2016年6月25日に公開となる今作は、
実力派俳優・門脇麦や菅田将暉、他にも有名俳優を起用したことで話題の作品です。
本作の作者・小林真理子は1995年『恋』で直木賞を受賞すると、他にも数々の賞を受賞。
メディアミックスされる機会も多い小林真理子の作品の一つである話題作を紐解いていきます^^
「二重生活」のあらすじ(長め・ネタバレあります)
白石珠の初尾行
本作の主人公である白石珠は、都内で大学院生の25歳。
3年前に感銘をうけたジャン・ボードリヤールの言葉に触発され、「文学的・哲学的尾行」を始めます。
珠の初尾行の対象は珠の近辺に住む石坂史郎で、明確な目的といものはなく、
ただ目の前に白いベンツが止まり、石坂が降りてきたからというだけ。
その尾行であろうことか石坂がしのぶという女性に会っている姿、
さらには物陰で熱烈なキスをしている場面を見てしまいます。
れっきとした不倫現場!しかしそのことに不思議とわくわくしてしまう珠。
その日の報告記録を書き、珠の初尾行は終わります。
白石珠の生活
初尾行を終えた珠の生活はもっぱら観察中心に。
朝から晩まで石坂家を覗き続け、石坂本人だけでなく、妻・美保子や娘までも観察するように…。
尾行を始めたその月の末。事態は思わぬ展開に・・。
何やら石坂夫婦が玄関先でもめていて、石坂史郎の方が家出のように車で消えていくのです。
明らかに何かの異変が石坂家には起こったのだと勘づき、
そしてその異変は次第に珠自身の生活までも脅かすようになるのです。
珠の同棲相手である卓也は50歳を過ぎた女優・三ツ木桃子の専用運転手のようなバイトをしています。
桃子が呼び出せば、たとえ早朝だろうと夜中だろうと卓也は桃子のために時間を割き、
それが同棲生活の収入源と理解はしているけど、面白くないのも事実…。
しかし、諍いや面倒ごとが大嫌いな卓也にとって、珠がありえもしない桃子と卓也の関係を疑うことは御法度。
それを十分に理解していた珠だからこそ卓也の前では無関心を装っていたのに、
先日の石坂夫婦の喧嘩から、美保子と自分を重ねるようになっていまします。
卓也の桃子に対する振る舞いに、どんどん勝手な妄想を始めてしまう珠。
そしてその妄想とともに積もる不満は、あることを境に爆発してしまいます。
桃子と卓也と家でお茶をした日、帰る桃子とそれを送る卓也を見送り、
卓也が帰ってくるまで、ベランダから石坂家を見ていた珠。
石坂が家の中に入るのが見えたにもかかわらず、その数分後には美保子が出てきて、そのまま車でどこかへ行ってしまったのです!
その美保子の姿に触発されたのか、まるで美保子がしのぶのことを石坂に問いただしたかのように、
桃子の家から帰ってきた卓也に言及します。
なだめる卓也に対し、どんどん怒りの渦に巻き込まれていく珠。
なんとかおさまったのですが、それでも、石坂家で何か問題がある度に、
それは確実に珠自身の内面に影響を及ぼすようになってきたのです。
白石珠の尾行の崩壊
初尾行の際に石坂と澤村しのぶが話していた「プレ・クリスマス」。
クリスマスは石坂は家族と過ごすであろうから、
とそれより少し前の22日に恵比寿にあるホテルで落ち合おうと約束していた二人を再度珠は尾行し始めます。
運良くホテルでしのぶを見かけ、そこから尾行を開始した珠。
二人がレストランで食事している隣で自分も食事するものの、どうやら二人の間で喧嘩が起こっているようでした。
そのまま、途中で席をたってしまうしのぶ。
それを追いかける石坂の姿が見えなくなってきたところで、珠もレストランを出ます。
ホテルで二人を待とうと考えるものの、尿意に耐えられなくなった珠がお手洗いに行くと、
まさかのそこでしのぶと対面!
石坂と電話しているらしいしのぶに緊張しつつも個室に入り、耳をすませる珠。
もちろんずっと個室に入っているわけもいかないので、
洗面台の前にいき、手を洗ったりお化粧を直したり、
と明らかに挙動不審な珠に自分の後をつけてるのではないかとしのぶは言います。
緊迫状態の珠は即座に嘘を並び立て、なんとかその場を回避しましたが、
さらに別日、美保子が自殺未遂をした際に野次馬の一人として
道路で観察していた珠は石坂と目があい、認識されたことを悟ります。
尾行していた相手と思わぬ接触をしてしまった珠の生活はそのまま急展開をむかえることに・・・。
暴露
美保子が退院し、石坂家にも普通の日常が戻ってきたであろうにもかかわらず、
珠の気分は夫に不倫される美保子に囚われたまま…。
桃子の息子である淳平が交通事故に遭い、
その影響で卓也の外出が多くなったことにさらに猜疑心を募らせる。
しかし、もちろん卓也を問いただすことはできず、
自分の中にしまったまま、帰りが遅い卓也に対して焦りとも苛立ちともわからない感情が沸き起こる珠。
それを処理しきれないうちに事件は起きるのです。
一月の終わり、大学院へ行くために駅にいた珠は、後ろから声をかけられます。
なんと、そこにたっていたのは石坂史郎!
