ドラマ「民王」の原作の感想ネタバレあり・読者を惹きつける3つのポイント

2015年7月から放送されるドラマ「民王」

原作小説を読んでみましたが、いや~、ホント面白いですね!
池井戸潤氏の作品なので安心感もありますが、
当時の政治もちょっぴり風刺するなど読み応えバツグン。

今回はそんな「民王」の面白さを徹底紹介です♪

関連:ドラマ「民王」の相関図と犯人の動機は?・黒幕などまとめてみました

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簡単なあらすじ

総理大臣の武藤泰山(むとうたいざん)と
そのバカ息子・翔(しょう)の体が入れ替わった?!。

重要な会議が目白押しの中、
漢字の読めない息子が総理大臣、
そして良くも悪くも弁が立つ父親が息子の就職面接に挑むという
痛快ドタバタ劇が繰り広げられる。
武藤内閣はオシマイなのか?
そして体が入れ替わってしまった原因は?

そこにはある組織の陰謀が大きく関わっており
巻き込まれた武藤親子は原因究明とともにこの難局を乗り越える。

「ようこそ、わが家へ」と同様、父子の活躍、
そしてその家族を支える周囲とのチームワーク、
そんな心あたたまる痛快政治エンタメです。

それでは個人的に「ココが良かった!」と思えるポイントを3つご紹介したいと思います。

 

ポイント1「ありきたりな題材でも真実味がある」

体が入れ替わるというストーリーはよくある話なので
陳腐で少年少女漫画のようになってしまう危険がありますが
そこはさすがというべきか、真実味を帯びた設定は、
男性読者も納得する内容なのです。

少し詳しくお話しますと、

体が入れ替わった原因は、
アメリカのCIAが研究を進めてきた最先端技術が悪用されたということ。
その研究内容というのがリモートビューイング(遠隔操作)から発展したもので
電気信号でもある脳波に直接信号を送ることによって情報を伝達することが出来ないのか?
という飛躍的な話でもありますが、他国のスパイ活動に利用出来る国家機密的な恐ろしい研究なのです。

その技術が何者かの手によって盗み出され
更に悪用されてしまったことで武藤親子の入れ替わりが起きてしまったのです。

親子は体に3ミリほどのチップを埋め込まれ、
脳波を操作され人格を入れ替えられてしまった。

確かに入れ替わりは非現実的ですが、
脳波伝達に関する研究は飛躍的に進歩しているのです。

脳波研究に関するこの記事を見てください、
記事によると脳から脳への直接的なコミュニケーションは10年前から研究が進んでおり
実験マウスに関しては脳に装置を埋め込むという本書と似たような実験を行い、
見事に成功しているようです。

かなり興味深いと思いませんか?w
子供だましではない大人の男性でも舌を巻く設定は、
面白いと言わざる得ないポイントの一つであると考えています。

 

ポイント2「当時の政権を風刺」

実は民王は雑誌ではなくポプラ社のWEBマガジン「ポプラビーチ」
2009年9月から連載がスタートしたのです。

当時は自民党の麻生太郎氏が首相でしたが、
前任は福田康夫氏、安倍晋三氏が1年という短い期間に立て続けに辞任し
自民党も厳しい状況が続いていました。

そんな中、麻生首相による漢字の読み間違え、
中川財務大臣の泥酔記者会見、
と支持率が瞬く間に低下し、総選挙では自民党が歴史的な大敗を期する事になったのです。

本書では上記の内容が冒頭からサラリと入っていき、
誰が読んでも麻生政権のことだな、というのがわかるわけですが
だからといって「風刺」で終わらないのが池井戸氏の「民王」です。

作者も政治的信条は一切ないと語っており
当時の政権を批判するために書いたわけではありません。

いつも真面目なものばかり書いていると、たまにどうでもいいものを書きたくなるのです。(ドラマ「民王」公式サイト池井戸潤氏コメント)

というように、意外と真面目な内容かと思いきや肩の力を抜いて作り上げたドタバタコメディなのです。

現政権の風刺というと時代とともに廃れてしまいますが
今作はあくまでも小説の断片に過ぎず、読者を満足させる本質は別のところにあるのです。
その本質というのは政治家としてのあり方、「真実」とか「正論」という言葉が顕著に出てきますが
それだけだと真面目くさった本になってしまうので
そこはユーモア溢れるスパイスの効いた池井戸氏らしいいつもの痛快逆転劇に仕上がっているのです。

民王のモデルに関してこちらの記事で詳しくご紹介しています

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ポイント3「正論」

政治に全く興味がなかったドラ息子、バカだけど真っ直ぐで素直な若者を
政界に放り込んだらどうなるのか?
保身、利権、票と金、そんなことばかり考えている世の政治家達と違い、
ズバズバとホンネを言うあたりが実に爽快で気持ちがいい。

与党の政治家にスキャンダルが出れば野党が突付き、
そしてマスコミが煽る。

「お前らそんな仕事して恥ずかしくないと思わないのか。目を覚ましやがれ!」

言葉は悪いですが、言っていることは正論。
NHKの国会中継で

「一体何を議論してるんだこの人達は・・・。」

と思ったり、マスコミが取り上げる題材に疑問を持つ方は沢山いらっしゃると思いますが、
そうした世の中の疑問をストレートにドラ息子が訴えているのです。

実は若かりし頃の武藤泰山も翔のようにがむしゃらに世のため人のために頑張ろうと奮闘していた時期もありましたが
いつの間にやら周囲の雰囲気に流され、職業政治家に成り下がっていたのは否めない。

ですが今、各国首脳が集まるサミットに出席するに相応しい首相になろうとしているのです。

 

「民王」感想ネタバレあり

面白いポイントを3つ挙げてみましたが、
もちろん池井戸氏ならではの勧善懲悪の痛快ストーリーだからこそ読み応えがあると思いますが、
政治という大きなテーマの片隅に家族愛が描かれているのは作者らしいニクい演出だと思います。

息子の翔が国会で熱弁?をふるう姿も頼もしいですが、
現総理大臣が面接官や政治評論家と論戦する姿は笑わずにはいられない。

そして水と油の関係だった父子の和解、
浮気をしていた首相は妻から1億円を要求されていた情けない夫という側面も
池井戸氏がくだらないと言っていた部分に当てはまるのでしょう。

それでも夫婦の絆は消えること無く、
昔の青春時代を思い浮かべながら熟年夫婦が寄り添う形で締めくくってるのがまたいい。

そういえば首相の心がグラリと揺らいだのはホスピスを訪問した時、でしょうか。

「ここには嘘がありません。」

終末期ケアを行う施設でシスターが言った一言、死を待つ人達を前に
首相は何を感じ、何を思ったのか・・。

政治家として目を向ける場所、耳を傾ける方向に気づいたのかもしれません。

そしてラストはちゃんと元通りに戻り、
本物の首相・武藤泰山がアメリカ大統領と固い握手を交わし
息子の翔は安全で安心な無農薬野菜作り実現のため農業の分野に進んだ。

更に首相は今一度民意を問うため解散総選挙を断行!

「この日本、俺が必ずこの手で変えてみせる。」

強い信念のもと、再び立ち上がった武藤泰山、彼の目には一寸の迷いも無く自信に満ち溢れたいた。
という感じですね。

いや~、実に気持ちのよい終わり方です。
風刺でユーモア溢れるテイストに仕上げて、あまり小難しくせずに
誰でも読みやすい内容、慣れない私でもサラリと読んでしまいました。

元々エンターテイメント性が高いのでドラマ化はし易いと思います。
7月に放送スタートする「民王」楽しみですね♪

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