シリーズ第3弾では旅人を「アニキ」と慕う雪路のエピソードが描かれており、謎が多かった彼の生い立ちが明らかに。
そして旅人となぜ出会ったのか、旅人をなぜ慕うのか、そんな雪路のための本と言っても良い作品です。
また、怪しいと思われていた白石警部がいよいよ本性を表してきましたよ。
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あらすじ
今作も5作品からなる短編集。第1章の「隣の静寂」ではストリートミュージシャンと耳が不自由な女性の恋物語。そして第2章の「森の調べ」は学生時代にバンドを組んだ仲間の物語。どちらも本編とは関係ないので割愛しますが、第1章は旅人が麻薬組織を追っている場面も出てきます。
そして第3章の「爆弾魔の憂鬱」ではイベント会場に爆弾を仕掛ける爆弾魔と日暮親子の攻防が面白おかしく書かれています。爆弾を仕掛けたスーツケースを会場に放置する度に日暮が声を掛け「奇遇ですね~」「お荷物お忘れですよ」なんて言いながら爆弾魔を追い詰める。
実は増子刑事の依頼で旅人はテロ犯を尾行していたのです。無事犯人は逮捕され、大惨事に至らなかったのですが、旅人は何故、爆発するかもしれないリスクを負ってまで増子の依頼を受けたのか?旅人には何か別の思惑があったのか?増子は彼に対して疑念を少し抱くのです。
そして第4章の「雪の道」では雪路本人の事はもちろん、家族に関するプライベートな話が盛りだくさん。幼いころに亡くなった母と兄、そして腹違いの妹・レイラの存在。意外だったのは、雪路が父に対して敬語を使うこと。性格的に「うっせ~な」と言いそうな気がしますが、父には頭が上がらないようですね。
荒れた生活をしていた雪路ですが、ドラッグだけには手を出さなかった。しかしそっち系の人と揉めてボコられて、道で倒れている所を通りかかった旅人に助けられる。後日、今度は旅人が道で座り込んでいるのを雪路が助ける。旅人が居なければ今の自分は居ない、彼がもし、目が見えなくなったら自分が死ぬまでサポートする、そんな心強い青年が雪路なのです。
半ば強引に組系の人から幼い少女の面倒を見て欲しいと頼まれた雪路。これがテイちゃんなのだ。母親が行方不明で一時的に預かって欲しいと言われたのだが、ご存知のように今もなお、旅人と一緒に暮らしている。彼女の母親は一体どこへ行ってしまったのか?
2巻の謎が明らかに!
2巻で「18年前、日暮さん夫婦が事故で亡くなった」という新聞記事が登場しました。日暮英一さんは元市長の私設秘書で市の不正の証拠書類を握っていたので、白石が実行犯として日暮に息子を誘拐するぞと脅迫していたらしい。刑事であるにも関わらず。
そう言えば雪路の父親は市長をしていましたね。ということは旅人の父親は雪路の父親の私設秘書で、脅迫されたあげく、事故に見せかけて殺された可能性が高い。日暮の息子が生きていれば旅人と同じような年齢になっているはず、と少し背中に嫌な汗をかく白石は旅人の過去を捜査し始める・・・。
最後の「夢のぬくもり」では旅人が突然自宅で倒れてしまう。陽子とテイが看病し、容態は安定。しかし翌日、二人を残して旅人は黙って何処かへ出かけてしまった。彼はどこへ行ってしまったのか?
いよいよ次巻でシーズン1終了です!
感想
旅人を「アニキ」と慕うヤンチャな青年・雪路の生い立ちが垣間見れた今作。大好きだった実の兄を亡くし、旅人と兄を重ね合わせて見ていた雪路。探偵事務所で働く前は荒んだ生活をしていたようで、チンピラを従えて幅を利かせていたようです。
当然、危険な目にもあった。そっち系の人にボコられ、雪が降る寒い夜に道で倒れている時に旅人が助けたくれたのが二人の始まり。ある意味、雪路の名に相応しいエピソードですね。
そして今作では白石は刑事なのに犯罪組織とズブズブで完全に真っ黒だということがわかりました。18年前、旅人の両親を殺害し、旅人を誘拐。3日間苦痛を与える実験をしたのは間違いなく彼です。
幼いころに受けたあの事件の犯人を「白石」だと特定した旅人。そして白石もまた、あの時の坊やが旅人だと知る。
次回作はいよいよシーズン1の完結編です!