泣ける「ナミヤ雑貨店の奇蹟」原作小説のあらすじ・ネタバレあり

第4話「黙祷はビートルズで」

従兄弟の影響でビートルズが好きになった和久浩介。

彼は会社を経営をしている父親のお陰で裕福な生活をしてたが、中学のころに経営が苦しくなり、父親が突然引っ越すと言い出した。

引っ越しというと聞こえはいいが、蓋を開けてみれば夜逃げ。

父親を見ながらふと思う、本当にこの人について行っていいのだろうか、と。

父親と話せば話すほど、本当に信頼できる人なのか、家族のことを考えているのか

中学生ながらも複雑な心境の中、両親に従わざるを得ない立場であることも十分理解してた。

なので仕方なく、夜逃げについていったが、途中で寄ったサービスエリアで父親の背中を見た時、

やっぱりこの人にはついて行けないと思い、1人逃げ出したのである。

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浩介は東京駅で保護されたが、頑として身元を喋らなかったので、

養護施設「丸光園」に預けられることになった。

両親が夜逃げしたことがバレるので、やはりここでも名前は明かせられないと思い、藤川博という偽名で通した。

とくに何もすることがなかったので、暇つぶしに木彫刻を始めたところ、これがなかなか面白い。

完成した彫刻は年下の子供にプレゼントしたり、職員はその出来栄えをみて、本格的にやってみないかという。

 

職員の紹介で木彫刻に弟子入りし、定時制の高校に通いながら腕を磨き、今では立派な木彫刻家になっている。

そんな波乱万丈の人生を送った浩介が相談したのは中学の時だった。

両親の夜逃げについていくべきか、それともやめさせるべきか。

 

雑貨店の店主は、もちろん両親を説得するべきと回答したが、結果は上記の通り。

相談者はアドバイスに従わなかったけど、結果的に良い方向に向かい満足出来る人生を歩んでいる。

だからといって、店主に嫌味を言うわけじゃなく、自分の人生は自分で決める事が大切だとお礼の手紙にはそう書いてあった。

 

浩介は中学の時にビートルズと出会い、レコードも何十枚と集めたが、

ドキュメント映画「レット・イット・ビー」を見た途端、一気に熱が冷めてしまった。

ビートルズのメンバーの心が離れてしまっているのを感じ取れたからだ。

宝物だったレコードは夜逃げの前日、ビートルズファンの友人に安く譲った。

 

彼は自分の家族とビートルズをどこか重ね合わせて考えていたのか、

中学の時は悲観的に見ていたあの映画も、今改めて見ると、4人は楽しそうに演奏している。

どのように見えるかは自分自身の問題に影響するのかもしれない、と。

 

「午前零時~夜明けまで悩み相談復活します」

あれから40年、目に飛び込んできた情報は、誰かのイタズラか?

と思ったが、お礼の手紙を送りたかったので、久しぶりに地元に帰った時、

ビートルズ専門のBARに立ち寄った。

もちろんママはビートルズのファンで2年前に亡くなった兄の影響らしく、

店においてあるレコードも兄が持っていたものらしい。

 

そう、その兄は浩介がレコードを譲った友人だった。

兄との関係についてはママに話さなかったが、

ママから兄の友人、つまり自分のことについて聞くことが出来た。

 

友人(自分)の一家3人は海で無理心中をしたが、

妻と子供を殺した後、父親は死にきれず、陸に上がってから首をつったという。

父親の遺書には二人を殺したという事が書かれてあったので

自分は死んだことになっていたのか。

 

もし、息子は夜逃げの途中で逃げ出したと警察に言えば

東京駅で保護された時に見つかっていただろう。

しかし、父親は3人で心中したかのように見せかけ、借金取りが息子の所に行かせないようにしたのだろう。

父親は息子のことを想い、息子は両親のことを想い、素性を明かさなかった。

 

心が離れてしまったかのように見えたこの一家は悲しい結果になったけど、

お互いを思う気持ちは確かにあり、家族の絆を改めて感じた浩介だった。

 

第5話「空の上から祈りを」

武藤晴美は5歳の時、交通事故で両親を亡くし、養護施設「丸光園」で数年過ごした後、親戚に引き取られた。

決して裕福な家庭ではなかったので、高校卒業後すぐに就職。

しかしOLは雑用ばかりで給料も少なく、経済的に自立するのは難しいので

夜のバイトを掛け持ちしているらしい。

ホステスは短時間でOL以上に稼げるので、昼の仕事は辞め夜の仕事一本にし、貯金をして将来は自分の店を持ちたいと考えている。

自分のお客も付いて、協力してくれる男性もいるらしく、

このままお昼の仕事を辞めるべきなのか、

周りの目もあるので穏便に退職するにはどうしたら良いのか?という相談だった。

 

当然、

例の三人(克也、翔太、幸平)は夜の仕事は辞めたほうが良いと回答。

稼げるのは若い時だけ、店を持っても経営が上手く行かず閉めてしまうのが関の山。

お昼の仕事をしながら結婚相手を見つけて寿退社したらどうですか?

