実話「仰げば尊し」原作ブラバンキッズ・ラプソディーのネタバレ・感想「音楽はやっぱり面白い」

吹奏楽の甲子園へいざ!

昨年は全国大会の一歩手前で敗退した野庭高校。
そのリベンジともいうべき翌年の1983年11月6日、奇跡は起きた。
夏の地区大会・県大会そして関東大会を突破して関東の代表校として全国大会に出場した中澤率いる野庭高校吹奏楽部。
憧れの普門館の大ホールで応援に駆けつけた家族・部員の仲間が見守る中、メンバーは練習の成果を披露した。

「どこの高校なんだろう?」

無名だった野庭高校はこの日、全国に名を轟かせ、見事「金賞」を受賞したのです。
ステージ上でも観客席でも泣きじゃくる生徒たちと家族。
「絶対に無理」と言われてきたことがこの日ようやく実現したのです。
長く厳しい練習を乗り越えての「受賞」、感動で涙が止まらないのも無理はありません。

ちなみにこの年、
コンクールに参加した高校は1020校、普門館で演奏できたのは27校、金賞を受賞したのは8校でした。
その中に無名だった野庭高校が入ったのですから本当に快挙でしたね。

(下の動画は1988年、普門館で演奏した時の様子です)

更に翌年の1984年にも全国大会に出場し2年連続金賞を受賞し、周囲を驚かせましたが
野庭にはどんな魅力があるのか。

実はコンクールでは減点されないように演奏するというスタンスが定番となっており
いわゆるアカデミック的な演奏、悪く言えば当り障りのない演奏。
しかし野庭高校は「野庭の音」なんて言われていますが、まさに音楽をやっていると言う感じで
中澤先生の「感動しない音楽は音楽じゃない」という考えが反映された結果だと思います。冒険は恐い、でも音が豊かになるし聞く人に感動を与える音楽になる。

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先生が土下座?!それだけはやめてください

2年連続金賞を受賞して勢いづいた野庭高校ですが、翌年の1985年はなんと
全国大会に行くことが出来ず、県大会で敗北。そう、まさかの敗北です・・。

さすがの生徒たちはがっくりと肩を落とし、会場を後にしましたが
皆の前で両手をついて土下座をする中澤先生の姿に驚き、慌てて駆け寄った。

「先生、やめてください!」

駅前で人通りが多い中の出来事でした。
中澤先生はとても責任を感じていて、なにか代わりになることを生徒にやらせたい!と
自分の母校である天理高等学校の吹奏楽部とジョイントコンサートを開くことで
これまでの練習の成果を披露する場を設けたのでした。

え?バンクーバーに行けるってホント?

まさかの敗退から多くの事を学んだ野庭高校の吹奏楽部。
技術的にも精神的にも一回り大きくなった彼らに横浜市から吉報が舞い込みました。

なんと1986年にカナダのバンクーバーで開かれる博覧会に参加して欲しいというのだ。
バンクーバーと横浜市は姉妹都市で昔から深いつながりがある。
吹奏楽の国際交流なんて素晴らしい!ということで是非とも参加すべきなんですが
簡単に行けるような場所ではないため、実現には相当苦労したようです。

安全面・経済面、どちらも不安要素は山積みで、学校の教師は難色を示す中、
何とか部員たちを連れて行ってやりたいという顧問の先生、
そして父兄の助力によってバンクーバー行きが決まった野庭高校の吹奏楽部。

現地では日本とカナダの国家、民謡などを演奏し大いに盛り上がりましたが、
この時期、中澤先生の体に異変が生じていたのです。

コンクールの練習、そして今回のバンクーバー行きと疲労を貯めこんでしまったのか
病院で狭心症と診断され、そのまま1週間ほど入院。

退院後はまた忙しい毎日が続き、カナダへ飛び立ったのです。
そして帰りの飛行機内で体調を崩し、日本に到着後そのまま入院。
部員たちも不安な日々を過ごすようになったのです。

リベンジなるか、今年こそは金賞を!

また1週間ほどの入院で半ば強引に退院した中澤先生は直ぐに練習に参加し、
コンクールに向けて動き出していました。

今年こそはなんとしても良い成績を収めたい。
万が一のため、代理の指揮者も確保しコンクールに参加した結果、見事3度目の金賞を受賞。
昨年のリベンジを果たせたのです。

コンクールに楽器を忘れた!!

