ドラマ「とげ 小市民 倉永晴之の逆襲」の原作を徹底紹介

「とげ」の結末、倉永が市議会議員に立候補?

また突拍子もない事を考えた彼ですが、ただ無謀に立候補するわけじゃなく勝算あってのことらしい。

しかし市長に暴行された職員というだけでは流石に話題性に欠ける。以前久しぶりに会った大学時代の先輩から公共広告機構の絵のモデルがお前にそっくりという話を聞かされ、その時は軽く流していたけど髪型を変えて眼鏡をかければ似てるかもしれない。しかも市議会議員選挙の12月から広告が使われるというのだからこれを利用しない手はない。

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早速、選挙が始まる1ヶ月前からモデルの絵と同じ様に短髪にカットしてメガネをかけ作業着に着替えて街の清掃に繰り出した。初めはあいさつをする人は少なかったけど、「ご苦労様」というねぎらいの言葉も掛けてくれる市民も多くなり、待ちに待った市議会議員選挙が始まった。

それと同時に公共広告機構のCMが流れるようになり、「街の清掃ボランティアをしている人がモデルなのか?」という問い合わせが来るなど倉永の思惑通りの展開になってきた。子供たちからも「絵のおじさんだ」と評判も上々。

地元のマスコミもこの話題を取り上げ、無名の元職員は一躍有名人になった。選挙活動費が全く無い倉永にとって、いかに話題性を作るかを考えていたようですが、最後の仕上げがこれだったのです。

 

お手柄の市議会議員立候補者

先ずは作品の冒頭に登場した不審人物の話からしなければいけません。公園の管理事務所付近で不審な男を発見した倉永が声をかけると慌てて逃げていき、その男が捨てたと思われる紙は「市政だより」で「歴史資料館」と「市民球場」そして「中央公園」に赤いボールペンで書き込みがしてあった。

それぞれ数字が書かれてあり、それはどうやら犯行日時ということがわかった。何故わかったのかというと、数字通りの日付に歴史資料館と市民球場でそれぞれ犯行が行われたのです。

そして中央公園には127と書かれてあり12月7日に男が管理事務所に現れると確信した倉永は待機することに。7日の深夜、男は管理事務所に火を放ち逃走。慌てて後を追いかけた倉永は男を無事確保。男は20代で市役所の採用試験に二度落ちた腹いせに嫌がらせをしたのだろう。

「立候補者の倉永さん、お手柄」

ポスターを貼らなくても、選挙カーで回らなくても他の候補者より圧倒的に話題を独り占めした倉永。そして選挙結果は20人の枠に25人が立候補し6番目に当選という快挙に周りを驚かせた。

「どうせ当選しないだろう」そんなことを言っていた総務部長の手のひら返しに呆れる倉永だった。

 

議員になってやったこと

市民相談室を更に発展させた、市民同士で助け合うNPO法人を設立。問題が発生したら市民にアイデアを募り皆で解決する。何か壊れたら、その道のプロの方が手を上げてくれたりする。もし法人が協力すれば会社名も載るので良い宣伝になる。

そしてもう一つ、彼は大切なことを実行しようとしている。公園の池を埋め立てて児童センターを建てる計画があるようですが水生生物や野鳥が集まっており、自然を破壊することになる。子供たちも観察できる唯一の場所なので壊さないで欲しいという声も挙がっているので彼ならきっと建設を中止してくれるだろう。

 

感想

公務員といえば景気に左右されない「安定感」、そして一般企業と比べて精神的・肉体的に負担が少ない仕事が多い?と勝手なイメージを持っていますが、この物語の主人公は決してそうじゃなかった。上に媚びへつらう無能な上司、何を考えているのかさっぱりわからない部下という職場環境で市民からの苦情対応をする中間管理職の倉永。意味不明な苦情もあれば、今回登場した白銀佳代のようなクレーマーの対応もしなければいけない。しかも係長は時間外勤務手当は無いのでサービス残業が当たり前。

これだけで十分同情の余地はあるけど、主人公に待ち受ける試練はこれだかじゃない。怒涛のごとく押し寄せてくるトラブルの嵐に冷静さを保てないのも無理は無い。日頃から役所の体質に疑問を抱いていた彼は徐々に殻を破り、ついには爆発してしまった。

上司に対して「ハゲ」と罵る姿は勇ましくもあり、言い過ぎな感じもしますが世のサラリーマンからすれば倉永は神に見えるかもしれない。

こうして中盤まで大小様々なトラブルが続き、後半はそのトラブルが徐々に解決されていく流れになる。冒頭に登場する不審人物が落とした紙は終盤になって他の出来事と絡みながらの伏線回収は見事としか言いようが無い。

同じような作品で「どろ」と「かび」があるのでまた機会があれば読んでみたい。