この作品に出会ったきっかけは、Amazonレビュー。他の著者なのですが、映画化されるので読んでみようと『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を買う時に見たAmazonレビューで『時尼に関する覚え書』というSF小説の存在を知り、凄く興味が湧いたので購入することに・・・
もくじ (文字クリックでジャンプ出来ます)
小説感想『時尼(じにい)に関する覚え書』
まずは、あらすじを紹介しますね。
あらすじ
主人公・保仁(ヤスヒト)が三歳の時に初めて会った、白いパラソルの初老の婦人。親しい知り合いの様だが、誰なのか分からない。なぜか涙をこらえているその女性は、黄金色の指輪を少年にプレゼントする。「また会うことになるわ」と言い残して・・・。
その女性が残した、たくさんの謎をこっそり抱えたまま成長していく少年は、数年ごとに再会する女性の外見が若返っていくのを不思議に思いながらも、異性として惹かれていく。
若返るたびに魅力が増す女性の名は、時尼(じにい)。かつて少年だった保仁(やすひと)は大人になり、いつしか同じ年頃に若返っていた魅惑的な時尼と恋に落ちる。奇妙で切ない恋人生活のその先は・・・
違う時間を生きる男女が惹かれ合い、運命的にめぐりあう物語。
感想(ネタバレなし)
思い返して「あらすじ」を書いているだけでも切ない~!とってもロマンチックでした♪
私の好みは、タイムリープなど時間にまつわる不思議話やファンタジー、神話、妖怪など。新井 素子さんのキュートでロマンチックなSFや、『なぞの転校生』のように昭和臭のするSFも好物です。
そんな私が今回、初めて梶尾真治さんの小説を読みましたが、摩訶不思議なSFと切ない純愛の絡み具合が好みにぴったり♪
たった38ページしかない短編なのですが、主人公の人生の大半が描かれ、深くて面白い物語♪単行本タイトルに書かれた『傑作選』という文字に思わず納得。
どうしようもなくて、切ないけど、なんかあったかい。過去と未来が影響し合う二人の深いつながりが、この切なさを中和してくれるのかしら。大人のラブロマンス~♪涙腺ジワッと来ちゃった。
巻末にあるデータを見ると、平成ホヤホヤ1990年に雑誌掲載された作品。当時の恋を知らない私ではなく、大人(アラフォー)になった今だからこそ満喫出来た物語だと思います。
ちなみに私は、この物語を読む前にネタバレ(展開と結末の大筋)を知っていたのですが、それが邪魔することはまったくなく、ぐぐっと引き込まれて「時尼ワールド」を楽しめました。
今回読んだ書籍情報
『美亜へ贈る真珠 短篇傑作選(ロマンチック篇)』梶尾真治
楽天ブックスで送料込み626円(新品だけどアンティークな紙色)でした。
「時間」にまつわる不思議で切なくロマンチックなSFショートストーリー、7つを収録した傑作選。各タイトルに女性の名前が入っていることも特徴のひとつなので、表紙イラストがレディースコミックみたいな絵柄ですが、男女関係なく楽しめるお話ばかりだと思います。
今回お目当てだった短篇以外に、とりあえずタイトルに使われているデビュー作『美亜へ贈る真珠』を読んでみましたが、こちらもロマンチックな良作♪32ページと短い物語ですが、主人公達の長い人生が描かれ、なんとも切ない結末を楽しめます。ラストシーン、主人公の男性と孫の会話に胸がじーんとしました。
※『時尼に・・・(略)』は『恐竜ラウレンティスの幻視』にも収録されています。
【追記】↓新版が出ました♪平成生まれの方でも手に取りやすい雰囲気ですね。こちらの新品の価格は、691円税込です。
【速報】【発売前重版決定】12/20発売予定の『美亜へ贈る真珠〔新版〕』ですが、注文殺到につき発売前重版が決定いたしました!
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『君の名は。』など、すべての時間&恋愛SFの ”原点" たる八篇を収めた傑作選です。未読の方も再読のかたも、是非。 pic.twitter.com/88zHxh5YKr
— 奥村勝也 (@kokumurak) December 9, 2016
後半は、二つの小説『時尼に・・・』と『ぼくは明日・・・』の違いと感想。
『時尼に・・・』と『ぼくは明日・・・』の違いは?(多少ネタバレあり)
私と同じく、Amazonレビューを見て↑コレが気になっちゃて、この記事を読んで頂いてるかもしれませんね。
『時尼に関する覚え書』は短いお話しということもあり、ぜひ読んで欲しいおすすめ作品ですが、大雑把に簡単に(『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を知っていればピンとくるように)お伝えしますね。
(ぼかしていますが内容に触れてしまう部分があるため、多少ネタバレしても大丈夫な場合のみ閲覧してください。)
ズバリ、似てました。
時間についての不思議な設定以外にも、運命(さだめ)られたものを本能的に感じたり、子供の頃にアイテムを渡したり、24時間を1サイクルとしたり。その他、キーワードで表現すると「日記」や「画家」なんてところも。
大きく違うところは、ヒロインに起こる現象の理由と、会うペース、と総ページ数。また、過去への関わり方がこちら(時尼)ではもっと色々とあるので、ジワジワと二人の親密度が高まります。それもあって主人公が長い年数ヒロインに惹かれていた、っていうところに強い恋心を抱く説得力を感じました。日記の使われ方もロマンチックで好き♪
それから、恋人期間とその年齢も大きく違うので、かなり印象が異なりました。『ぼくは明日・・・(略)』は20歳の40日間というかなり短いスパンなので、一日単位での変化が見所だと思います。(『時尼』の場合は、主人公27~34歳、ヒロイン20~27歳と長期)
また、こちらのヒロインは、主人公の時間の流れに合わせるために体と精神に負担を掛けて、意識して調整できるみたいですね。(雨のシーンから察するに、意識しないと「24時間が1サイクル」もなく、すべて逆になってしまうという事だと思います。※時尼が主人公の時間の流れに合わせる手段がある。)だからこそ、「(ある出来事によって)愛する恋人と長年会えなくなる」理由にも、説得力を感じました。
『ぼくは明日・・・』をまだ読んでない場合はこちらもどうぞ!
映画の原作小説『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』感想あらすじ私の解説ノート(ネタバレを含む部分があります)