意外と面白い!「増山超能力師事務所」あらすじ・ネタバレあり

もくじ (文字クリックでジャンプ出来ます)

第7章

第7章「相棒は謎の男」では事務所に顔を出す刑事・榎本克己の視点で描かれる。この榎本と増山の二人が文乃事件を追うことになるのです。

今から20年前、高校生が道端で倒れ緊急搬送されたという知らせを受けて、捜査することになった榎本。なぜ警察が動かなければならないのか?榎本本人も疑問に思いながら捜査を開始。

Sponsored Link

実は倒れた高校生は貧血などではなく、硬膜外血腫が6箇所あり、しかも外傷がないことから医師も状況がわからないという。医者が分からなければ誰が分かるんだ・・・。そんな疑問をいだきながら不可解な事件を追うことになってしまった。

そこでまず、現場に居たという同級生・井山文乃に話を聞いてみた。これがなかなかの美人で警察の質問にも落ち着いた様子で話す彼女。倒れた女の子・由夏とは小学校からの知り合いでよく遊んでいたそうで、当日は特に変わった様子は無かったという。

強いていうなら、由夏の家で飼っていた犬が死んでしまったので「子犬のお墓参りがしたい」と頼んだくらいだとか。同級生同士のイザコザは無さそうに見えるけど・・・・

現場に行くと、スーツ姿の男が立っていたので話しかけてみると、同じように高校生が倒れた事件を調べているという。彼の名前は増山圭太郎。超能力師だという。怪しいと思いながらも事件自体が不可解な要素が多いので、彼と行動をともにすることになった榎本。

どうやら増山は現場に居た井出文乃が怪しいと思っているらしい。過去に文乃の周りで超能力が使われたと思われる現象が報告されており、彼女自身か、それとも身内に能力者が居るのか分からない。とりあえず彼女をマークしていると由夏の兄が文乃に話しかけてきた。

ペットの犬が死んだ時、頭がはじけ飛んだのはお前が能力を使ったからだろ、と兄は言う。そして今回、妹の由夏が倒れたのはお前が何かしたからだ、と文乃に詰め寄った。

文乃は甲高い笑い声とともに豹変。由夏の兄は頭を抱えて崩れ落ちるように倒れた。止めに入った榎本は文乃の能力によって左足は折られ足首から先が180度回転してしまっている。

あの大人しそうな文乃が豹変し、この惨劇を目の前にただ呆然とする榎本。増山に組み押さえられている文乃は暴れていたけど、徐々に力をなくし、おとなしくなっていった。

増山は榎本に言う。文乃は多重人格傷害で、幼いころの出来事が原因であると。それは由夏の家で飼っていた犬を自分が殺してしまい、自分を責め続けた結果、別の人格を作り上げてしまったと。

多重人格になることで殺してしまった記憶と超能力を封印。しかし何かのきっかけで解き放たれてしまい、それが今回の事件だということ。どちらにしても彼女は能力を持った人物。このまま放っておく事はできないから、自分が彼女の面倒を見るという増山。

だから今回の件は誰にも話さないでほしいと増山は榎本に懇願。この事件の真相を知る人がごく限られた人間しか居ないのはこうした経緯があるからだった。

そして現在、増山と文乃は結婚し、アリスという可愛い娘をもうけている。多重人格の治療は簡単なことではないが、家庭を築くことで文乃にやすらぎを与えようとしているということと、文乃が危険な状態になっても自分が対処できるように側にいる、という増山の面倒見のよい性格が垣間見れた章。

 

増山超能力師事務所の個性的な登場人物

 

増山圭太郎
所長。45歳。既婚。アリスという一人娘がいる。有名大学の法学部出身。
「面倒くさい」が口癖なのにクロスワードパズルや知恵の輪が大好き。
女性にモテる。悦子とは不倫関係の間柄。面倒くさいと言いながらも面倒見はいいし、厄介事を1人で抱え込んでしまう。
過去に組関係の依頼を受けた時、調査対象者が殺されてしまった過去がある

高原篤志
6年かけて二級超能力師に合格。三流私立大学を出てから研究生と言う名のアルバイトとして勤務。
今までラフな格好で勤務してきたが、2級取得を境にスーツを新調。中学卒業までは良い思いをしてこなかったらしい。
2級に落ちた時に、「やっぱり落ちたんだ」と彼女に言われて振られた苦い思い出もある。悦子に惚れていたが所長と不倫していることを知りショックを受ける