1990年、第46回関東吹奏楽コンクールに出場するため、野庭高校は千葉県にある会場へ向かっていました。
渋滞に巻き込まれながら5時間弱、やっと着いたと思えばすぐに練習に入るのですが
一人の部員の様子がどうもオカシイ・・・、話を聞くと、どうやら楽器を忘れてきたらしい。
しかも直ぐに報告しなかったものだから中澤先生もカンカン!ホール内は怒鳴り声が響いたのです。

ここは千葉県、コーチの1人が東京にある母校の大学で借りることが出来るというので
急いで取りに行ってもらい僅かな時間だけど練習はできた。

これまで全国大会で受賞経験はあるけど、やっぱり大小関わらず大会は緊張する。
厳しい練習、入念な打ち合わせ、コーチや卒業生、父兄のサポートのおかげでここまでこれた。
翌日、本番を迎えた部員たちは緊張の中、演奏が始まりホールには豊かな音色が響き渡る。

誰もが全国大会を確信していましたが、金賞を受賞するもまさかの代表漏れ。
2年連続、全国大会を逃したことがなかっただけに今年の敗退はいつも以上に悔しかった。

しかし彼らもいつまでもしょんぼりしていられない、
負けた悔しさをバネに全国大会を目指して頑張らなければいけない。
卒業するもの、新しく入るもの、そして部長に立候補するもの。
それぞれ日々の練習とコンクールに参加することで着実に成長していく部員たち。

頑張れ!野庭高校吹奏楽部!

ブラバンキッズ・ラプソディーの感想

著者の石川高子さんはノンフィクションライター、
もちろんこの物語も野庭高校の生徒や中澤氏本人と会い、取材を重ねて作り上げた作品です。

音楽関連の感動作はたくさんありますが、いわゆる「天使にラブソングを2」のようなストーリーで
出来なかった子たちが吹奏楽の全国大会で受賞するまでの厳しい道のりを描いた感動作。

町の音楽教室の講師だった中澤さんに声がかかり、野庭高校吹奏楽部の先生になったわけですが
この時の部長が真っ直ぐな生徒で、彼の熱心なアプローチがなければこの物語は始まりません。

夏合宿でヤンチャな生徒がアロハシャツを着てきたり、
ふてくされて夜酒を呑んだり、手に負えない部員もいたけど見放さなかった部長。
怒って帰ってしまった中澤さんを泥だらけになりながら走って追いかけていったのも部長ですが
中澤氏の講師としての技術もさることながら吹奏楽を愛する生徒がいたからこそ
優秀な成績を残すことが出来たのだと改めて感じました。

全然バラバラだった部員たちが徐々に心を一つにして、
目標に向かって厳しい練習を乗り越え吹奏楽の甲子園を目指す。

中澤氏の自宅には大勢の生徒が頻繁に遊びに来ていたそうですが
ただ教えるだけじゃなくて、生徒たちとしっかりと向き合い、
お互いに信頼関係を築き「音楽は心」で奏でるということを教えてくれた先生。

彼と吹奏楽部員が奏でる表現豊かな「野庭の音」は聞くものに感動を与える素晴らしい音楽です。
久しぶりに良策に出会えました。

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ドラマ「仰げば尊し」キャストはベテラン俳優で奇跡を起こす

「音楽バカ」と自称するほど音楽が大好きで
ついつい指導にも熱が入ってしまう中澤忠雄氏役を演じるのはベテラン俳優の寺尾聰さん。
日曜劇場に出演するのは久しぶりだそうですね。

どちらかというと優しいイメージがある寺尾さんですが
彼の雰囲気を活かした人物にするのか、厳しい先生にするのか、そこら辺も楽しみの一つ。

そして彼の娘役はなんと多部未華子さん。
どんな役でも本気で演じる姿が大好きで個人的にお気に入りの女優さんです。
そして公式サイトでは不良っぽい生徒たちが顔を揃えていますが
この生徒たちを束ねていかなければならないので大変ですね。

今年は夏ドラマが熱くなりそうです。

追記:公開スタート日決定

7月からスタートということしか発表されていませんでしたが
初回は17日25分拡大して放送される事が来ましたね。

予告動画も公式サイトで上がっていますが、不良感が半端ない(笑)
ちょっとやり過ぎのような気もしますが、あんな不良少年たちをまとめていこうっていうことですからもう大変です。
とりあえず初回は17日なので、皆さん忘れないようにしましょう!