ドSで泣虫「探偵少女アリサの事件簿」原作小説あらすじ・ネタバレあり

テレビ朝日系で放送されることになった今作。
青いドレスにフリル付きのエプロンを着た毒舌美少女はなんと本田望結ちゃん。そのお守役はドラマや映画で活躍中の俳優の田中圭さん。

可愛らしい望結ちゃんの毒舌っぷりが楽しみですが、その前に今回は原作を読んでみましたので小説の内容を徹底紹介したいと思います。

作者は「謎解きはディナーのあとで」で有名な東川篤哉氏。子供から大人まで楽しめるコメディタッチのミステリー入門書です。

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簡単なあらすじ

勤め先のスーパーでオイルサーディンの缶詰を大量に誤発注してしまい、在庫とともにクビになってしまった橘良太(たちばなりょうた)31歳。

都心のアパートを引き払って地元の神奈川県川崎市のアパートで「なんでも屋タチバナ」を開いた。その名の通り、犯罪以外ならなんでも引き受けてくれる街の便利屋さんだ。

そんな、なんでも屋に依頼をしてきたのが豪邸に住む綾羅木幸三郎。夫婦ともに探偵業を営んでおり、妻の綾羅木慶子は世界を股に掛ける売れっ子の探偵。

そんな夫婦には綾羅木有沙という10歳になる一人娘がいる。青いワンピースにフリル付きのエプロン、そして白いソックスに赤い靴がトレードマーク。まさに「ふしぎの国のアリス」から飛び出してきたような女の子だ。

で、妻が海外出張、父親の幸三郎も仕事で家を空けるから「なんでも屋」の橘くんに娘の子守をお願いしたいという。娘の有沙は父親の前ではおしとやかで可憐に振る舞うのだが、父親がいなければ態度は激変。自称探偵、上から目線で、ときには暴力も振るうというとんでもない暴君お嬢様。

そんなおてんば娘と何でも屋の橘が、ミステリアスな難事件を次々と解決していくというのが本作のストーリー。基本的には有沙が解決をして、その手柄を橘が横取りし、ブーブーと有沙が文句を言うというのがいつものスタイル。

毒舌で泣き虫。でも10歳の女の子らしい可愛一面も覗かせる「アリス」・・じゃなくて「アリサ」の物語です。

 

もう少し詳しく「探偵少女アリサの事件簿」のあらすじ(ネタバレあり)

この物語は4作品からなる短編集。それぞれの事件を有沙がしっかりとトリックを解明し事件解決へと導いてくれます。

1、「名探偵、溝ノ口に現る」

有名な画家・篠宮栄作が自宅のアトリエで殺される密室殺人事件。
栄作には息子が二人おり、兄・一郎は栄作のマネージャー、弟・達也は父と同じく画家として活動。達也から便利屋の橘が絵のモデルを引き受けたことで事件に巻き込まれてしまう。

達也が自身のアトリエで橘をモデルに絵を描いていると、母親の悲鳴が聞こえてきたので、父のアトリエに行ってみると栄作が頭から血を流して倒れていた。何者かがリビングに飾られていた額入りの絵で栄作の頭を殴ったらしい。

橘が篠宮家を訪れた時はリビングに絵はまだ飾られていた。とすると達也のアトリエに居る時に誰かが父親を殺したのか・・・・

ここで名探偵・有沙が登場。
彼女の推理によると橘が訪れた時は父親はすでに殺されており、リビングの絵は額も含めた一枚の紙で仕上げたトリックアートだという。一見すると立派な絵が飾られているように見えた絵が実はペラペラの紙だった。犯人は親の遺産を狙った兄ではなく、弟の達也だった。

橘はモデルとして篠宮家を訪れたんだけど、実は達也のアリバイ工作に利用されただけということ。達也は橘が来た時、リビングに絵はまだありますよ、というアピールをした後、二人は達也の部屋に行きましたが達也は一瞬だけリビングに戻り、すぐに自身の部屋に入った。その時にトリックアートの絵を折り畳んでポケットに突っ込んだということです。

偉大な父に認められなかった達也の現代アート。徐々に父子は嫌悪な仲になり、達也は殺意を抱いた・・そんな事件です。

 

2、「名探偵、南武線に迷う」

有沙の父、綾羅木幸三郎からまたお守りの依頼が来た。今度は娘がはじめてのおつかいをするから見守ってほしいとのこと。父親の知り合い・中崎浩介に世話になったお礼を渡してほしいと、JR南武線の分倍河原駅にある喫茶店で会う約束を取り付けたらしい。

綾羅木邸があるのは溝ノ口。溝ノ口駅から分倍河原駅まで電車に乗り、目的の喫茶店で中崎と会い無事お使いは終了。しかし電車で溝ノ口駅まで戻ると、駅のベンチで女性が何者かに殺害されている事件と遭遇。被害者は溝ノ口在住の塚本潤子33歳。

橘の友人で刑事の長嶺優作はこの事件を追っており、塚本と不倫関係にあった中崎浩介が犯人だと睨んでいる。なんという偶然・・・中崎なら有沙が喫茶店で父の御礼の品を渡した相手だ。

中崎は妻がいるのに潤子と関係を持ち、その関係がこじれそうだったから殺害したのだろうと警察はみている。しかし中崎は当日、有沙と分倍河原駅の喫茶店で会っているので時間的なアリバイがある。

溝ノ口駅で潤子を殺害して分倍河原駅まで行くのは死亡推定時刻から不可能。ただ、塚本潤子は溝ノ口駅で殺されたのではなく、実は別の場所で殴打され、フラフラになりながら溝ノ口駅のベンチで絶命したらしい。

じゃあ彼女は一体どこで中崎に殴られたのか?

