2016年7月に放映される「受験のシンデレラ」の主演は、人気ドラマ『下町ロケット』で悪役が好評だった小泉孝太郎さん。これまた人間臭そうな役柄なので、その点でも楽しみ!
BSでドラマ化する小説を軽い気持ちで読み始めましたが、終盤~ラストにかけて、大泣きしてしまいました。あしながおじさん×シンデレラストーリーといった印象を持った私の感想を綴ります。
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【感想】まさか、こんなに泣けちゃうとは思わなかった!小説『受験のシンデレラ』ネタバレを含みます
読みながら涙が出ると、見えなくて大変~。
もちろん、単純に難関受験に受かっただけで泣けるわけではありません。東大の受かり方だけでは、受験勉強に好感を持てない私には魅力やインパクトが弱く感動出来無いでしょう。
しかし、この物語には、金持ち・貧乏・中卒・高学歴という明暗が激しい設定や、命・闘病・マジな熱意などのグッとくるエピソードが盛り込まれ、私を惹き付けました。
詳しい感想の前に【あらすじ】説明
タイトルに「シンデレラ」と入っているので、受験生本人=女子高生が主人公の青春活劇かと思って読んでみたら、ちょっと違いました。
受験生本人よりも、カリスマ予備講師のおじさんの凝縮した人生歴が目立つ物語だったんです。
高学歴で商売の才能にも優れ、儲けた大金も自由自在に使える独身貴族。なにもかも上手くいってた、まだまだ儲けられる「勝ち組」人生。
だが、残り少ない余命が宣告され…金と欲にまみれたの男が熱い「初心」を取り戻す!
「お前と出会って、思い出したんだ。諦める人生なんて、誰にも歩ませないって誓ったことを」。
そんな男と運命的に出会ったのは、家庭に恵まれずに高校も退学、人生の全てを諦めた様な少女。お金が無いどころか、親が娘のバイト代を盗んだり、夜の商売に売られそうな絶望。そんな少女が「希望」とヤル気を取り戻し、無謀に思える東大合格にチャレンジすることに!!
カリスマ予備講師…五十嵐 (ドラマキャストは小泉孝太郎さん)
東大合格率9割という実績を持つミチター・ゼミナールの経営者。ナンバー2に年収1億払うほどの高所得者。考案した不滅のビジネスモデルで、一生好き放題の人生を送れると思っていたが…。
しかし、根っからの利益主義ではない。塾を始めたきっかけは貧乏人の救済、格差社会で東大にチャレンジさえ出来ない貧乏な家庭の子供達と再生を目指していた過去がある。
少女…遠藤 真紀(ドラマキャストは川口春奈さん)
離婚した母は、生活保護を甘受するほど生活力が無く、ずるい事も平気でする様な人物。父にも頼れない。実質、天涯孤独な少女は彼氏にも騙され自暴自棄に。
近所の安売りスーパーで(大事な)1円をケチって喜んでいる少女が、自腹を切ってでも難問受験に取り組む生活に一変した、貧乏臭いのがイイ!シンデレラストーリーです。
同年代の女性高生達と比べて学歴として落ちぶれてはいるが、賢く生活力があり、純粋な気持ちも持ち合わせている美少女。でも、絶望的な家庭環境で「どうにでもなれ」「どうでもいいや」という気持ちも強い。
だから、絶望してるからこそ、怪しげな”あしながおじさん”みたいな、”上手過ぎる話し”に、ひょいと乗り盲信できたんだろうな。
もちろん、そこで拒んでしまったら物語が成立しないので、盲信しそうな”ちょっと天然な”人物設定なのかな?と想像。(そのイメージで読むので、可愛い~。ドラマ化の川口春奈さんにピッタリの役風イメージだなと思いました。)
興味をそそられたポイント
- 希望の無い状況での発起
- 後の無い必死さ
- 追い詰められた、ビジネスではない本物の熱意
- 500円玉で繋がる心の支え
- 心の底から受かって欲しいと思う講師魂
- 奇跡ではない、綿密な計画と信じる気持ち
五十嵐には、余命(時間)が無い。
着々と、死期と受験の日が近付く。
このリミット制限された緊迫感が、私の心を揺さぶりました。儚いから美しいという感傷でしょうか。
高額を稼げるノウハウをほぼ無償で個人指導してくれる五十嵐。
真紀にとっては感謝しきれない善意だけど、五十嵐にとっては残り僅かな余命を使った「死期に抵抗して、1日でも長く生きるための欲」なんだろうな…生きる希望パワーが熱く、頼もしい。
そんな五十嵐が一日も長く生きる様に、彼の願いが叶う様に、真紀の笑顔が見れるように、願いながら読み終えました。
現実に、出来そうな東大合格マニュアルが魅力的
ストーリー全体がパズルの様に、合格に向けて組み立てられていくのが面白い!そして、あちこちに散りばめられた綿密な計算式が、何か凄い。
好きなシーンは、”東大受験を頑張るための餌”となる説得が「高額年収(今との比較)」だったところ。
守銭奴である真紀のハートに一番響く、”これだけ頑張るだけで、こんなに儲かるよ~”っていう誘い水が上手い(笑)。さすが百戦錬磨のカリスマ講師です!
この、説得のための具体的な計算式もそうですが、「東大大学に受かるためだけの点数計算と覚え方、時間の使い方」ってのが凄く魅力的で、オーバーに言えば私でさえ東大に受かりそうな気がしてきました。
私が学生の頃は、若気の至りで「学校に受かるための受験なんて気に食わない、重要には思えない」なんて嫌悪感を持っていたんですけどね。
その頃に、この物語を読んでいたら…理解できるか?感動出来るのか?分かりませんが、何か変わっていたかもしれません。まぁ、でも、大好きな夫と出会って暮らしている今に後悔や未練は1ミリもないので、今後の人生や終活に役立てたいと思います。
受験のシンデレラの原作は映画
あとがきには、映像の方が活字(小説)よりも目に留まりやすいという様な理由で、最初に映画制作を選んだお話しが載っていました。
この小説は、東大医学部卒の精神科医・受験アドバイザー・評論家など多くの肩書きを持つ著者が初めて監督した「映画を小説化したもの」。ですから、小説よりも映画の方が先、すなわち映画が原作と言えるでしょう。
106分の映画枠では語り切れなかった、もっと「監督がやりたかった」「詳しく描きたかった」エピソードを足し、完成したのがこの小説。補完版・完成版と言えるのかもしれません。
そんな著者の想いがギッシリと詰まっているからか、満足度の高い読後感を味わえました。この感想を書き終えたら、映画DVDをレンタルして見比べてみるのが楽しみです!