ドラマ「とげ 小市民 倉永晴之の逆襲」の原作を徹底紹介

フジテレビ系(東海テレビ)で10月8から放送されることになった今作。
公務員の男性が公私共にトラブルに巻き込まれて行く話なんですが、これがまたトラブルの数が半端なくストレスを抱えた主人公は冷静さを失い、上司だろうが市長だろうがお構いなしにキレまくる!という今までに無い変わったストーリー。

主人公を演じるのは「かっこいい犬」でお馴染みの田辺誠一さん。
もの静かな感じで感情的になるタイプじゃないけど一度切れたら手がつけられない?そんなイメージにピッタリの俳優。

で、今回ドラマの原作が気になり、少々文庫本が分厚いなと思いながら読んでみると結構面白い。サラリーマンが窮地に陥り最後にはスカッとするストーリーは半沢直樹でお馴染みの池井戸潤さんの作風に似ているのかな。

作者は山本甲士さんと言ってもピンと来ないと思いますが、
「三丁目の夕日」といえば「あ~」という感じでしょうか。

今作は著者の前作「どろ」、「かび」など巻き込まれ系の作風の第3作目です。

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簡単なあらすじ

主人公は南海市役所の市民相談室で働く主査の倉永晴之。
いわゆる中間管理職。
上は信頼出来ない上司、下は役立たずで愛想のない部下という職場環境で業務内容は市民からの苦情対応という如何にもストレスが蓄積されそうな仕事をしている。

そんなある日、「公園の池でワニを見た」という女性からの連絡を機にトラブルが頻発。プライベートでは嫌がらせの被害にあったり、妻が飲酒運転で事故を起こすなど公私共にトラブル続きでストレスを抱え込んでしまった倉永は感情的になることが多くなり、時には上司にもお構いなしに暴言を吐いてしまう。

市民相談室はあくまでも窓口的な役割で市民から相談があった場合、
対応できる案件は担当の課に回すのが仕事。

しかし我々も一度は経験したことがあると思いますが、
どこの課が担当なのか線引きが難しい場合、「タライ回し」にされることが多い。

最初に倉永がブチ切れたのがこのタライ回し。
温厚な性格と自負する自分がまさかこんな感情的になるとは・・・
しかし問題があれば指摘し、言うべきことは言わなければ改善されない。

たとえそれが上司であっても、だ。

短期間の間にまあ出るわ出るわのトラブル続き。
プライベートでは子供たちのいじめの問題、妻の飲酒運転事故、自宅への嫌がらせなど、ある意味身近に起きそうな出来事ばかりでリアリティがありますが、流石に短期間でここまでトラブル続きだと主人公の倉永じゃなくても発狂したくなる。

上の人間は権力や保身のことばかり、お役所仕事で横のつながりもなく円滑に回らない縦社会、仕事ができない部下。不満をぶつけたついでに暴言まで吐き散らす彼の勇姿は我々サラリーマンからすれば神様のような存在かもしれない。

さらに事態はエスカレートし今度は市長相手にとんでもないことをやらかすようですが
人生を大きく左右するトラブル続きの結末はいかに?

ということでもう少し詳しい内容をご紹介したいと思います。

 

もう少し詳しく「とげ」のあらすじ(ネタバレあり)

 

ワニ公園に本物のワニ?

白銀佳代(木の実ナナ)と名乗る60代の女性から「公園でワニを見た」という通報があり現場確認に行った倉永。

白銀佳代といえば以前からくだらない内容の電話をしてくるクレーマーおばさん。それでもほっとく訳にはいかない。

ワニといえば約1億年前の巨大ワニの化石が南海市で発見されたことで話題となり、市のPRとしても積極的に使っており、「ワニ公園」の愛称で親しまれている中央公園もワニのオブジェを建てるなど南海市のマスコット的存在になっている。

他の課と連携してメディアを呼び込み、ワニを短時間で発見、警察も出動して大捕り物の末、無事小柄なワニが捕獲された。
一体誰がこんなところに放流したのか?

実は通報した白銀佳代が市に嫌がらせしてやろうとネットで購入して池に逃がしたのだという。彼女は5年前の市議会議員選挙で最下位で落選した時に、他の候補に誹謗中傷をしたり選挙結果に納得できずに騒いでいたことで役所内でも有名な人物。それ以降、度々くだらない電話をしてくるおばさんだった。

彼女はワニの第一発見者としてマスコミのインタビューで
「市に相談したんだけど、すぐに対応してくれなかった」

と、何食わぬ顔で語っていたのだから呆れる始末。
これで事件は解決し、彼女からの苦情の電話も当分はかかってこないと思いますが、事件解決までに倉永が奔走し別の課の職員にキレたのは言うまでもありません。

・ワニが居るかどうかわからないのに動けない
・うちの課が担当じゃないかもしれない

こんな感じでタライ回しにされてキレるのも無理は無い。でもトラブルはまだまだこれから続くのです。

 

自宅の嫌がらせは一体誰の仕業?

