「億男」原作小説あらすじ・ネタバレ&感想 お金と幸せの答えに必要なピース

さて、ラストはどうなってしまうのか?その前に、15年前に何があったのかをまとめます。

こちらのページでは、小説『億男』の結末に関することを書いています!

15年前、砂漠の旅

一男と九十九は、大学卒業間際の15年前にふたりで海外旅行したモロッコで別れて以来会っていない。渡航のきっかけは、映画を見てモロッコに惹かれた九十九が熱心に提案したから。旅慣れしていない若者ふたりが、初めて目にする光景に興奮しながら波乱の旅を経験する。

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一男と九十九はケンカ別れだとか、そういう別れ方をしたわけではなかったんだね~。ほっとしたよ。一男は知らなかったけど、すでに1億円ものお金を稼いでいた九十九が、お金と幸せの答えを見つけてくるから「待っていてくれないか?」って言ったもんだから、一男は律義に待ってたんだね!それで会いにくかったと。

九十九と3億円の行方

実は、一男が3人の億万長者達と会った長旅は九十九が仕組んだものだった。百瀬が言うには100億円以上の資産を持っている九十九、やはりお金が欲しくて盗んだわけではなかった。ラストでは突然、3億円と一緒に一男の前に姿を現す。3億円を持って行った答えは『芝浜』だった。

お金と幸せの答え

九十九の答えは見つかりそうで見つからない。億万長者となった九十九のビジネスパートナー達も、九十九も、お金と引き換えに色々なものを失い、それでもお金から離れられることはできずに答えを探し続けている。そんな彼らが語る、それぞれの「お金と幸せの答え」は一男にとっての正解とはならなかった。

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それを全部見越して、九十九は一男に「探す旅」をさせたっぽいですよね。自分も旅を続けながら。

お金と幸せに関する発言まとめ

  • 九十九…人間は信用にしかお金を払わない、お金の実態は信用。
  • 百瀬…お金も幸せも実体がない、賭け=信用。
  • 千住…金(信用)と神(信仰)は似ている、どちらも実体がない。
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百瀬と千住は、九十九の影響で同じような考え方をしてるのかもしれないけど、元々は価値観が近くて気の合う仲間が集まった「類は友を呼ぶ」なんじゃないかな。

それから、九十九の答えの最後の1ピースは、自分を100%信じてくれる人がいること、ってことなのかな?もしくは一男そのもの。

一男と万佐子

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先ほどの流れで考えると、一男にとって必要なピースは「娘と妻」なんじゃない?厳密に言うと、一緒に暮らす笑顔の娘と妻。一男は家族との幸せに満たされていた過去を思い出しながら、奥さんの指摘を取り入れつつ奥さんの信用をいつか取り戻せるのかな?

一男は少しでも早く借金を返して普通の生活に戻りたかった。でも、妻の万佐子は、お金によって奪われたものは「欲」だと言う。

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一男の奥さん・万佐子は金銭欲や物欲はないけど、夫に対しては欲深くて、ちょっと変わった人だなという感想。だって、大金で欲深になって破滅する夫は嫌、っていうのがありがちな展開だと思うんだけど、その逆なんだもん。誠実そうな一男に求める理想のハードル高っ!

物欲よりも何よりも「お父さん」と暮らしたがっている娘の「欲」よりも、自分の理想を優先している万佐子は欲深さんだなと思っちゃいました。すべての登場人物の中で一番共感できるのが一男の娘だったもんだから、つい万佐子に文句を言いたくなるんだよね。

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最後まで読んで内容や感想をこうしてまとめてみると、信用がない人とは一緒にいられないという結果が描かれていたのだろうけど、価値観が違う=「お金と幸せの答え」が違う人とは一緒にいられないということも思い浮かびました。

一男の妻は最後まで戻ってこなかった。対して、十和子の夫は最善かどうか悩みながらも、妻にとっての「お金と幸せの答え」をそのまま受け入れて一緒に暮らしている。

「お金と幸せの答え」に「お金と幸せの答え」に正解はないから、人によって違うから、一緒にいたい人とは答えを寄せ合って生きていく。お金にも幸せにも「人」は必ず関係している。一男と共に読書で旅した私の答えはこんなところです。

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感想まとめ

ラスト近くで、やっと奥さんがどんな人なのかが描かれるので、一男の奥さんに対する思いが想像できなくてちょっと読みにくかったです。私としては、最初に少し奥さんとの回想シーンの一部でもいいから欲しかったな。

それから、全体的に遠回しな表現ばかりでモヤモヤが積もりましたが、映像化だともっとストンと分かりやすくなってそうな予感がします。

猫の名前

そうそう、「九十九はあなたの傍にずっといる」と千住が言う言葉に『青い鳥』を思い出しましたが、登場人物について書き出していたら気が付いたことがひとつ。

一男が飼っている猫、ひとりぼっちな一男の唯一の同居人である猫の名前は「若くしてIT長者になった男の名」マーク・ザッカーバーグ。この猫と名前の由来は最初の頃に登場するので、これを読んだ時は完全スル―してたけど、これってIT長者=九十九で、今でも親友と思っている九十九の代わりに猫を側に置いてたってことな気がしてきました。

一男が九十九と再会しようと行動するずいぶん前から、心はすでに九十九に頼っていた。だから、辛い借金生活から解放される3億円もの大金を九十九に持ち逃げされても、警察に駆け込むことなく、心の奥底で彼を信じて追いかけたのかなと想像。

アメリカ合衆国のプログラマ、実業家。Facebookの共同創業者兼会長兼CEO。ハーバード大学在籍中にソーシャル・ネットワーキング・サービスサイト「Facebook」を立ち上げた。

出典:Wikipedia『マーク・ザッカーバーグ』

映画や小説を2回見る時間が取れないなら、要チェック!