実は重要な手がかりが一つだけある。潤子は仕事の後輩女性と同棲しており、事件当日、潤子は後輩に電話していた。「いま、やのぐちにいる」という言葉を後輩は「や」が聞き取りづらかったので「ノグチにいる」と思い込んでいた。ノグチとは溝ノ口の略称で矢野口とは7駅も離れている。潤子は矢野口で中崎に殴られ、フラフラになりながら電車に乗り溝ノ口駅のベンチで倒れた。

これは南武線の路線図を確認してもらうとわかりますが、矢野口から分倍河原までは4駅。事件当日、中崎は矢野口で潤子を殴り、電車で分倍河原まで行き、喫茶店で有沙と会うことは可能。

ちなみに中崎は口封じのために後輩女性を殺害しようと潤子宅を訪れていますが、有沙が危険を察知。橘と有沙は急いで潤子宅に向かい、有沙の強烈なキックが決まり中崎をKO。犯人逮捕で事件は解決したのです。

 

3、「名探偵、お屋敷で張り込む」

「なんでも屋タチバナ」に珍しく女性からの依頼が舞い込んだ。依頼主は須崎瑛子51歳。夫は会社経営者の須崎健夫60歳。夫の浮気を調査して欲しいという。ただ、尾行などはしなくてよく、瑛子が一日どこかに外泊するので、その時に夫が女性を自宅に連れて来ないか見て欲しいとのこと。

洲崎家は健夫と瑛子、瑛子の母、そして息子と娘、家政婦が住み込みで働いているので6人で生活している。敷地には離れがあり夫婦はそこを寝室として使っている。橘と有沙は瑛子の母の友人として洲崎家に一泊することにし、夫の健夫を監視した。

離れの出入り口と窓は母屋から見える位置にあるため、出入りはチェックできる。深夜まで監視していると先ずは健夫と家政婦が離れに入り、直ぐに家政婦が出てきた。そして深夜に足元まで隠れる黒いワンピースにサングラス姿の女性が離れに入っていき、2時間後にまたその謎の女性が離から出てきた。

全身黒ずくめの女性が不倫相手なのだろうか?

そして不倫現場を押さえる依頼のはずが、なんと殺人事件が発生。翌朝、健夫が起きてこないので離れを見に行くと血を流した健夫が見つかった。更に外泊していた瑛子が失踪。数日後に瑛子が遺体で発見されるという悲劇が起きてしまった。一体誰が夫婦を殺したのか。

実は、犯人は健夫で妻を殺してから自分は自殺してしまったのです。離れに家政婦とともに入り、家政婦が直ぐに出てきましたが、この時の家政婦は変装した健夫だったのです。そのまま妻・瑛子の元へ行き殺害してこんどは全身黒ずくめの謎の女性に扮して離れに入る。2時間後に離れから出てきたのは家政婦が謎の女性になって出てきたということです。一人になった健夫は遺書を残して自殺。

洲崎家の会社は元々、妻の家系のもので健夫は養子として結婚。健夫は社長になったが実権は妻と妻の母が握っており、操り人形だったらしい。そんな惨めな人生に嫌気が差して妻殺しを思いついたという。今回、妻が橘に依頼したことは健夫も気づいていたのでそれを上手く利用し、橘の監視がある状況の中で堂々とトリックを使ったということ。

しかも自殺ではなく黒い服の女に殺られた被害者のようにみせかけて・・。

なんだか後味の悪い悲しい事件です。

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4、「名探偵、球場で足跡を探す」

「なんでも屋タチバナ」は犯罪以外ならどんな依頼でも引き受ける。そう、たとえば野球の試合に出てくれという依頼でも。今回はそんなお話。

野球が上手いわけじゃないけど引き受けてしまった橘。案の定、助っ人どころか足手まといになる始末。まあそんな野球のお話はそれくらいにしておいて、実は草野球チームの監督が何者かによってボウガンで撃たれ死んでしまったのだ。

つい最近、矢ガモ事件が発生したばかり。カモを撃った犯人が、今度は監督を殺してしまったのか?

通り魔事件のように思われた今回の事件。実はちゃんと動機があって殺されたのです。しかしこの事件もちょっとしたトリックがあり、殺された監督はピッチャーマウンドで倒れていた。足跡は監督のものだけ。とすると離れた場所からピッチャーマウンドにいる監督を狙ったことになるが、亡くなったのは深夜だったのでそれは物理的に難しい。

じゃあ至近距離から撃たれたのか?

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実は、梯子を2脚ロープで固定して、隆起したピッチャーマウンドまで伸ばし、梯子の上を歩けば足跡は残らない。呼び出された監督は深夜だったので、梯子の存在に気付かないままピッチャーマウンドまで行き、ボウガンで撃たれた。犯人はまた梯子の上を歩いて戻り、梯子を回収。足跡をつけずに現場を去ったということです。

犯人は別の草野球チームの監督。野球賭博が見つかり、発覚を恐れて殺害したということです。

梯子を連結させてピッチャーマウンドまで橋のように架けるという発送は凄いですが、そのトリックを発見した小さな探偵・有沙の推理力が冴え渡る事件でした。

以上、4作品はこんな感じです。

次のページでは、普通なら流し読みしてしまう部分でも知っていると「あ~、これはあれだな~」と思う箇所があるのです。

それをご紹介したいと思います。