ある日帰宅したら車のタイヤの空気が抜かれ警察に被害届を出したけど犯人が捕まるのは難しいとのこと。更に別の日には枕の中に縫い針が入っているという悪質な嫌がらせが発生。

そしてとうとう犯人は倉永一家が在宅中に侵入し刃物を持って襲ってきたのです。犯人は息子の同級生の母親で現役教師。子供のいじめから発展して逆恨みからの犯行だという。犯行当時は薬物も使用していたそうでかなり危険な状態だったらしい。

本当に子供がいじめられていたのなら同情の余地はあるけど、どうやらいじめられていた子に非があるらしい。倉永に直接関係は無いものの倉永家の平穏を脅かす犯人は捕まり、自宅への嫌がらせは一件落着しました。

しかし自宅で飼っていたアロワナの水槽を犯人が倒したのでアロワナは息絶えてしまい、倉永の心の安らぎが奪われてしまった。公私ともにトラブル続きで「ほっ」と出来るのは水槽を優雅に泳ぐアロワナを鑑賞すること。狭い水槽に入れられて彼なりにストレスを感じているかもしれないけど、だれとも関わること無い一人の世界を楽しんでいるようで羨ましくもあり、現実世界を忘れさせてくれる相棒でもあった。

 

妻が飲酒運転で事故

友人宅でワインを飲んだ妻が帰り道で追突事故を起こしてしまった。
幸い相手は大した怪我もなく車が凹んだけで示談で済んだはずなのに相手が男性で怖そうな人だったから妻が警察を呼んでしまったらしい。

しかし妻も市民会館で働く公務員。飲酒運転だけなら諭旨免職で済んだかもしれないけど追突事故を起こしては間違いなく懲戒免職。夫である倉永は自分の上司、総務の人間、そして妻の上司に謝罪はしたものの予想通り懲戒免職は免れない。

後日、追突した相手から連絡があり、倉永は妻の処分を軽くなるかもしれないから「嘆願書」を書いてもらうようお願いしたら、その男は退職金の半額を要求してきた。

なんとも腹立つ相手ですが、懲戒だと退職金がもらえないため、嘆願書で諭旨免職になり退職金を半額渡してもまだまし。この事故の顛末は他のトラブルと関わってきますので後ほど・・・。

 

市長が倉永に暴力

たまたま市長を交えて飲み会が行われたのですが、市長直々に二次会に誘われた倉永は体調が悪いため断ったら市長が激昂。「普通なら部下のお前が次の店を手配するのが当然だろ!」と。しかも倉永を押し倒し、その拍子に消火器に頭をぶつけて出血。救急車も呼ばず穏便に済ませようとする周りの上司たちにブチギレた倉永ですが、この日はひとまず自宅へ。

当然納得がいかない倉永は被害届を出すつもりでしたが、市長側から思わぬ交渉話が舞い込んできた。

被害届を出さないなら奥さんの再就職先と倉永の昇進を保証するとのこと。市長を辞職させたい気もしますが、妻のこともあるので再就職先が決まるまではノーコメント、決まったら被害届を絶対に出さないことを約束した。

しかしこの問題はまだ続くのです。
マスコミに対して「酔っていて覚えていない」ということで口裏を合わせる予定だったのに市長は「暴行した覚えはない」と公言しているらしい。これは流石にキレていい案件だ。

ということで妻のことは残念だけど市長には被害届を出すと警告したところ、話し合いの場を設けてくれるといい、市長とサシで会う約束を取り付けた。

しかし倉永は市長を完全に落とすためにある秘策を考えていた。市長のお酒に睡眠薬を入れて、市長がまた暴力を振るったように見せかけるのです。失敗したら自分の人生も終わり。かなり危ない橋を渡る倉永は吹っ切れてしまったのか、このまま泣き寝入りはしたくない、権力には屈しないという思いが強かった。

録音機をセットし酒の席でわざと市長を激昂させ自分は殴ら倒れこむような音をだす。「市長やめてください!」そんなセリフを添えれば完璧だろう。そして睡眠薬で市長を眠らせ、酔った勢いで殴ったことにすれば世間はどう見るのか。2度の傷害事件で次の市長選挙に立候補なんて出来ないだろう。

倉永が被害届を出したことでマスコミ各社も一斉に報じたことで市長との対決も一段落したのです。

 

暗躍するもう一つの力

初当選時の意気込みを忘れ権力に酔いしれる現市長をよく思わない人間もいる。樋口企画部長長田環境課長の二人だ。現市長を降ろし、自分たちが推す人物に市長に就任してもらうべく動いていたらしい。

そこで市長暴行事件というおいしい話が出てきて倉永に交渉を始めたのです。現市長をクビにし新市長が誕生した暁には倉永の昇進と奥さんの再就職先を保証するという市長と全く同じ条件を提示してきたのです。

(どっちに転んでもいいわけか・・)

次期市長選では現市長は立候補せず、樋口企画部長らが推す人物ともう一人の一騎打ちとなったが得票数1万の差をつけられ落選。当然ながら昇進の話も再就職の話もおじゃんになってしまったのです。

 

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異動先は第三セクター

市民相談室で精神的にやられてしまった倉永は出来れば楽な職場を、ということで異動願を出していた。異動先は資源選別センターで空き缶などを再利用する会社。異動というより出向ということになる。

ここでのんびり事務仕事をするのか・・・そう思っていたのもつかの間、慣れてきたところで代表が会社の金を横領していたことが発覚し警察が家宅捜索を開始。代表は逮捕され責任者がいなくなったことで新市長の意向で解散することになってしまった。

倉永が1人残務処理をしている時にふと頭に浮かんだ構想は現実的ではありませんが、「絶対にいける」と彼は確信していました。

次ページでは倉永の華麗なる転身劇をご紹介!