問題作「わたしを離さないで」原作徹底紹介!ネタバレあらすじ&感想

複雑な三角関係

キャシーは何故ルースのような扱い辛い性格の子と付き合っていたのでしょうか。
出来ないことをあたかも出来るような素振りを見せたり、
怒らせると陰湿ないじめをしたり、先生から贔屓目で見られているのよ、といういやらしい立ち振舞い。
今言ったことは子供時代のルースのことなんですけどね。
大人になっても読んでいる本のあらすじをバラしたり、
傷つくことを平気で口に出していってしまったり・・・。
二人はしょっちゅう喧嘩ばかりしていたような気がします。

そしてトミーへの態度。
いじめられっ子のトミーは男子からよくからかわれて
癇癪を起こしていましたが、ルースがその様子をどんな目で見ていたのか想像できるでしょう。

あのキャシーでさえ皆がいるところでトミーと話すのは恥ずかしいと
思ったときがあったようですが、それでも彼のことを心配していたのは事実です。

そんなルースとトミーがカップルになったのは意外ですが
実はキャシーとトミーの邪魔をしたいだけだった、という事実がわかったらどうしますか。

トミーとルースはヘールシャム時代に破局して
卒業ギリギリでヨリを戻していますが、
これはルースが卒業後に孤独になることを恐れていたからだと思っています。
どちらにしても長年二人の間を裂いていたことの罪は非常に重く、
本人も後に「許してもらおうとは思わない。だから私がダメにした二人を取り戻して欲しい」
そんなことをルースが言っていましたが、さすがに遅すぎます。
ルースもそうですがトミーは臓器提供を開始していて体力も衰え、そんなに時間はありません。
本当にこんなギリギリになってそんなこと言われても・・・という感じですよね。

しかしどこで入手してきたのか、ルースはマダムの住所をキャシーに手渡して
ぜひ会って来て欲しいとお願いするのです。
なぜマダムの住所なのかはこの後に説明しますね。

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臓器提供が猶予されるってホントなの?

提供者がカップルになれば
臓器提供が数年間猶予され、その間は二人で暮らすことが出来るらしい。

で、以前にお話をさせていただいたルーシー先生とトミーの事が関係してくるのです。
二人はどうやって愛し合っていることを証明するのか?
トミーは自分たちが描いた絵から作者の魂を読み取り、愛し合っているか証明できる、
という突拍子もない考えを思いついたのです。本当に突拍子もない考えです。

でもキャシーは使命を終えたルースの願い、
そしてトミーの考えに賛同してマダムに会いに行ったのです。

キャシーは分かっていたのでしょう、猶予なんて噂でしか無いことを。
案の定厳しい現実を突きつけられ、呆然とするトミー。
僕たちは些細なしあわせも手に入れることができないのか。

ルーシー先生のアドバイスで癇癪は無くなったトミーですが
帰りの道中で車から降りて泣き叫んだのは言うまでもありません。

トミー、もう我慢しなくていいんだよ。

そんな気持ちで彼をギュッと抱きしめるキャシー。
この物語の中で一番つらいシーンがここでした。

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読み終えて感じたこと

臓器提供をするためにクローン人間を作ることは論外ですが
この物語は前提のお話ですから、ヘールシャムが悪という感じではありません。
一応物語に出てくるクローン人間を育てる劣悪な施設があり、
そのような施設とは全く異なり人間らしく育てる事を方針としています。

ですからクローン人間の是非はともかくとして
ヘールシャムの責任者であったエミリ先生、支援者であるマダムは
改善を試みたということになります。

それでも閉鎖に追い込まれてしまったのは、
ある種の危機感であり、クローン人間に支配されてしまうかもしれないという
まさに人間らしい考え方で幕を閉じたのです。

そして小説の表紙に描かれているカセットテープ。
キャシーはヘールシャム時代に紛失してしまいますが
ノーフォークという街を訪れた時に中古ショップで見つけています。

ノーフォークは国中の落し物が集まる場所と言われていますから
まさに数年越しの落し物が見つかったのです。

また、トミーが提供を終えて亡くなった後、
特に用事もないのにノーフォークを訪れたキャシー。

幼い頃から失い続けたものがあるかもしれないと、
目を閉じて空想に浸っていると、目の前にトミーの姿が現れ
彼女の頬からは止めどもなく涙が溢れてくるのです。

彼女は失ったものをそっと拾い上げて
しっかりと胸にしまい込む事ができたのでしょうか。

 

小説の結末は?

耕された土地が延々と続く広大な大地で
1人佇むキャシー。
空想の世界で手を振る笑顔のトミーが現れて
止めどもなく涙が溢れてくるのです。
しかしいつまでも泣いていられません、
最後に
「行くべきところへ向かって出発しました」
という言葉で小説は締めくくられていますが、
彼女が向かった先は一体どこなのでしょうか?

実は映画では、彼女にも提供の知らせが来た
という流れになっていますので、
彼女もまた変えられない運命に従った思うのが自然でしょうね。

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「わたしを離さないで」豪華なキャスト達

保科恭子(キャシー・H)綾瀬はるか
たまに空想にひたることがある可愛らしい女の子。読書好きで頭がよく、別け隔てなく誰とでも付き合える優しい子。
ルースの意地悪に対抗してギャフンと言わせたことがあり、女同士の熱い戦いも今作の見どころの1つかも知れない。
ドラマでは綾瀬はるかさんが演じるようですが、目を細めて遠くを見つめる表情とかやってもらいたいですね。

酒井美和(ルース)水川あさみ
上からマリコならぬ上からルースと言いましょうか、常に優位に立っていないと気がすまず、そして孤独を誰よりも恐れている扱いにくい女の子。
彼女の取扱説明書を持っているのはキャシーだけでしょうね。主人公の短い人生を大きく左右する存在です。

土井友彦(トミー)三浦春馬
思い通りにいかないとキレる男の子。だからみんなに嫌われるんですが、それでも心配そうに見つめるキャシーが可愛らしくてたまりません。
もしトミーとキャシーが付き合っていたら・・・と考えると悲しくなる物語です。

神川恵美子(エミリ先生)麻生祐未
クローンの子供たちは人と同じ。だから人間らしく尊厳を守りながら育てなければいけない。
そんな思想でヘールシャムを設立して健やかに子供たちを育てているのです。

堀江龍子(ルーシー先生)伊藤歩
子供たちに「将来は夢も希望もない」「臓器提供だけです」と真実を打ち明けますが、はたしてそれが正しいのかどうか。
彼女の行動は意見が真っ二つに分かれると思います。ただ、彼女は子供たちのことを思って、という優しい気持ちも踏まえるとほんとうに難しい問題になってきます。

マダム・真飛聖
エミリ先生に賛同した人物。しかし子供たちに対する態度はどこか冷たくよそよそしい。それは子供にもハッキリと伝わっているようです。
ですが彼女の本心はそんな冷酷な人では無さそうです。

 

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