結婚して子供を産んで、という女性として幸せな道があるはず、と。

 

しかし晴美は結婚には消極的で、経済的に自立するために夜の仕事をしており、

また、育てられた親戚の人を助けたいという強い思いがあった。

 

そんな彼女の気持ちを知った三人は、

水商売じゃなくても稼ぐ方法は他にあるという。

相談した彼女の時代はまだバブル前だったので

信じてもらえるかどうか、わからないけど不動産や株の勉強をしなさいとアドバイス。

投資すれば必ず儲けることが出来るが、それも1989年までに処分しなさいと

具体的な数値が書かれていたので、彼女も不思議がっていたが

そのアドバイス通りに行動したことで、彼女は一気に財を得て、会社を経営するまでに成長。

会社名は「リトルドッグ」

これは養護施設「丸光園」で年上の男性(第4章の木彫刻師)から貰った犬の彫刻にちなんで付けた名前だという。

 

そもそも彼女がなぜ雑貨店に相談したかというと、

近所の3つ年上の女性と親しくなり、その人がオリンピックを目指した第1章の女性アスリートだった。

彼女から噂の店のことを聞き、気になって晴美も相談したということ。

そして現在、丸光園の火災を聞き、援助したいと思い施設を訪れたが断られたので、

自分が経営者になろうとも考えていたのだ。

今現在の経営者はオーナーに任されている副館長なのだが、これがあまり評判が良くない。

だからこそ晴美は助けようとしていたのだ。

 

あの3人組も「丸光園」出身だった

さて、最初の3人組の話に戻すと・・・

実は彼らもまた養護施設「丸光園」出身だった。

しかし丸光園がとある女性(晴美)によって買い叩かれるという噂を聞きつけ、3人が彼女の自宅に空き巣に入ったのだ。

 

その時に彼女のバックにある手紙を見つけて3人は愕然とする。

この人って自分たちがアドバイスした女性じゃないか!と。

アドバイス通り財を得て経営者にまでなった彼女を知り、

良かったと思う反面、自分たちはとんでもないことをしでかしたのではないかと思った。

 

晴美が同じ「丸光園」出身の人間だったとは。

そんな彼女が丸光園を潰して別の施設に建て替えるようなことはしない。

 

3人は彼女から奪った物を返し、自首しようと決める。

そして彼らの背中を後押ししたのは店主の浪矢雄治だった。

 

3人は過去と繋がっているかどうか白紙の手紙を郵便受けに入れてみたことがあった。

その白紙の手紙が浪矢のもとに届き、丁寧に回答してくれたのだ。

 

「悩んでいる人は地図を持っているが、その地図を見ようとしないか自分の位置がわかない場合が多い。しかしあなたの地図はまだ白紙だ。白紙ならなんとでもなるし、可能性は無限大に広がっている」

 

店主からのアドバイスに心打たれる3人。

思えばろくな人生を歩んでこなかった3人。人員削減で会社をクビになりバイトで食いつなぐ翔太。会社が倒産したという幸平。理不尽な扱いを受けて自分から会社を辞めた克也。

そんな3人が丸光園を心配して今回の犯行に及んだのだけど、盗みを働いたくらいじゃどうにかなるとは思っていない。

しかし丸光園を買い叩く女をギャフンと言わせたかったのだ。

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そんな彼らも今回の出来事を体験したことで心を入れ替えて歩みだそうとしている。

こんなバカな俺たちでも人の役になった、丸光園の人たちの見えない繋がりを強く感じ、店主の温かい言葉でもう一度真面目にやろうと決心がついた。

そう、まだ僕らは若いんだ、やり直しは出来るし、努力すれば明るい未来が待っていると。

 

店主と丸光園の繋がり

丸光園の経営者は女性で資産家の家の娘だったので、

戦争孤児をなんとかしたいと思い立ち上げたのが始まりだった。

 

そんな彼女は女学生時代にとある男性と恋に落ちる。

しかし彼女は資産家の令嬢で両親は相当の身分の男性とじゃないと結婚はさせないと考えていたので

機械工の男性と一緒になることができなかった。

 

その後、彼女は誰とも結婚せす、その機械工の男性を思い続けていたという悲しい恋物語があるのです。

そう、その機械工というのが店主の浪矢雄治だったのです。

 

亡くなった彼女は空から丸光園で育った子供たちを見守っていたということですね。