原作は読みましたが、実はまだ映画を見てなかったんです。
気にはなっていましたが、観ずじまいでした^^;
で、たまたまレンタル屋に足を運んだときに、
ド~ンと見事に並んでいたので迷わず借りました。
いや~やっぱり完成度が高いですね、
同じ戦争映画でも家族をクローズアップした作品は珍しいと思いますし
モデルのクリス・カイルという人物がよく分かる作品に仕上がってると思います。
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作品を観て思ったこと
幼少の頃の主人公から始まり、弟思いの兄に育ち、
そして愛する妻と出会い結婚、二人の子供が生まれて、これから家族4人幸せな家庭生活が待っているはずだったのに・・・
そんなクリスの生涯を短くまとめたこの作品は、
決して戦争一辺倒にせず、戦争賛美にせず
犠牲を描いた作品だと思います。
幼いころのシーンで父親が「羊」と「狼」と「羊の番犬」の話をしていましたが
まさにクリス・カイルは父親の教えの通り羊の番犬として
狼に立ち向かい、愛するものを守る人間として成長したのではと感じます。
決して羊にはなるな!という厳しい父親の背中をみて育った彼は
人一倍正義感が強く、アメリカという国を愛していた。
だからこそ911同時多発テロが発生した時の悲しさや悔しさは計り知れないし
軍隊に入るということは自分がやらなければいけないという使命感と正義感の現れなのでしょう。
全体を通して見ると戦闘シーンと家族シーンが半々くらいでしょうか。
そして戦地でもやはり家族というテーマをしっかりと入れ込んでいる。
例えば敵として登場した腕の良いムスタファという狙撃手がいましたよね?
彼の奥さんらしき人が赤子を抱いているシーンがありましたが
彼もやはり守るべき人が居て戦っていた1人。
ただし、彼は実在する人物ではありません。
この映画の本質である「家族」「犠牲」というテーマの重要性が
こういうシーンで改めて知ることが出来ます。
映画のラストはどうでしたか?
クリス・カイルの葬列には多くのアメリカ国民が国旗を持って参列した実写映像が流れました。
彼の栄誉を称えるラッパの寂しい音色がいつまでも心に響いてきます。
そしてエンドロール時は一切BGMを流さない辺りなど
クリス・カイルに敬意を払い、ラストを締めくくっている感じでした。
確かこの作品を制作するにあたって、余計な演出や音楽は排除したということですから
より真実に近く、リアルな人の人生を映し出している作品にしたかったのでしょう。
さて、ここからはこの映画が素晴らしいと思う3つの理由をご紹介します。
1、妻のタヤが制作に全面協力してくれた
実はこの作品、クリスがまだ生きている時に制作の話が持ち上がっていました。
脚本を担当したジェイソンホールは実際にクリス夫妻に会い、
話を聞いたそうですが、彼は無口で話をススメることが難しかったとか。
クリスの友人曰く「黙って待つのが狙撃手だから」とも言っていたそうなので
まさに寡黙で男らしい人だったのかなと思います。
そんな、これから制作に入るという段階で訃報が飛び込んできたんです。
2013年2月3日、
PTSDを患う元海兵隊員エディー・レイ・ルースに撃たれこの世を去ってしまった
絶望の淵に立たされたタヤは毎日泣き続けていたと言い
普通なら映画の制作どころではないはずです。
そんな精神的にも参っていた彼女に献身的に電話で話を聞いていたのが
脚本家のジェイソンでした。
妻のタヤと100時間以上電話したというエピソードがあり
タヤいわく深夜2時まで長電話に付き合ったジェイソンはセラピストでもあると語っていました。
夫の死後、ジェイソンが精神的に支えてくれたことが大きかったようです。
クリスの栄光を残す意味で大切な映画になったわけだから、
「映画を成功させるために協力は惜しまなかった」
というタヤに対して、ジェイソンもまたこんな事を言ってました。
真実を描きたいから僕は手加減しなかったよ、聞きにくい質問もした。
本には描かれていないことも妻から聞くことが出来た。
妻にしかわからないこと、この異なる側面が映画を大きく変えたんだ、と。
クリス著書「最強の狙撃手」には事細かく夫婦のことも描かれていますが
タヤとの交流でさらに夫婦のことを聞くことが出来たのでしょう。
物語の骨組みを再構築し兵士と家族の絆を主題に捉えたといいますから
彼女の言葉がこの映画にいかに多く反映されているのかがわかります。
また、夫を亡くしながらも制作に協力した彼女は強さと優しさを併せ持つ
素晴らしい女性であると彼女を演じた女優・シエナ・ミラーは語っていました。
2、クリスを演じたブラッドリー・クーパーの俳優魂
クリスを誰が演じるのか候補は多数上がったみたいですが
ブラッドリー・クーパーが演じてくれたら間違いなく成功すると
脚本家のジェイソンが太鼓判を押していました。
ブラッドリーもまたクリスに会う約束を取り付け
僕は真剣に取り組むと
君を演じる以上、どんな試練でもうける
引きずり回されても構わない。
その映画にかける情熱にクリスは心打たれたようです。
その熱意はちゃんと形となって表れています。
数百時間に及ぶクリス夫妻の貴重な映像や写真、
そして派遣中に交わした夫婦のメールも見せてもらい、
クリスに少しでも近づくための努力が既に始まっていたのです。
そして肉体改造、
最初は83キロ程度だった体重は106キロまで増加。
もちろん本人の申し出で肉体改造することになったそうですが
一日6000キロカロリーを摂取し有酸素運動は無しでウエイトトレーニングが基本。
みごと軍人のようなたくましい肉体へと生まれ変わり
上の写真のように実際に190キロのダンベルを持ち上げるほどの筋力もついたというのだから驚きです。
彼になりきるためには不可欠なものだった
僕がクリスと思うことが重要、僕が疑っていたら顧客も信じない
彼なりの努力があったからこその自信であり
その映画に対する情熱は周りにも大きな影響を与えていたと思います。
ジェイソンいわく
「モニターを見ていると立ち姿などそっくりだ
彼の背後にクリスの存在を感じて鳥肌が立った
僕は生前のクリスを知っているからね
彼が生き返ったようだ」
と絶賛しています。
ブラッドリーにとってもクリスの死は受け入れがたい現実だったと思いますが
だからこそ彼に対して敬意を払う意味でも中途半端な気持ちで作品と向き合うことは出来なかったと思います。
3、リアリティの追求
映画に登場した装備品はイラク戦争があった2003年~2008年に使用されたという武器を取り寄せ、
さらに時代を考慮した戦車、ヘリ、飛行機などを再現し
モロッコでの撮影は本物の軍隊に協力を仰いだという。
そして撮影の協力者でクリスの同僚だったケビン・ラーチに
ブラッドリーが出演交渉して見事出演を決めたというエピソードがあります。
(写真右がケビン・ラーチ)
軍の専門家と同僚だったケビンの協力もあり、
よりリアルな戦闘シーンを再現出来たのではないかと思います。
ちなみにあのイラクのような寂れた町並みのロケ地は
モロッコのラハドというところだそうです。
ファルージャによく似ており、まさにイラクそのものですね。
そうした小道具一つとっても妥協しない製作者のこだわりが
アメリカンスナイパーという「真実」を映し出す名脇役となってスクリーンに映し出されています。
今回ご紹介したものはDVDの特典として収められていたものですが
様々なエピソードを知ることでより映画の面白さ、醍醐味をもっと味わえるのではないでしょうか。