2017年1月5日から日本テレビ系で放送されることになった今作。
著者は映像化された「武士道シリーズ」や「ストロベリーナイト」の誉田哲也さんといえば「知ってる!」という方も多いハズ。
この作品は超能力を使って探偵業を生業にする人達のお話ですが、ただ淡々と事件や家庭問題などを解決するだけでなく、特別な能力を持っているだけで普通の人と変わらない彼らの人生にもスポットを当てた作品。能力を持ってしまったがゆえに苦労してきた彼らはどんな生き方をしてきたのか、そんなヒューマンドラマでもあります。
今回はそんな原作を読んでみましたので内容を徹底紹介したいと思います。
簡単なあらすじ
東京都荒川区の日暮里駅から徒歩圏内に、ちょっと変わった探偵事務所がある。増山所長を筆頭に超能力師の資格を持った探偵が4人、そしてベテラン事務員の女性が1人。舞い込む依頼は普通の探偵事務所と変わらない。浮気調査や失踪者の捜索などがメインになってくるが、特殊な能力をつかいながら依頼された案件をこなす彼ら。
所長の増山は「面倒くさい」が口癖だが実は面倒見が良く女性にモテる。そして所長と不倫関係にあるらしい住吉悦子は高校時代はヤンキーで別名「川口の魔女」という名で恐れられていた過去をもつ。そして6年目にしてようやく2級に合格した高原篤志や幼い頃から人の心が見え過ぎて苦労した中井健。そして最後の4人目は最近入社してきたオカマちゃん。見た目は完璧な女の子だけど体は・・・。
それぞれ一癖も二癖もありそうな個性豊かな能力者達。そんな彼らの中和剤になってくれるのが事務員の大谷津朋江。最年長で所長からの信頼も厚く、能力を使えなくても人の気持ちを察したり、その場の雰囲気を読み取る力は事務所一。
本書は第7章まであり、章ごとに彼らの人となりが見えてくる。そして章を追うごとに、所長が関わったとする謎の事件「井山文乃事件」という言葉が出てくる。ごく限られた人間しか事件の真相は知らず、もちろん所長は一切語ろうとしないこの事件の真相は?
本書のラストの章では、この謎の事件の真相が明らかになる。
「増山超能力師事務所」のもう少し詳しいあらすじ(ネタバレあり)
特定の人物が主人公という感じでは無さそう。各章ごと、それぞれ登場人物の視点で描かれており、能力者の人となりが見えてくる人間ドラマ。そして気になる「井山文乃事件」の全貌が明らかになっていきます。
第1章
一番下っ端の高原篤志君の初仕事。6年かけてようやく2級の試験に合格した篤志は夫の不倫を疑う妻の依頼を任された。でも蓋を開けてみると夫の相手は精巧に作られたお人形さんだったというオチ(笑)。他人は笑えるけど奥さんは複雑な心境。不倫ではなかったものの、夫に対する見方は変わるでしょうね。
初仕事ながら無事に解決できた篤志は皆に褒められ、一人前として認められたのかな?。しかしどこかまだ頼りないと事務のおばさんに言われる彼は、まだまだ先は長そうです。
第2章
この章では家出少女の捜索を任された中井健のお話。家出少女は無事見つかって家族の問題も解決しますが、どちらかと言えば中井健という人物がクローズアップされた章。
健は幼い頃から容姿が醜いという理由でいじめを受けた過去がある。また、人の後ろに色がついた煙が見えるようになり、色で感情を表しているのだと気づき、母親の感情や同級生の感情が見えて幼いながらも苦労したようです。
そんな人の心が読めるようになった健はあえて余計なことを考えなくてもいいから煙を見ないようにする工夫もし、思春期を乗り越え、やがて超能力が世間に認められるようになると自信の能力で人の役に立ちたいと思うようになり、探偵事務所に入ったのです。
第3章
この章は国会議員の事務所で働く公設秘書失踪事件が描かれる。議員は不正献金などの疑いが持たれている人物で、失踪した秘書も関わっている可能性が高い。増山は過去に組関係の依頼を受けたとき、無事失踪者を見つけたが、組の人間に失踪者は殺されてしまった。またヤバイ案件なのかもしれないと事務の大谷は心配したけど、そこは1級の能力者。発見した公設秘書は確かに身の危険があったけど、テレポーテーションで回避。議員の不正献金が明るみになって幕を閉じたのです。
第4章
この章では、大学を卒業と同時に2級の資格を取得した実力のある住吉悦子について知ることが出来る。高校の時に「川口の魔女」と恐れられていた彼女はなぜグレてしまったのか?
悦子も幼い頃から能力に目覚め、触れずに発火させる事ができた。しかしこれが原因で祖父と祖母が火事で亡くなり、自分を責めて、やがて荒れるようになってしまった。
男たちを従えて町では恐れられていた彼女ですが、増山と出会ったことで人生が一変する。彼に助けられたと言っても良いでしょう。今では事務所内の誰もが増山と不倫関係にあることは知っているが、実は高校時代に初めて会った時から増山のことが好きだった。
事務所でも1、2を争う実力者ですが、増山と出会わなければ社会人になってもまともな生活を送っていなかったかもしれない。
第5章
この章ではポルターガイスト現象で悩む家族のお話。家族構成は両親と娘二人で、次女は受験勉強で家族全体がピリピリとしている状態。で、依頼を受けたのは実は増山の事務所で働いていた河原崎昇。増山が弟のように可愛がっていた実力者で、惜しまれながら独立。「K’sサイキックオフィス」という事務所を立ち上げ、成功している。
さて、ポルターガイストで悩むお宅を調査してみると、どうやら原因は受験勉強中の次女にあるらしい。家族から期待されている分、志望校に受からなければ・・・そんな重圧や、出来る姉と比較してしまい、ついつい落ち込んでしまう。そんな時に同級生から危険なドラッグを譲り受け、常用するようになり、無意識の内に超能力でポルターガイスト現象を引き起こしていたという。
次女は本当のことを打ち明け、二度とドラッグには手を出さないと誓うかわり、家族には内緒にして欲しいと懇願。出来る姉、落ちこぼれの自分。いつしか自分から溝を作り始めてしまい、家族からは愛されていないと思っていたが、家族の想いを伝えた河原崎。
きっと彼女は二度とドラッグには手を出さないでしょう。
河原崎は今回の案件で「文乃事件」と似ているのではないかと増山に指摘。しかし増山は真相を語ろうとせず、今回の案件と文乃事件は別物という。河原崎でさえも知らない「文乃事件」とは一体どんな内容なのだろうか。
第6章
この章では新人能力者として入ってきた女の子?宇川明美について知ることが出来る。彼女は随分前の章から登場しており、悦子からはオカマちゃんなんて言われているが、彼女の事情がわかると軽々しく「オカマちゃん」なんて言えない事がわかる。
彼女に関しては次のページの登場人物の紹介で詳しくお話します。
次のページでは「文乃事件」の真相を知ることが出来る第7章、そして個性的な登場人物を紹介したいと思います。