ドラマ「流星ワゴン」原作の感想ネタバレあり「ちょっと悲しい、だけど現実的」

2015年1月18日からスタートするTBS系ドラマ「流星ワゴン」。

MOZUで共演した西島秀俊と香川照之が、今度は親子役として出演するそうで、ちょっと楽しみです。

 

さて、この「流星ワゴン」という作品は、

人生を諦め、死にたいと思った男が、人生の分岐点だった過去に戻り、

自分がどうあるべきだったか、これからどうするのか、

過去は変えられないけど生きていこうと決意する男の物語です。

その過程で、確執のあった若かりし父親と再開し、本音でぶつかり合い、分かりあっていく。

この物語のテーマは「家族の絆」です。

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現実的で共感できる主人公の立場

息子と父親の仲が悪いというのはよく聞きますが、

主人公も父親を嫌っており、中学の頃から口も聞かなくなる状態。

父親の会社を継がず、東京の大学に進学し、そのまま就職。

確かに父親はやり手で金貸しまでやっていたおかげで、学生の頃についたあだ名がサラ金・・。

全部親父のせいだ!!と思うのは当然です。

主人公は一刻も早く親元から離れたかったのでしょう。

 

そして会社で知り合った妻と結婚、

1男をもうけて東京の郊外にマイホームを建てる。

自宅から都内にある会社まで片道1時間半、

帰りはヘトヘトで、家に帰れば、適当に妻と会話して寝るだけ。

 

息子は中学受験に失敗し、荒れて家庭内暴力、

その頃から妻は帰りが遅くなるようになり、気がつけば離婚を切り出される始末。

家庭は崩壊、そして仕事はリストラ・・・・。

 

ガンで入院している父親の見舞いと称して無心に行く自分・・悲しい・・・。

これ以上ないどん底という現実を突き付けられた主人公が”死にたい”と思うのは無理もないかもしれません。

 

ただ、現実的によくある家庭環境で、

東京から離れたニュータウンに夢のマイホームを買ったけど通勤時間がやたら長かったり、

子供を一人もうけた3人家族という家族構成だとか、

決して物語だけの話ではない部分が現実的で切なさや悲しさが増していた気がします。

 

息子と妻の問題、

家族と分かり合えていなかった主人公。

どこで歯車がズレてしまったのか、その歯車はもとに戻すことは出来ないのか。

読み終えるまで、この家族に未来はないのだろうかと、ず~~~っと思いながら読んでいました。

 

キラキラと煌く物語のスパイス「流星ワゴン」が登場

最終電車が通過した静かな駅前のベンチで、

主人公がウイスキーを飲みながら「死にたい」と思った時、

ワイン色のオデッセイが現れた。

 

乗っていたのは5年前に交通事故で死んだ父子。

主人公にとって大切な場所まで連れて行ってくれるという。

 

過去に戻った主人公は、見えなかった家族の意外な行動を目のあたりにし、愕然とする。

こんな事になっていたのか・・・。

自分から進んで中学受験をしたい!と言っていた息子が精神的に限界に来ていたこと。

寂しい思いをしていた妻が不特定多数の男と不倫をしていたこと。

主人公は妻や息子に関心がなかったのか、わかろうとしていたのか、わかっていたつもりだったのか。

 

ただ、主人公の立場も痛いほどよくわかる。

これから何十年とかかる家のローンを返さないといけなし、

家族を養うために仕事を優先するのは当然、まして仕事をキャンセルするなんて論外。

また、息子と全くコミュニケーションを取っていないわけでもなく、

「受験、応援しているからな。」と優しい言葉もかけている。

これが余計なお世話なら、親は一体どうしたらよいのだろうか。

 

確かに、主人公は息子の精神状態を見抜けなかったのは、ちゃんと見ていなかったからかもしれない。

でもどこの家庭だって親なら応援するし、それしか出来ない。

その前に、する必要のない中学受験をさせるべきではなかったのか・・・。

考え出したらキリがないですが、知らなかった息子の状態を知った時に、

かける言葉を「応援してるぞ」から「無理しなくてもいいぞ」と変えたのは、親の愛情を感じます。

 

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同い年だから朋輩(ほうばい)、若いおやじが登場

主人公の故郷は瀬戸内海に面した・・・とか、

父親が「カバチタレとったらアカンぞ!」と広島弁をしゃべっていたので広島県なのかな。

 

父親は末期の癌で病院の床の上で死を待っている状態。

床に伏せる父親を見て、「結局分かり合えなかったな・・」ともらす息子。

ただ、息子である主人公は、父親ならこんな時どうするのだろうか?

息子になんて声をかけるのだろうか?

父親なら・・・・、そんな事を考えていた主人公に対して父親は、

息子を見ながら、自分が息子と同じ年の頃はどうだったのだろうかと、

なんとなく似たようなことを考えていた二人。

 

「同い年だから五分と五分じゃ、のう!」

喧嘩っ早く単純で主人公とは対極の父親が同じ年で登場し、

”こんな時、父親だったらどうするのか”を目の前で披露してくれるおやじ。

 

子供の頃は、父親が怖くて言いたいことも言えなかったけど今は違う、

対等の立場で、言いたかったことをズバッと言ったときの父親の反応は様々ですが、

息子のことをちゃんと考えていた事、親の愛情を感じた時、

二人の心の絆はグッと近づくのです。

 

この家族に未来はあるのか?

分かり合えなかったと言うより、妻、息子に対しても、父親に対しても

すべて主人公が「知ろうとしなかった」「分かり合おうとしなかった」ような気がします。

父親を嫌い、距離を置き、仕事優先で家庭を顧みなかった。

でも流星ワゴンに乗って過去に行き、おやじと出会い、家族と向き合い、

大切な「絆」を知った主人公。

 

過去に行っても未来を変えることは出来なかったので、

厳しい現状からのスタートとなりますが、

流星ワゴンに乗る前の「死にたい」という思いはなくなり、

「やり直そう」と両膝に手を添えてしっかりと立ち上がった主人公は、

必ず家族の絆を修復することが出来ると確信しました。

 

番外編

流星ワゴンに乗っていた父子は5年前に交通事故で死んだ幽霊ですが、

この二人もまた問題を抱えていた家族なのです。

父親はちょっとどんくさい人(吉岡秀隆はハマリ役?)で運転免許を取った翌日に家族を乗せて事故。

母親は一命を取り留めたけど、この父子は帰らぬ人に。

 

子供に見せてやりたかった満天の星空。

ここに連れてきたら子どもと仲良く出来るだろうか。

妻の連れ子だった息子は父親を無視し、父親もまた、声をかけることはなかった。

でも、

「免許をとったらドライブに連れてってよ」という息子の一言で始まった

壮絶な教習所通いのかいあって念願の免許を習得。

翌日に家族3人でドライブに出かけたけど・・・突然起こった不幸なアクシデント。

 

でも今はこうして生きていた時よりも、とても仲が良く、

冗談も気軽に言い合える幸せそうな親子だ。

 

今もどこかで流星のごとく走っているに違いない。

だから「死にたい」と思った時、

最終電車が通り過ぎた駅のベンチで待っていると、

ワイン色のオデッセイが、あなたを迎えに来てくれるかもしれませんよ。

ちょっと行ってみようかな・・・・(笑)