中井健
2級超能力師。幼い頃から人の後ろに色をもった煙が見えるようになった。
容姿が醜いことから幼稚園でもいじめられた経験がある。
煙が見えてしまうと余計なことを考えてしまうので、中学生になる頃にはあえて見ないようにする工夫もし、人の心を無意識に読むようなことはなくなった。大学を卒業後は一般企業に勤めていたが、超能力が一般的に浸透し始めると自分も世の中の役にたちたいという思いが強くなり、増山の事務所に入った。

住吉悦子
高校時代は札付きの悪で喧嘩に明け暮れていた。「川口の魔女」という名で恐れられていた。不良同士の喧嘩ならよくあるが、発火能力を持つ彼女の噂は増山の耳に入り、彼女を説得してこの世界に誘った。祖父母の家で火事が起きた時、自分のせいだと悩んでいたが、実は祖父の不始末による火事だと聞かされる。荒れていた生活から、心を入れ替え、大学を卒業と同時に2級の資格を取得し増山の事務所の一員として働くことに。ちなみに増山に初めて会った時から想いを寄せている。今は増山と不倫をしているが、事務所内でも周知の事実。

宇川明美
23歳。7年ぶりに増山事務所に入ってきた新人。
みんなからは「あけみちゃん」と呼ばれているが本当は「あきよし」と読む。
顔は可愛く、スタイルも抜群。茶髪のロングヘアはいつもツヤツヤで悦子は嫉妬心を抱かずにはいられない。そんな完璧な女性?ですが彼女も悩みを抱えている1人。二人姉妹で姉と同様に半陰陽者として生まれる。姉は幼い頃に女性として育てられ、しかし完璧な体ではないことに思い悩み苦しみ、10代で交通事故で亡くなってしまった。自分の良き理解者だった姉の死を受け、自分は男女どちらかを選ばず生きたいと両親に懇願し今に至る。2級の試験を受けたが惨敗。しかし彼女の能力は底知れぬ力を秘めている。上手くコントロールできれば他の人よりも優れた能力者として活躍できるのだが・・・。

大谷津朋江
事務のおばさん。50大半ば。3人の子供を育て上げた。
勤続11年のベテラン。超能力は使えないが、人間本来持っている「察する」という能力は誰にも負けないのは人生経験豊富だから。
所長との信頼関係は厚い。夫と蕎麦屋を営んでいたが、夫が交通事故に遭い入院。運営できないと判断した朋江はパートに出ることを決意し、増山事務所の事務員として働き始めたが、今では無くてはならない存在となっている。この物語でも能力を備わっていないですが重要な人物。所長と悦子の関係をいち早く気づいたのも朋江です。現在、所長に強く言えるのは彼女だけでしょう。

榎本克己
警視庁の刑事。超能力や超常現象に理解のある人物。
ある事件をきっかけに増山と知り合い、それ以降、事務所に顔を出すようになる。

河原崎昇
増山の事務所で働いていたが独立。年齢は増山の4つ下。昇が2級の資格も取っていなかった頃から面倒を見ていたので増山にとって弟分と言っても良いでしょう。独立後は「K’sサイキックオフィス」という事務所を構えている。

Sponsored Link

感想

ダークマターの影響でごく限られた人間は能力が使える・・・。そんなSF要素もある探偵ものですが、依頼された案件を能力を使って解決していくという単純なものでは無さそう。

登場する能力者は幼いころにいじめを受けた者や、能力のせいで他人を傷つけてしまった者など、キャラクター1人1人の個性がしっかりと描かれ、事件を追うような探偵ものではなくヒューマンドラマ的な要素が強い。

所長の増山は「面倒くさい」が口癖ですが、蓋を開けてみれば一番面倒見がよく彼の影響を受けている人は多い。独立した河原崎が1級に合格できたのも彼のおかげだし、荒れていた悦子を更生させたのも彼。そして井山文乃事件をきっかけに文乃の面倒を見ることになり、やがて二人は結婚、一児の父となる。

悦子と不倫しているのは問題ありますが、世の中の役に立ちたいという想いは十分に伝わり、それが周りにも良い影響を与えているのは確か。そして能力は使えないけど、存在感のある事務のオバサン。能力が使えなくてもアタシには分かるよ、っと全て見透かしてしまう彼女はある意味エスパーかもしれない。

そうした個性豊かな登場人物によって、より一層、作品の濃さが増しているのだと感じました。