8月22日の公開前に本多孝好さんの原作を読んでみましたのでご紹介。
実はこの本、4つの短編小説からなるオムニバス形式で構成されており
映画化されたのはその内のひとつだけなんです。
「泣ける」という謳い文句に騙された方も多いみたいで^^;
しかしながら「ほっこり系」なので読後感は悪くはないです。
分厚くない本で文体も難しくなくサラリと読める本でしょう。
邦画関連:「天空の蜂」の原作感想はこちら
あらすじ
「at Home」
お父さん(竹野内豊)、お母さん(松雪泰子)、そして僕(坂口健太郎)と妹(黒島結菜)と弟(池田優斗)。
一見すると平凡な一般家庭に見える5人家族だけど実は血の繋がっていない他人の集まり。見た目は30歳というお母さんは夫のDVで病み、妹の明日香は母親が蒸発、父親は1ヶ月に1度家に帰るかどうか。小さい妹がいたから妹の世話と家事を全部やっていた彼女でしたが心臓に疾患があった妹が亡くなって一週間後にフラリと家を出てしまった。弟の隆史は親から虐待を受けていたといい、お父さんは勤めていた会社が倒産し妻の出産費用を何とか工面しようと空き巣に入るも捕まり実刑。僕もまた親の愛情を知らずに育ってしまった男の子。
そんな訳ありの5人が偶然知り合い身を寄せ合う形で一緒に暮らし始め、お父さんは今でも空き巣、お母さんは詐欺、僕は偽装屋で収入を得るという奇妙な生活が続いていたけど、お母さんがターゲットにした相手がどうやら結婚詐欺師で一枚上手だった事から事態は急変。1000万円という身代金を要求してきた相手の男とどう立ち向かうのか、そしてこの奇妙な5人家族に幸せな未来は待っているのか、というお話です。
「日曜日のヤドカリ」
僕はたまたま入ったスナックで働いていた真澄と知り合い交際することになった。弥生という出来た娘がいるらしく、ベットの上で嬉しそうに娘の自慢話をする真澄に何だか妙に惹かれるところがあり、半年後にプロポーズをして目出度く結婚。同時に9歳の女の子・弥生さんの父親にもなった。ある日、同窓会があると言って出かけていった真澄に不倫疑惑が浮上。「もう帰ってこないかも」と不安な娘の弥生さんとともに真相に乗り出す僕。本当は・・・。
「リバイバル」
主人公は53歳の男。結婚して子供がいたけど中学の時に自身が職を失い離婚。それでも養育費としてお金が必要だからヤミ金に手を出すも子供は大学受験に失敗し、これ以上親に迷惑をかけられないと必要以上に重く受け止めてしまい自殺。今はアパートぐらしで居酒屋の深夜バイトと休みの日に日雇いがあれば入り込んで日銭を稼く毎日。とある日、ヤミ金が借金を帳消しにする代わりに条件を突きつけた。それは異国の女性と1年一緒に過ごしてくれてという奇妙な提案だった。ヤクザ絡みの込み入った話だ。言葉が通じなくても日にちが経てば変な情が移り、お互いに意識しあう。けれど現実は残酷なもので異国の女性はアパートから連れだされ、またひとりになってしまった主人公。1人暮らしは慣れていたのに何故かポッカリと空いてしまったのはなぜだろう・・。そして偶然バイト先に訪れた元妻。男は「息子の写真がほしい」と妻に告げ、後日男のアパートに持ってくるという。空いてしまった心のスキマを息子の写真で埋めることが出来るのか、それとも二人はやり直すという道が待っているのか。
「共犯者たち」
父、母そして僕と妹。父は妹が幼い頃に家庭を捨てて出て行った。時が経ち、我々子供たちはそれぞれ結婚し家庭を持ち、月並みだけど幸せを手に入れていたかと思っていた。ある日、妹夫婦に問題があったのは妹の息子の体にアザをみつけたからだった。妹が子供に虐待?まさか・・・。出て行った父と偶然再会、父と母に何があったのか、そして虐待の真実を知った時、離れ離れになった家族の思いがまたひとつになる。
感想
映画化されたのは「atHome」。家族が犯罪者というまさにエンタメ向きのストーリーで、そこに強引に家族愛をねじ込んでくるのだから滑稽といえば滑稽。けれどラストは罪を犯した主人公が刑期を終えて迎え入れてくれた家族は・・やっぱりか、というホッコリさせてくれることは間違いなさそうです。映像にしたら泣けるかどうかは別としてね。
両親から愛情を注がれなかった子供たち。そして夫からの度重なる暴力で精神崩壊寸前だったお母さん。生まれてくるはずだった子どもと対面することが出来なかったお父さん。それぞれ事情があって、偶然知り合い、一緒に暮らすことになった5人。ようやく帰る場所が出来た家族。
気になるのは男性不信に陥っていたお母さんがよく一緒に暮らそうと思ったな(笑)という経緯が飛んでいたので気になりました。それは守らなければいけない明日香と隆史が居たからかという単純な動機かもしれませんが・・。
最後は真当な生き方を選び、本当の家族のように暮らし始める・・・そんな心あたたまるストーリー。
虐待とかDVとか今では当たり前のようにニュースに流れる昨今、本当の家族ってなんだろうと思わせてくれる作品です。