーとして活躍。後に三葉銀行を去ることになり、同級生が経営するスーパー「えびす屋」の社長として経営再建に挑む。鷲津に対してはあまり良い印象を抱いていないため、彼からの誘いを一度断っている。貴子に対しては外部の相談役としてサポートする。
松平貴子(まつだいらたかこ)
日本最古の名門リゾートホテル「日光ミカドホテル」を運営するミカドグループの社長を父に持つ。頑固で偏屈な父のせいで後継者問題に直面。後に貴子がミカドホテルの社長となり、妹とともに経営の立て直しを図る。スイスのローザンヌホテル大学に留学。ロンドンのザ・リッツに2年間修行したあと、東京にあるロイヤルセンチュリーホテルにフロントマネージャーとして就職。偶然にも鷲津とプライベートで出会っており、徐々にビジネス以上の感情を抱くようになる。
アラン・ウォード
ハーバード大出身。日本語を流暢に話す。ブロンドで青い目、そして甘いマスクのナイスガイだが大のテレビゲームオタク。なのでリンから度々「ぼうや」なんて言われることがある。しかし鷲津に鍛えられたその腕前は確か。実はゴールドバーグ・コールズの証券部に在籍していたが上司から鷲津のもとで修行しろと言われ、ホライズンに出向。鷲津という男に惚れ込み、ゴールドバーグに戻らずに彼の下で働くようになる。
リン・ハットフォード
ファイナンシャルアドバイザーのゴールドバーグ・コールズに籍を置く。ブロンドでショートヘア。身長は170cmと高身長。大きな目と鼻筋が通った美しい顔立ち意志の強そうな唇が強烈な存在感を放っている。芝野いわく、一流ファッション雑誌から飛び出してきたような人。基本的には冷静で姉御肌のような言動があるが、一度感情的になると鷲津でもお手上げ状態になることも。ビジネスに私情を持ち込むことを嫌い、同性に厳しい一面がある。と言っても鷲津に対しては私情を持ち込んでいるような気がするが・・・。
飯島亮介(いいじまりょうすけ)
大阪出身 慶応の経済卒業後、三葉銀行にキャリア採用で入行。常務取締役・総合企画部長。芝野の上司。陰謀家という印象が強く大の外資嫌い。脇役だけどこの物語のキーマン。鷲津をこの世界に引き込んだ原因を作った張本人。
「ハゲタカ」原作小説のあらすじ※ネタバレあり
出来るだけわかりやすく、そして専門用語は解説付きでご紹介します。
三葉銀行のバルクセール
バブル時に作った負の遺産を処理するためにバルクセールを行うことになった三葉銀行。
バルクセールとは
融資の回収が困難になった不良債権をまとめて売却すること。不動産の場合はキャシュフローがあるかどうか、つまり家賃収入があるかどうかで査定がきまり、なければほぼ無価値になる。通常は債権合計(簿価)の10~20%程度の売却額が適正と言われている。
三葉のアドバイザーを務めるゴールドバーグ・コールズのリン・ハットフォードはアメリカでその名を轟かせているファンド会社KKCの日本法人「ホライズン・キャピタル」の鷲津政彦を三葉に紹介。
ホライズンは総額720億円の債権を10%の72億で買い取り、234億円で売りさばいたというのだから驚きです。
実は三葉銀行のアドバイザー、ゴールドバーグはホライズンと仲良し。本来なら三葉の利益を最優先に考えなければいけないのに、ホライズンと手を組んで利益を上げていたのです。
三葉銀行のバルクセールの担当者は芝野健夫。彼は少しでも三葉の利益になるように交渉を進めていたけど、結局、安く買い叩かれた事によって、ホライズンに不信感を抱いていました。で、2回目のバルクセールは数社が参加して、購入権利を競う形になったのですが、三葉の行員を買収し、見事バルクセールを購入する権利をまたまた獲得したホライズン。鷲津は芝野に「行員を買収したのは言いがかりです」と言ったのですが、真相はどうなんでしょうかね~。
ちなみに三葉の行員の買収疑惑はホライズンだけではありません(笑)。
ミカドホテルの経営危機と後継者問題
さて、ここでもう一人の主人公をご紹介しましょう!
