小説「時をかける少女」あらすじと感想ネタバレあり「短編だけどすべたが詰まった最高傑作」

「時をかける少女」もう少し詳しいあらすじと感想・ネタバレあります

タネ明かしと言ってもこれだけ認知度が高いわけですから今更感がありますが、
主人公の芳山和子が先生の助言通り、もう一度タイムトラベルをし、理科実験室で見失った怪しい人物と会うことが出来たのです。

しかし彼女の前に現れたのはなんと同級生の深町一夫でした。
未来から来たという彼の本当の名はケン・ソゴルというらしく、年齢は和子の4つ下で11歳。

実験室でタイムトラベルに使う薬品を調合中に和子が部屋に入ってきたので
ビックリした拍子に試験管を落としてしまい、立ち込めるラベンダー臭を嗅いだことから和子はタイムトラベルが出来るようになったという。
ただ、効果は一時的なもので、いずれ消えるらしい。

彼は一体何のために過去に来たのでしょうか・・・。

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未来人が過去に来た理由

2660年からやってきたというケン・ソゴル君の話では、
未来は眠っている間に様々な知識をみにつけるという人間の潜在意識に着目した画期的な教育法「睡眠教育」が開発され、
10代前半で大卒レベルまでいけるという。

11歳の彼も大学の薬学部に所属しており、現在は身体移動を自在にコントロールできる薬を研究中。
その流れでタイムトラベルも可能にする薬が出来たのでテストするために和子の時代に来たという。

少し彼のプロフィールをまとめてみよう

ケンが生まれたのは2649年で3歳から上述した睡眠教育の結果、11歳で大学入学。
未来では身体能力を飛躍的に高める薬の開発が盛んに行われ、
興味を持ったケンは、その道に進み身体運動と時間跳躍を可能にする薬を大学の論文として研究していたという。

しかしテスト名目で和子たちの時代に来たのは良いけど、元の未来へ帰れなくなってしまった
という大失態をやらかした。

あの冷静だった彼が「大失敗をやっちゃったんだ」と笑いながら話す姿は紛れも無く一夫だけど
言動が11歳の少年になっているのが微笑ましい。考えてみれば、ずば抜けて成績が良かったのも納得がいくけど、あの立ち振舞は作っていたのかと考えると、
まんまと騙された和子がご立腹してしまうのも無理は無い。

ということは深町一夫になりすましていたということになるけど
一夫には家族がいるし、ケンは彼に乗り移ったのか?それとも他の方法を使ったのか?

実は人々に架空の記憶を植え付けて、あたかも実在する人物として振舞っていたらしく
それは意外にもタイムトラベルよりも容易いだと彼は言う

にわかには信じがたいけどタイムトラベルを体験した彼女なら受け入れるのにそんなに時間はかからない。
彼が色々と彼女に説明するのは巻き込んでしまった罪悪感もあるけど、
一緒に生活して、ある感情が芽生えたからと語るケン。

君のことが好きになってしまったんだ

一ヶ月、一緒に楽しい時間を過ごしてきたけど、ずっと前から君のことを知っているような気がする・・・
そんなプレイボーイが言っちゃうようなセリフを11歳の男の子が言うのもませてますが、
不意打ちを喰らった和子がドキリとしたのは事実。

でも・・・未来に帰らないといけないし、ボクがいたと言う記憶を消さないといけないんだ・・・

あなたとの思い出の記憶を消さないで!

過去の人間にタイムトラベルなどの話をしてはならないというルールがある
ケンはそのルールを犯した事になりますが、
唯一の解決策が彼女の記憶から一夫の記憶だけを消し去ることで問題はないという。

でもせっかくこうして出会って一緒に楽しい時間を過ごしたという思い出は心にそっとしまっておきたい。

「誰にも言わないから記憶を消さないで!」

彼女の懇願も虚しく、ケンは法を犯すわけにはいかないと言い、和子の前でゆっくりと体が消えていく・・。

この時代へまた来る?

きっと来るよ

彼が消えてから普段通り変わらない生活が待っていましたが、
唯一変わったことは彼がいないこと。だけど記憶を消されたから居ないことさえ分かっていない、
そんな悲しい結末を迎えたラスト。

そう遠くない未来、きっとどこかで二人は再開しているのでしょうね・・
だって彼は彼女の事をスキになってしまったのだから。

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小説は短編集の一つでとても短い

本を手にとった時に「え、こんなに短いお話なの?!」と思いました。
今作以外に「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」がセットになっていて
「時をかける少女」は50ページほどしかありません。

でもこんな十数ページの中にSFやらラブストーリーを盛り込み、
少ないキャラクターの性格もしっかりと書き込まれた完成度の高い作品に改めて感心させられました。

さすが実写化やアニメ化されることはあるな、と。

エンターテイメント性がとても高いので
映像向きであることは確かなので、今度は大ヒットした映画でも見ようかなと思います。