問題作「わたしを離さないで」原作徹底紹介!ネタバレあらすじ&感想

2016年1月からTBS系でドラマスタートする今作。
舞台はイギリスから日本へ移し主人公たちはもちろん日本人として登場。

主演は相変わらず人気のホンワカ女優の綾瀬はるかさん、
個人的にとても好きな女優さんです。

そして主人公の親友役に三浦春馬さん、水川あさみさんが共演。
ということは頼りない三浦さん、独占欲・自分勝手な水川さんが見れるのかな?

親友と言っても3人は一言では言い表せれない複雑な関係。
そんな心理描写が上手く出せると良いですね。
今回はドラマの原作となった小説を徹底紹介したいと思います。

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「わたしを離さないで」原作の簡単なあらすじ

小説は主人公が読者に語りかけるような構成になっており、
現在進行形ではなく、過去を振り返る回想物語。

主人公はキャシー・H、年齢は31歳。
本人は謙遜していますが自他ともに認める優秀な介護人。

介護人と言っても一般的なそれではなく、
彼女が担当するのは臓器提供者、いわゆるクローン人間です。

キャシーもまたクローン人間であり、
将来は夢も希望もなく臓器提供が最終地点ということになります。

ヘールシャムという施設で幼少時代から思春期を集団で過ごし、
10代後半からコテージで生活をして、その日が来るのを待ちます。

彼らは抗うこと無く提供という現実を受け入れ
目的意識をしっかりと持ち生活をしていました。

親友のルーシー、そしてトミー。
ごく普通の若者たちの友情と恋愛が描かれているだけなのに
何故こうも胸に突き刺さるものがあるのか?

日本生まれのイギリス育ちである著者・カズオ・イシグロによる
残酷な運命に翻弄された若者を描くブッカー賞に輝いた話題作。

もちろん彼は英語で出版し、日本では翻訳された本が出回っていますが
これがまた素晴らしい翻訳と言ってもよいでしょう。

イグシオさんの作品をわかりやすく、
女の子の自然な語り口調で、すーっと入ってくる文章。
日本でも絶大な支持を得ているのは作品の良さと翻訳の良さ、
両方マッチしているからだと思っています。

それではもう少し詳しくお話しましょう。

 

もう少し詳しく「わたしを離さないで」のあらすじ&感想

※ネタバレもありますのでご注意ください。
また、折角なので主人公の語り口調を少し真似てご紹介したいと思います笑

ヘールシャム時代

まず始めに主人公たちを紹介しないといけませんね。
キャシーは物静かで頭がよく洞察力があり、
人に相談するよりも自分の中で解決しようとするタイプ。
常に周りを見て行動していますので協調性があると言ってよいでしょう。
時々空想にひたることがあるようです。

親友のルースは、常に自分が優位に立っていないと気がすまないタイプで
集団でも中心人物として行動し、なによりも孤独を恐れているような気がします。
自慢話に花を咲かせ、時にはホラまで吹いてしまう姿に
横で見ているキャシーはどう思っているのでしょうか。
だけどルースの二面性に気づいているのはキャシーだけかもしれません。

そして男友達のトミーは不器用でいじめられっ子。
キャシーはトミーのことがとても心配でしたが、
ルースは「だからいじめられるのよ。」と蔑んだ目でみていたにもかかわらず
しれっとカップルになっています。
二人のことは後でもう少し詳しく説明しますね。

ヘールシャム。
子供たちがのびのびと創造性豊かな人間になるために作られた施設で
言わば臓器提供の子を育てるモデルケースと言ってよいでしょう。
他にも施設があるようですが、人間らしくとは言いがたい
クローン人間をただ育てる場所といったほうが自然かもしれません。

だから他の施設で育った子供たちは、
ヘールシャムが憧れの場所であり、そこで育った人に対して
羨み・妬み・警戒など距離を置く人も少なくありません。

さて、先ほど創造性豊かなと言いましたが、
施設では絵を描いたり詩を書いたりオブジェを制作したり、
また、制作したものを生徒同士で交換しあう交換会というものがあります。

そして外の世界と繋がることが出来る販売会では、
洋服・時計・小物など宝物が手に入るイベントで
とにかく刺激的で楽しい生活を送る、それがヘールシャムなのです。

キャシーは、その販売会でカセットテープを手に入れて
今でも大切に保管しています。

正確にはそこで手に入れたテープではないですが・・・、
それはまた後程お話しますね。

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キャシーが大切に持っているジュディ・ブリッジウォーターの「夜に聞く歌」