日光、中禅寺、鬼怒川の3ヶ所にホテルを運営するミカドグループ。中でも日光ミカドホテルは日本最古のリゾートホテルとして名を馳せていますが、バブル崩壊後、経営は右肩下がりに。経営者である松平貴子の父は独立採算性にして各ホテルを支配人に譲渡したいと考えていましたが、他人に任せたくないので、娘の貴子に戻ってきてほしいと考えていました。
しかし貴子は海外留学後に東京のセンチュリーホテルに就職し、戻る気は無かったのです。というのも父から恋愛を反対され、二度と戻ってくるなと言われた過去があったのです。
事情が変わったとはいえ、貴子は昇進の話も控えており、そう簡単に戻ることは出来ません。
ちなみに貴子は妹の珠香(たまか)がいますが、妹の夫は会社のお金を持ち出して女性スタッフと蒸発。その後、別の男性を連れてきましたが、これが頼りなさそうな男で、「珠香さんと結婚させてください!ホテルの運営に参加させてください!」と言ったけど、父が反対すると、そそくさと逃げていった男。
ここからは姉の貴子がミカドホテルに戻ってきてからの話になるんだけど、妹は姉に「皿洗いでもなんでもやるからココに置いてください」とお願いして、それから姉妹でミカドグループを運営するようになるんです。
父親と貴子の後継者問題で色々ありましたが、他者の説得で身を引くことを決意した父。昇進の話もあり、絶対に戻らないと決心した貴子を動かしたのは尊敬する祖母の死でした。父も祖母には頭が上がらない大きな存在。
海外留学が出来たのも祖母のおかげで、彼女にとって祖母の存在は偉大でした。祖母は貴子に「自由に生きなさい」と言っていましたが、本心は戻ってきて欲しいと願っていたのです。
バンカーがスーパーの社長に転身!
三葉銀行の債権処理が一段落してから、芝野はバンコクへの異動辞令が出たのですが、これはもう栄転ではなく左遷です。上司に言わせると「お前は真面目すぎる。ある程度融通の利く社員でないとダメ」ということらしい。銀行を守るために不正もじさない覚悟はあるか?と言われると、芝野はそんな性格ではありません。銀行の将来を考えれば不正を正すべき、というのが彼の信条なのです。
この異動に納得できなかった芝野は考えること無く辞職を提出しました。
そこで以前、スーパーを経営する同級生の瀬戸山から、経営に行き詰まっているという相談を受けていたので、夢だったターンアラウンドマネージャー(企業再生家)という道に進んだのです。
しかし、これが一筋縄では行かなかった。
瀬戸山はスーパー以外にゴルフ場などを運営していましたが、これらを全て売却し、瀕死の状態を脱却。大掛かりな外科的手術で見事軌道修正に成功した芝野。
ですが、粉飾決済や企業年金積立金の不正使用などが発覚。役員らによって組織的に行われていたという。また、瀬戸山の妻や妹もサイドビジネスの穴埋めに会社のお金を使っていたのだから驚き。
そうした内情を芝野に言わなかった瀬戸山の責任は重く、芝野いわく刑事責任を追求されてもおかしくないのです。ということから、瀬戸山に対しては社長職を退いてもらうだけでなく、何億という役員慰労金の不支給、そして自宅や別荘などの個人資産を売却してもらうことに。
強欲な創業一家
大手菓子メーカー「太陽」の債権をめぐってハゲタカたちが熾烈な争いを繰り広げますが、この物語が盛り上がる話と言っても良いでしょう。
太陽は創業者一族が経営し、社長宅は豪邸で使用人付き。会社の金で豪邸や別荘を買い、趣味にお金を掛け、さらに損失や浪費の穴埋めもしていたという、まさに会社の私物化状態だったのです。
経営が悪化し融資の返済が出来なくなったのは、言うまでもなく一族経営者たちが原因です。
鷲津は太陽の債権を三葉銀行から買い取り、経営陣を刷新したかったのですが、経営者一族は「なぜ我々が辞めなければいけないのか?」と開き直り。しかも彼らが要求する内容は呆れるものばかりだったのです。
鷲津率いるホライズンは太陽の債権を持っていたので、強引になにかすることが出来ましたが、太陽が雇ったアドバイザーのメリレ・リンクが裁判所に手を回し、判断が下るまで何も出来なくなってしまう。
ちなみにメリレ・リンクの担当者の名前はボブスタンレーという男です(笑)。この2つの名称にピンときた方はいるはず。(メリルリンチとモルガン・スタンレーですね)
ということで、太陽のスポンサーを決めるための入札が始まり、数社が参加。最終的に残ったのがホライズンとゴールドマックスでした。(ゴールドマックスはゴールドマン・サックスです。)
一騎打ちとなった次の入札はサドンデス。常に相手よりも高く入札し、本当に支払えるかどうか、裏付けとなるものを用意する必要がある。
入札がスタートして、途中でホライズンは裏付けとなる書類に問題がると指摘され、窮地に立たされますが、なんとか乗り切り、今度はゴールドマックスを叩き落とすカードを鷲津は切ったのです。
相手側が提示しているジャンク債に問題があることを指摘。詐欺や証券法違反の疑いが5件、さらに民事訴訟が7件起こされていたのです。監査委員の弁護士はこの事実を認めて、相手の入札を一部取り消し、再度入札を求めましたが、ホライズンの入札金額を上回ることが出来ず、鷲津たちは勝利することが出来のです。
皆がハイタッチで喜ぶ中、鷲津は一人、素直に喜べませんでした。元々、ホライズンがスポンサーになることが決まっていたのに、更に60億円という大金を上乗せしてスポンサーを勝ち取った苦い勝利。
鷲津は、
ビットに勝ったが、この国に負けたんだ・・
と言っていましたが、日本の法のあり方に問題があり、守られるべきものはなにか?ということを改めて感じたのです。
いよいよ次のページでクライマックスへ