九十九が得意な、お金にまつわる落語。甲斐性なしの男と死神の物語『死神』、大金を拾った男と女房の物語『芝浜』をモチーフにした展開あり。予習しておくと理解するのに役立ち、読みやすくなると思います。以下は、参考資料として引用載せておきますね。

死神

復活するパターンや、夢落ち、復活後に自分でうっかり消しちゃうパターンなど、終わり方のバリエーションが豊富な古典落語。

何かにつけて金に縁が無く、子供に名前をつける費用すら事欠いている主人公の男がふと「俺についてるのは貧乏神じゃなくて死神だ」とつぶやくと、なんと本物の死神が現れてしまう。仰天する男に死神は「お前に死神の姿が見えるようになる呪いをかけてやる。もし、死神が病人の枕元に座っていたらそいつは寿命だから駄目。反対に足元に座っていたら助かるから、呪文を唱えて追い払え」と言い、医者になるようアドバイスを与えて消えた。

ある良家の跡取りの病を呪文で治したことで、男は富豪となり優雅な生活を送るものの、それもつかの間でまもなく金は底をつき、元のような暮らしに戻ってしまう。再び医者の看板を掲げるものの、病人を診れば死神がいつも枕元に。金が入らず困っていると、さる大店からご隠居の治療を頼まれた。行ってみるとまたしても死神が枕元にいるが、三千両の大金に目がくらんだ男は、死神が居眠りしている間に布団を半回転させ、死神が足元に来たところで呪文を唱えてたたき出してしまう。

大金をもらい、大喜びで家路を急ぐ男は途中で初めに会った死神に捕まり、大量のロウソクが揺らめく洞窟へ連れて行かれる。聞くとみんな人間の寿命だという。「じゃあ俺は?」と聞く男に、死神は今にも消えそうなロウソクを指差した。いわく「お前は金に目がくらみ、自分の寿命をご隠居に売り渡したんだ」。ロウソクが消えればその人は死ぬ、パニックになった男は死神から渡されたロウソクを寿命に継ぎ足そうとするが……。

「アァ、消える……」

出典:Wikipedia『死神』あらすじ

芝浜

『一休さん』『大岡越前』『熱中時代2』など色々な作品のエピソードモチーフになっている古典落語。

天秤棒一本で行商をしている魚屋の勝は、腕はいいものの酒好きで、仕事でも飲みすぎて失敗が続き、さっぱりうだつが上がらない、裏長屋の貧乏暮らし。その日も女房に朝早く叩き起こされ、嫌々ながら芝の魚市場に仕入れに向かう。しかし時間が早過ぎたため市場はまだ開いていない。誰もいない美しい夜明けの浜辺で顔を洗い、煙管を吹かしているうち、足元の海中に沈んだ革の財布を見つける。拾って開けると、中には目をむくような大金[1]。有頂天になって自宅に飛んで帰り、さっそく飲み仲間を集めて大酒を呑む。

翌日、二日酔いで起き出した勝に女房、こんなに呑んで支払いをどうする気かとおかんむり。勝は拾った財布の金のことを訴えるが、女房は、そんなものは知らない、お前さんが金欲しさのあまりに酔ったまぎれの夢に見たんだろと言う。焦った勝は家中を引っ繰り返して財布を探すが、どこにも無い。彼は愕然として、ついに財布の件を夢と諦める。つくづく身の上を考えなおした勝は、これじゃいけねえと一念発起、断酒して死にもの狂いに働きはじめる。

懸命に働いた末、三年後には表通りにいっぱしの店を構えることが出来、生活も安定し、身代も増えた。そしてその年の大晦日の晩のことである。勝は妻に対して献身をねぎらい、頭を下げる。すると女房は、三年前の財布の件について告白をはじめ、真相を勝に話した。

あの日、勝から拾った大金を見せられた妻は困惑した。十両盗めば首が飛ぶといわれた当時、横領が露見すれば死刑だ。長屋の大家と相談した結果、大家は財布を拾得物として役所に届け、妻は勝の泥酔に乗じて「財布なぞ最初から拾ってない」と言いくるめる事にした。時が経っても落とし主が現れなかったため、役所から拾い主の勝に財布の金が下げ渡されたのであった。

事実を知り、例の財布を見せられた勝はしかし妻を責めることはなく、道を踏み外しそうになった自分を真人間へと立直らせてくれた妻の機転に強く感謝する。妻は懸命に頑張ってきた夫をねぎらい、久し振りに酒でもと勧める。はじめは拒んだ勝だったが、やがておずおずと杯を手にする。「うん、そうだな、じゃあ、呑むとするか」といったんは杯を口元に運ぶが、ふいに杯を置く。「よそう。また夢になるといけねえ」

出典:Wikipedia『芝浜』物語のあらすじ

作品情報

タイトル

映画化された小説『億男』は、ヒット作『電車男』や『モテキ』などの映画プロデューサー・川村元気さんの2作目の小説。

私が買った文春文庫のあとがき解説を担当しているのは何と、九十九を演じる高橋一生さん。この物語の主人公や九十九が探し求める「お金」と「幸せ」について書かれています。

見どころ

映画は、2018年10月19日(金)から公開。キャストは、主人公役の佐藤健さん、九十九役の高橋一生さんの他、黒木華さん、沢尻エリカさん、藤原竜也さん、北村一輝さん、池田エライザさんなど。

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