映画「アリスのままで」原作小説を読んで、あらすじ感想。タイトル・青い蝶・前向きな雰囲気に惹かれました

なぜかこの映画予告に惹かれました。私にとっては珍しい反応と言えます。
ジャンルとして切ない闘病物語は苦手、しかも受賞作を避ける傾向があるからです。

そして、原作を読んでみることに。

何が魅力的だったのか?
思い起こしてみれば、(今ではどれが第一印象の魅力だったか忘れましたが)
タイトル・青い蝶・前向きな雰囲気に惹かれたのだと思います。

リアルとフィクションの狭間、感動させるためではなく知らせるための物語かな。
※でも涙は出ちゃいます。

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あらすじ

名門校・ハーバード大学の中でも優秀な言語心理学の教授であるアリス(50歳)は、
記憶力や理解力・スピーチ能力などに長け、名声と人望がある人物。

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教えたり、討論することが好きで生き甲斐だった。
そんな女性が次第に若年性アルツハイマー病に苦しむ患者へと変貌していく。

物忘れ、気分のむらと錯乱。更年期障害?

この年齢でなるはずがない、ただの更年期障害で疲れているだけに違いない。
好きな仕事も、苦労して勝ち得た地位も手放すことになってしまうのは嫌だ。
世間に知られる事が恐怖。

しかし、容赦なく進行するアルツハイマー。

一日中準備していた事や直前まで用意していた事をきれいさっぱり忘れてしまう。
さっきまで話していた内容を忘れて、何事も無かったかのように同じ質問をする。

思う様にできない、頭の中の整理がつかない。苦悩と孤独感。
しかも、この病気は子供たちに高確率で遺伝しているかもしれない。

ゆっくりと確実に、そして急激に、仕事や生活するための記憶が失われていく切なさ。
愛する人を(どこの誰なのか)忘れてしまう怖さ。喪失感と焦り。

アリスとして家族を愛す事が出来る時間は、あとどれぐらい?
子供が育ち、仕事は忙しく、バラバラになりかける家族が、母の病気発覚後に結束を強める様子も見どころ。

雰囲気

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フィクションならではの設定と明るさ。前向きで聡明なアリスが魅力的。
仕事柄、認知力や記憶力抜群なアリスが、それらを失くしていく設定は、極端な落差があって感覚的に分かりやすいと思いました。

読み終えてみると、原作者が「知らせるために」この小説を書いたのだなと感じます。
物語の主人公・アリスが、若年性アルツハイマーの体験談と感想と願いを「認知症介護会議」で患者としてスピーチする場面がまさにそれ。

そして知らせるためには、読みやすく好奇心をつつく必要があるでしょう。
暗い困難なストーリーは私の様に拒絶しがち。ダークな印象を明るく照らす要素も、この物語に必要なものだと感じました。

好転しない病気だけど、アリスの頑張りが反映され迎える終盤は読みごたえがあります。

現実には介護は強烈困難だけど、心の奥に(きっと居るアリスに)語りかける人々。
風景描写も美しく、それがまた余計に切ない。

実態・絶望・理解・希望など、原作者が何を知らせたいのかは測り知れませんが、
受け取り側次第と思わせる、押し付けない雰囲気も好印象かな。

続いて後半も原作小説の感想、
タイトル・青い蝶や、不思議の国のアリスなどについて

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タイトル

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映画予告で観た『アリスのままで』というタイトルに惹かれました。
「アリスのままで」いたいアリスが、どのように描かれていくのか興味を持ったのです。

50歳のアリスを構成している記憶が次々と失われていく病気、若年性アルツハイマー。

治す方法が無く、様々な想いが交錯します。
いつまでアリスのままでいられるのか?アリスのままでいたい!

読者の私もこう思いながら読み進めました、「彼女は、まだ私の知るアリスなのか?」。

原題は『STILL ALICE』。
STILLの意味を検索すると、静かな・静止したなどがヒットしますが、意外と
私の中学レベルの英語力で覚えていたSTILL=まだ、「まだ、アリス」訳がぴったり。

青い蝶

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視覚的には、予告チラシのオレンジ色の空間に飛ぶ青い蝶に惹かれました。
何かを暗示しているよな美しい組み合わせ、この物語の途中や終わりにはどんな光景が描かれるのか?興味を持ったのです。

この青い蝶は、実際に物語の中でキーアイテムになりました。

母の遺品、青い宝石が美しい蝶のネックレスはアリスの記憶に深く残るアイテムですが、
度々登場する「蝶」というキーワードは読者の私の記憶にも残ります。

「蝶のファイル」が私の注意を引き、アリスが「消えていくアリス」に向けて用意した「定時のタイマー質問」の変化が私に病気の進行を知らせてくれます。

今は何月?から始まり、住所や自分の子供についての5つ質問。
どんどん答え方が簡潔になってきて、じわじわと、そして急激に進行する病状を実感。

アリスがアリスで無くなってしまったら?意味が無い、耐えられない。家族に申し訳ない。共感の嵐。

リアル

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魅力のひとつは、病気や現場の知識が正確でリアルだから。安心して読めます。

小説のカバーに書かれた説明を見ると、
作者のリサ・ジェノヴァさんはハーバード大学で神経科学の博士号を取得、アルツハイマー研究事情に詳しく、「認知症患者との対話から本書は生まれた」と記載あり。

家族の高齢アルツハイマーを経験して

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高齢でのアルツハイマーの症状は祖母で体験したので、この不思議の世界をそれなりにイメージ出来ます。

穏やかな人が狐に憑かれたみたいに癇癪を起して、自分以外を疑ったり。
良い日と悪い日の差が激しく、コロコロと人格が変化している様に見えました。

「思い込み(妄想)」と現実が混ざった話しを普段と変わらない顔で喋ったり。
なんだか奇怪な行動をしたり。(←これはたぶん過去の趣味か生活を再現しているのだと思いました)

辛い思いは(忘れたいので)忘れちゃいましたが、
私は孫と言う立場で(責任感の)距離があったせいか、少し冷静に観察していたのかも。

細胞の寿命が尽きる。まるで電池が切れる様に、脳細胞が死んでいくのが怖くて…。

それが体が元気で丈夫な年齢で発症して、しかも子孫に高確率で遺伝していくだなんて。
できれば考えたくない案件です。

不思議の国のアリス

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アリスと言えば、つい頭に浮かぶのが『不思議の国のアリス』。
小説の翻訳者あとがきでも、認知症というワンダーランドに迷い込むアリスの名前には意味があるのではと書かれています。

ちょっと書き出してみましょう。

不思議の国へと迷い込む、妄想好きな少女アリス。
次々と場面展開する、日常が混ざった何だか変な異世界。
癇癪持ちの女王様や、わけのわからない事言う登場人物達。

調べてみると、立ち入ると物の名前を忘れてしまう「名無しの森」もありました。(※鏡の国のアリスに登場)かなり似てるかも。

それに『アリスのままで』で登場する赤ちゃんの双子で、鏡の国に登場する双子キャラを思い出しちゃいました。