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(映画のワンシーンより)

ジュディ・ブリッジウォーターの「夜に聞く歌」に収録されていた「わたしを離さないで」。

小説でも「紫色のサテンのドレスを着ている」とキャシーは語っているので
まさにこのジャケットのことでしょう。

カセットテープに収録されている曲はどれもバーで聞くようなものばかりで
とても子供が好んで聞くようなジャンルではありませんが
唯一「わたしを離さないで」は何か説明できないけど惹かれるものがあった。

「ネバー、ネバー、ネバーレットミーゴー・・」

このサビの部分がお気にい入りで繰り返し聞いていたキャシーですが
ある日、奇妙な出来事に遭遇してしまうのです。

施設の支援者としてたまに訪れるマダム。
生徒たちとは距離を置き、冷たい表情のマダムに嫌悪感を抱かずにはいれません。
私たちを嫌っているのになぜここに来るのか?
そんな疑問はキャシーにもあったわけですが、
ある日プレーヤーで先ほどの音楽を部屋で聞いている時に
人の気配を感じ、振り返ってみると戸口の向こうにマダムがいたのです。

そう、彼女は泣いていた、しかもしゃくりあげるように・・・。
なぜ彼女が泣いていたのか幼かったキャシーには見当がつきません。

しかしキャシーが大人になり、マダムと再会した時に
あの時の心境を詳しくを教えてくれたのです。

「科学が発達し、臓器提供するクローン人間を作ることで新たな治療法が確立される。しかし残酷な世界であり、その中にあなたという少女を発見した」

音楽を聞きながら左右に体を揺らしてるキャシーを見て、
何かこの世から消えさりそうな世界をギュッと抱きしめて”離さないで”と懇願しているように見えたそうです。
この物語の核心部分でありますが抽象的な表現ですね。
どこか冷たく”気味の悪いものをみるかのような眼差し”とキャシーが表現するほどヒドいものだったのかわかりませんが
マダムの感情がストレートに表に出ていたわけでなく、むしろ自責の念に駆られたり、
人としてどう接してよいか分からずに子供たちを見ていたのかもしれません。

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唯一真実を語ってくれたルーシー先生

先生・・、施設では保護官と呼ばれているものですが
ルーシー先生だけは他の保護官とは違っていました。

それはトミーのこともありますが、
生徒たちにとって忘れられない出来事があったのです。

キャシーたちは15歳になり、ヘールシャムでの生活も最後の年を迎えたある日、
男子生徒が将来の夢を語っていたのでルーシー先生が思わず割って入ったのです。

「あなた方は教わっているようで実は教わっていません。」

私たちは映画スターになることも、近所のスーパーで働くことも、
更には中年、老後を経験すること無く臓器提供が始まるのだと。
それ以上は語らなかったですが、生徒ひとりひとりの顔を見渡すルーシー先生の表情は複雑です。

彼らを救うことが出来ない無力さ、悲しみと怒りが入り混じった感情を
キャシー達は感じ取ったのではないでしょうか。

もちろんルーシー先生は覚悟の上で生徒たちに打ち明けたのでしょう。
ヘールシャムでは子供たちが夢や希望を持ち、すくすくと育って欲しいという
運営方針に反することになりますから先生の立場が悪くなることは避けられません。

結局、彼女は辞めさせられてしまったわけですが
以前、トミーに「苦手な創作活動は無理にしなくて良い」というアドバイスをしたことがあるのですが
わざわざそれを訂正して、創作は重要で証拠になるからおやりなさいとトミーに訴えたのです。

このことが原因と言うべきかわかりませんがトミーが突拍子もないことを思いつくのですが
それはまた後ほどお話しますね。

そう言えばあれだけルーシー先生が将来の事を語ってくれたのに
ヘールシャムを卒業してコテージで生活して間もない頃、
キャシー達が将来の夢を語り合っていた事を考えると、臓器提供という現実をあるがままに受け入れて
彼らなりに頭のなかで処理できたということでしょうか。
若者らしい他愛もない会話だと思いますが、考えてみれば実現できない夢を語るのはしばしば私たちはありますよね。

すいません、長くなってしまったので2ページにしました。