ネイビーシールズ最強の狙撃手の感想ネタバレ無し

2015年2月21日に公開となる映画「アメリカンスナイパー」。

原作は日本でも翻訳された「ネイビーシールズ最強の狙撃手」で

クリス・カイル本人による実体験が鮮明に綴られた良作です。

 

本書は戦争で体験したことだけではなく、子供二人を持つ父親の心情、

家で待つ妻の苦悩などが綴られており、国に命を捧げた一人の男と家族の物語と言ってもよいでしょう。

ということはこの映画はどう表現されるか分かりませんが、実話を元に作られたということになります。

 

※2013年2月にアメリカ国内でPTSDを患った元軍人の手によってクリス・カイルは射殺されたそうです。

なんとも痛ましい事件でやりきれない思いと、残された家族の事を思うといたたまれなくなります。

この本も遺作となってしまいました・・・。

映画の感想はこちらになります

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 予告・武器を取る少年に引き金を引くシーンは何を語りたいのか

戦争と言っても無差別に発泡していたわけでなく、

厳しい行動規範や交戦規定を順守しながら、状況を瞬時に判断して行動しなければいけない、

ということをあのワンシーンで見事に表現されているのだと思います。

 

アメリカ軍は、そうした厳しい交戦規定があるのに対して、

敵は無差別に殺戮を繰り返す「蛮人」であり「悪党」であり、

カイル本人もルールがなければもっと仲間を助けることが出来たし、敵を倒すことが出来たと語っています。

 

この事について、現場で闘い抜いた彼なりの持論が興味深かったので引用させていただくと、

「交戦規定はその作成過程で政治家が介入したためにひどく複雑で混乱した。あの規定は、提督や将軍を政治家から守ろうとする法律家が書き上げたものだ。地上にいる仲間が打たれないかハラハラしている人間が書いたものではない。」(引用:ネイビーシールズ最強の狙撃手)

倫理観や道理は忘れてはいけないが、

戦争下において厳しいルールは隊員の命も危険にさらされることになります。

自分が死ぬかもしれない時に引き金を引けない規定をカイルはたいへん危惧していましたが、

例えばこんな状況でも相手を殺すことが出来ないとも語っていました↓

「誰かが家にやってきて妻と子供を撃ち、その後で銃を投げ捨てた場合、わたしはその男を撃ってはいけないことになる」(引用:ネイビーシールズ最強の狙撃手)

武器を持たない人間を撃つことが出来ないということですが、

果たしてこのルールを守ることが出来るだろうかと問うているのです。

 

彼は唯一女性を一人だけ撃ったらしいですが、少年兵に関しては数え切れないほど引き金を引いたそうです。

もちろん交戦規定に則って。

 

更に、クリス・カイルは戦争の状況をしっかりと伝えないマスコミにも苦言を呈しており、

戦争で多くの犠牲を伴いながらも、現地では平和へと繋がる第一歩を

歩もうとしている状況を評価してほしいと語っています。

 

交戦規定に関してはクリス・カイルの妻・タヤも言及しています。

「テロシスト側はジュネーブ条約のことなんかこれっぽっちも考えていないこと。だから、凶悪で心の歪んだルールに縛られない敵を相手にする兵の動き一つ一つをアラ探しするなんておかしいどころじゃない。卑怯だわ。」(引用:ネイビーシールズ最強の狙撃手)

テロリストは子供を縦にしたり、手榴弾で子供を犠牲にしたり、

良心という言葉から程遠い残虐性のある敵を相手に紳士的に振る舞うなんて二の次だという事を語っていました。

確かに彼女が言うように大きな規定は必要だけれども、自分と仲間の命、

生と死の間で生き抜いている人間に細かなルールは必要ないと私も思う。

 

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マラディの悪魔

彼の功績は内外から高く評価されるとともに、敵からもある意味評価されていたようです。

「悪魔」と称され懸賞金もかけられていましたが、それもそのはず、殺害した人数もさることながら

約2km先の敵を仕留めたというのだから驚きです。

 

ただ、決して彼も無敵だったわけではありません。

幾度と無く危険な目に会い、負傷し、退役した時は体がボロボロになっていたのは確かです。

 

また、クリス・カイルは数々の賞を授与されていますが、

実はそんなものに興味は無く、地位や名誉よりも自分の実力が試せる戦地で仕事をしたいだけ、

という根っからの軍人ということがこの本から読み取ることが出来ます。

 

本を執筆した理由とは

この本は戦場の苛酷さを身をもって経験した人間しか書くことが出来ないことが沢山あり、

それだけでも充実した内容ですが、アメリカ本国で待つ妻の言葉も添えられていることから

決して単なる戦争体験記では無いことを訴えています。

 

厳しいルールの中、国のために命をかけて戦った戦士である前に

2児の父親であること、そして愛する妻を本国に残してきている事が、

どれほど家族を苦しめているのかが察するに余りあります。

 

そして退役後も、何事も無く平和に暮らしていたわけでなく、

夫婦の意見衝突、離婚危機、PTSDなど戦争経験者とって耐え難い副産物との戦いも書かれています。

彼は少しずつですが考え方を変え、夫として、父親として

家族とともに幸せに暮らす努力が垣間見れます。

 

この書籍は

「こういう生き方をした人間もいるんだよ」、

という軍人としてではなく、クリス・カイルという人間を知ってほしいために筆を執ったのかと思います。

 

最後に

クリス・カイルは戦争に参加したことに対して後悔はしていないという。

ただ、戦地へ行くと死を受け入れるようになり、精神も崩壊する危険がありますが

また行けと言われれば行くだろうとも語っています。

恐ろしいほどの愛国心と軍人魂です。

 

この本は、軍マニアの方ならコレクションの一つとして欲しいかもしれません。

彼がどんな武器を使っていたのか、使用した武器の紹介も丁寧に書かれており

ある意味、ページ数はもう少しスマートになるのかなと感じました。

 

また、書籍の中で、同じ戦争体験者で有名なマーカス・ラトレルについても触れています。

「アフガン、たった一人の生還」の著者で映画化もされました。

 

映画「ローン・サバイバー」

この映画もまた「戦争とはなにか」ということを十分すぎるくらい見事に表現された作品です。

そう言えば”新人いびり”というのはどこの隊でも恒例なんですね。

「ネイビーシールズ最強の狙撃手」でも新人いびりが度々登場し、

カイル本人も洗礼を受けたようですし、新人を厳しく指導したことは言うまでもありません。

 

さて、

アメリカンスナイパーはクリント・イーストウッド監督がメガホンを取り

イラク戦争で何が起きたのか、どう表現するのか気になりますが、

彼はイラク戦争など遠征して戦争に参加することを反対しているだけに

それが作品にどう影響を及ぼすかも注目したいところです。

映画楽しみにしています。

映画の感想はこちらになります

関連:クリス・カイルの興味深いエピソード集