自分が尾行されていることに気づいていた石坂は、
珠の足をとめ、理由を問うのですが、一瞬の隙に珠は石坂の元から走り去ります。
どうしたらいいのか、どうすべきなのか、
対処策が見つからない珠は大学時代のゼミの教授である篠原を訪ねます。
篠原こそが、珠に「文学的・哲学的尾行」を教え、
珠自身も、篠原なら自分のほしい解答をくれると思ったのです。
篠原に会うと、自分の身に起こっていることを伝え、解決策を請う珠ですが、
意外にも自分を理解しているであろうと思っていた篠原から明確な解答は得られませんでした。
篠原に会い、彼と話せば、「秘密」のない元の世界に戻ってこられると内心思っていた珠は
肩透かしを食らった気分になります。
しかし、ふと尾行対象者と連絡をとってみたらどうか、
という提案をされたことにより、珠は石坂に接触を試みるのです。
白石珠の逢瀬と吐露
しかし意外にも、待ち望んでいた接触は珠からではなく、石坂からでした。
春日に嘘をついて電話番号をきいたという石坂は、
珠に電話をかけ会う約束をとりつけます。
約束の金曜日、ホテルのコーヒーラウンジで落ち合い、話し始める二人。
先日と同じように、尾行の理由を問う石坂に対し、
珠は「文学的・哲学的尾行」を説明しようとします。
しかし、石坂の思っている尾行とは、
相手に何らかの恨みや興味があって初めて移す行動で、
珠の何の気無しに出た行動としての概念とはひどくかけ離れたものでした。
必死に説明するも、理解できないのか理解したくないのか
珠の言い分をうまく自分の中に落とし込めない白石。
しかし、珠が脅迫者やストーカーというわけではないことは
理解したのかうまく飲み込めない部分はあるものの自分の中で折り合いをつけます。
そして、珠に場所を変え、ご飯に行こうと誘い訪れたワインバーでは一変し、
先ほどの緊張感は二人の間にはもうありませんでした。
石坂という人間がわかってきた珠は「面倒ごとはうんざりだ」と言う彼に同調し、
ゆっくりと自分の中で抱えている不安を語り出します。
卓也と桃子の関係やそれに伴う二人への猜疑心。
それを馬鹿にせず聞いてくれる石坂に珠は共犯者的な感覚をもちます。
そのまま会話を続け満足した二人は、一緒にタクシーに乗り自宅へ。
美保子に気遣い、石坂家から見えない場所で珠だけ先に降りるのですが、
偶然にも桃子の予定がなくなった卓也がその様子を家の中から見ていました。
普段嫉妬などしない卓也が珍しく嫉妬していて、
「石坂さんのとこの旦那さんと一緒に帰ってきたんだね」と言うと、
それに狼狽してしまう珠。
しかし、なんとか嘘を織り交ぜ弁明する中で、
卓也が嫉妬してくれたことが嬉しいと思い、
その引き合いに自分も桃子と卓也の仲を疑い、嫉妬していたと話すと、
今度は卓也が怪訝な顔をします。自分の中に桃子に対する恋愛感情はない。
桃子は自分に対して良くしてくれるからそのお返しに力になりたい。
もっと言うと、桃子には年配の恋人がいる。と卓也の抱えている「秘密」を吐露。
そして珠は自分が抱えている猜疑心や妄想が当たり前のものであり、
卓也から見るとそれは「別次元のこと」であることがわかると、
和解をし、深い愛に落ちていくのでした。
その後
珠の生活を脅かしていた疑惑が晴れ、卓也とは今までよりもっと仲良くになった珠。
卓也も今の関係に満足しているのか、珠との今後を考える発言をします。
珠と石坂はその後も度々会う関係に。
石坂にとって珠は何でも話せる年下のような人物になったのと同時に、
珠にとっても同じような種類の関係をもてる人物として関わるようになります。
しのぶは海外転勤がきまり、美保子も自殺未遂の時から比べて、
顔色もよく元気になっていく様子が目に見えてわかるようになりました。
とりあえず、珠の周りにいた人々は落ち着くところに落ち着いたとともに、
珠はそんな普通の生活にあの尾行していた時のような興奮をどこか探してしまうのです。
そして、ある夏。
駅のプラットフォームで見かけた女性に何となく惹かれた珠はその女性がもっと良く見える場所へと移動するのでした。
いかがでしたでしょうか、長くなってしまったので感想は次のページヘ