家族を考える「朝が来る」辻村深月の原作小説の感想ネタバレあり「血の繋がりは関係ない」

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彼女の居場所

赤ちゃんが産まれるまで広島にある寮で生活をしていた彼女。
ベビーバトンの代表・浅見さんにはお世話になったし、
同じ境遇の子たちと同じ時間を共有し励まし合い、
今まで経験したことのない人とのふれあいを感じた場所。

浅見さんにお願いし、住み込みで働かせて欲しいと頼み込み
少しの間お世話になったけど、活動を終了するということで居場所がなくなってしまった。

あの家には帰りたくないので、浅見さんにお願いし
似たような施設を紹介して欲しかったのだけど、
とりあえず住み込みで働けるのは新聞販売店しかなかった。
贅沢は言えないので紹介先の販売店で地道に働き
同じ住み込みで働く20歳くらいの女の子と仲良くなった。

しかし彼女からお金を貸して欲しいと言われてから歯車が狂い始め
彼女の連帯保証人になった覚えがないのに、
自分のサインと印鑑が押された借用書を男たちに見せられ、
夜逃げした女の子の代わりにあかりが借金を返さなければいけなくなってしまった。

嫌がらせをする取り立て屋、煙たがる販売店オーナー。
なんで私が返さなければいけないのか?
あかりも逃げるように販売店を去り、実家に帰ろうかとも思ったけど
帰ってどうにかなるのだろうか。

とりあえず東京へ向かい、途中、なんとなく横浜の駅で降りた彼女は
人混みにまぎれて暮らせば取り立て屋には見つからないと考え
たまたま見つけたホテルの清掃員の仕事が住みこみOKだったので応募した。

真面目にコツコツと働いても寮費は給料から天引きされ、なかなか貯金ができない。
転職も考えたけど、そう簡単に見つからないのは彼女が一番よく知っている。

そんなある日、清掃員の仕事を続けていた彼女の元にあの男たちが来てしまったのだ。
なぜ?と思ったけど、どうやら夜逃げしてきた販売店に謝罪の手紙を送ったのがいけなかったらしい。

あれから借金は利息が膨れ上がり、彼女が払える金額ではなないので
男たちは「借金を返せる仕事なら紹介するよ」と笑いながらいうけど
いくら高給取りだからといって夜の仕事だけは絶対に駄目だ。

そんな時、事務所にある古びた金庫に目が止まり、
借金返済のため、手をつけてしまった・・。

もちろん管理者にバレたのは当然だけど、
返すアテもないのに「返します」と言ったあかり。

近くに親戚が住んでいるので借りて返します・・・と。
その住所は赤ちゃんを託したあの40代の栗原夫婦の住所だった。

そう、やっぱり「子供を返してください」と言ったのは
紛れも無く彼女本人なのだ。

しかし第一印象で彼女を「お母さんではない」と思った栗原夫妻。
16歳で家出をし広島で過酷な新聞配達、そして取り立て屋の脅し、
逃げるように横浜に来て清掃員として働いてきた彼女の外見はやつれており覇気がなかった。

返さないといけないからお金がほしい・・・
子供が出来なかったあなた達に赤ちゃんをプレゼントしたんだから
少しくらいお金を要求したってバチは当たらないだろう。

ここまで来ると、あかりはベビーバトンの浅見さえも恨んでいた。
普通に我が子のように育てている夫妻も幸せそうで悔しかった。

自分がお母さんだということを信用してくれない夫婦から
お金を取ることの難しさを悟った彼女は諦めて帰り、抜け殻のようになっていた。
ホテルに戻って逮捕されるか、実家に帰って両親と向き合うのか
それで人生は好転するのだろうか・・・いや、もう生きている意味があるのだろうか。

栗原家を出てから1ヶ月。
まだこの街でホームレスのように徘徊していた彼女は、
生きる希望を失いかけていた。

雨が彼女の気もちを沈めていく中、
いきなり後ろから「やっとみつけた」と言い、女性が抱きしめてきたので振り返ってみると栗原家の奥さんだった。

刑事が訪ねてきた日、写真の女性が誰なのかを聞いて、
ずっと探してくれたのだろう。

「追い返しちゃってごめんね、わかってあげられなくてごめんね」

佐都子の優しい言葉を聞いて泣き出すあかり。
朝斗も一緒に来ていたので、「この人が広島のお母さんだよ」と教えるとびっくりしていたけど
不思議そうに二人の母親を交互に見る朝斗の表情をなんとなく想像できるような気がしました。

佐都子が「一緒に行こう」と言って物語は終わってしまいますが
いろんな展開を想像しちゃいますね。
とりあえず良かった良かった・・・。

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「朝が来る」感想

「子供を返してください」という衝撃的な内容でスタートしたこの物語。
冒頭から読者を引きつけ、社会問題の取り上げ方にリアリティがあり最後まで一気に読み進めることが出来ました。

母親と同じような生き方はしたくないと思った彼女の人生を追いながら
子供を託した夫婦の元へなぜ行かなければいけなかったのか徐々に明らかになっていくストーリー。

物語の構成は、血が繋がっていないけど信頼し合い固い絆で結ばれている家族と
血の繋がりがあるのに心が完全に離れて信頼関係を失っている家族がバランスよく描かれている。

そして望まれずに生まれてきてしまった赤ちゃんと子供が授からない家族の橋渡しをする「ベビーバトン」の趣旨が
「親が子供を探すためではなく、子供が親を探すため」という考え方はまさにそうだと思いました。
女の子がほしい、男の子がほしい、普通の子がほしい。そんな気もちで養子を迎えるのは間違っている、ということ。

そして望まない妊娠をした女性が「さっさとお腹から出てって欲しい」というセリフが
衝撃的過ぎて読んでいてとても辛かった・・。

このようにストーリーよりも深刻な社会問題を取り上げており
少しでも多くの方に知ってほしい現実を小説を通じて広めることが出来れば、というのが著者のホンネなのかと思う。

そしてラスト、彼女は一体どうなってしまうのだろうかと心配しましたが
妻の佐都子が「やっとみつけた」と声を掛けたシーンで涙腺崩壊しました。
久しぶりに泣けました、ぜひオススメしたい社会派小説だと思います。

キャストについて

冒頭でキャストについて触れましたが、
ここでも少しだけお話したいと思います。

この物語の主人公とも言える片倉ひかり役の川島海荷さんは
2016年に明治大学を卒業し今年は女優業に専念するとのこと。
キー局では今年初となるので気合も入っていると思いますが、
10代で過酷な環境を生き抜いてきた表情を彼女はどう表現するのか楽しみです。

深夜枠と言っても土曜の夜なので夜更かしされる方も多いと思いますし
録画が当たり前の時代ですからね、この作品で更なる活躍を期待したいところ。

そしてお笑い芸人としては珍しく俳優のセンスもキラリと光るココリコの田中。
実は個人的に役を演じている彼も好きなんです。結構上手いですよね。

そしてこの作品のもう一人の主人公として母親役を演じる安田成美。
80年代から活躍するベテラン女優さんで、すっかりお母さん役のイメージが私の中で出来上がってしまった感じです。

まだまだ話し足りないことがありますが、とりあえずは今回はこの辺で・・・・・

追記:7月12日

現在6話までみましたが、見れば見るほど川島さんが矢口にしか見えません(笑)
CMは黒髪なので違和感ありませんが、ドラマは金髪だから余計かもしれまね。