第2巻「骨と石榴と夏休み」あらすじと感想

第2巻:2013年7月1日出版

あらすじ

第2巻は「夏に眠る骨」「あなたのおうちはどこですか」「殺されてもいい人」の3つの短編を収録。

「夏に眠る骨」

旭川の隣町、当麻町に出かけた櫻子と正太郎。北海道の天然記念物に指定されている鍾乳洞を見学した後、ミニ登山コースに足を踏み入れた。あわよくば動物の死骸に巡り会えると思ったのだろうか。ところが、そこで目にしたのは白骨化した女性の遺体で、正太郎のクラスメイト・鴻上百合子の行方不明となっていた祖母だった。彼女は祖父の看病に疲れて自殺してしまったのか、と思いきや実は祖父が絵に残した素晴らしい景色を見るため、現地を訪れたが、足を踏み外して滑落した事がわかった。

祖母の遺体を発見したこと、そして祖母が自殺ではなかったことが分かって、悲しいけれどほっとする鴻上は正太郎と櫻子に何度も感謝の気持ちを伝えるのでした。

Sponsored Link

「あなたのおうちはどこですか」

正太郎の部屋はエアコンが無く、唯一稼働していた扇風機も故障。真夏の深夜に喉が渇いたのでコンビニへ行くと、小さな女の子が1人、裸足で歩いている。危険だと感じた正太郎は交番へ行き、成り行きでお巡りさんと一緒に子供の家を探すことに。助っ人として櫻子も加わり、無事、自宅にたどり着くことが出来たが、女の子の母親は何者かによって殺されていた。

実は母親の交際相手の男が薬中で、しかも自宅にまだ潜んでいたのだ。お巡りさんの内海が身を挺して櫻子達を守ってくれたが、祖父から伝授されたという正太郎の護身術で犯人を取り押さえることができた。

倒れていた母親の下には収納スペースがあり、そこには小さな赤ちゃんがいて、この子はどうやら交際相手の男が父親らしい。身を挺して子を守ったということか。働かない男と母親が口論になった末の悲しい出来事だった。

包丁を持った犯人に立ち向かった正義感の強いお巡りさんこと、内海とはこれからも交友を深めていく。

 

「殺されてもいい人」

櫻子の許嫁の叔母・千代田薔子(しょうこ)は以前登場した人物。彼女の祖父が卒寿を迎えるので親戚一同集まって盛大にパーティを開くという。しかしこの祖父である東藤清次郎が困った男で親族が呆れるほどの女好き。正妻との子以外に認知している子が多い。御年90歳というのに今だに現役で、若い家政婦をはらませ妻を困らせている。

薔子夫人の祖母は東藤清次郎の妻ではなく、実は妻の妹。あろうことか妻が妊娠中に妹にも手を出していたのです。そんな妹は他界したが自殺だったという。そして息子で跡取りだと言われている慎太郎。彼は東藤清次郎の実の息子ではない。東藤家に使える使用人の妻と東藤清次郎との間に出来た子供。

所構わず手を出しているので殺意を抱く親族がいるのも事実。そんな中で行われた卒寿パーティーだったが、翌早朝に冷たくなった清次郎が発見された。遺族が集まり、警察に連絡しようとする中、自分がやったという者が現れた。心臓に疾患があるにもかかわらずED治療薬を飲ませていた者、アルコールと一緒にドリアンを提供したもの。(酒とドリアンの食合せが有害というのは迷信)。

しかし櫻子に言わせれば、その程度で人は死なないという。しかしただ1人、東藤清次郎の死に少なからず関係している人物が居た。それは妻の君子。夫の歪んだ性癖、他の多数の女と関係を持ち妊娠させ、自分に対しては一切の情はなかった。そんな夫にくすりを飲ませ続けた妻。しかし誤算だったのは直ぐには死ななかったこと。御年90歳にしてようやく彼は逝ったのですが、自然死と変わらない寿命に複雑な心境の妻ですが、全て終わったのだと、安堵の表情を浮かべるのでした。

Sponsored Link

感想

憧れの存在だった鴻上百合子と距離を縮めることが出来た正太郎は、なんだか嬉しそうですが、二人の関係はまだまだ友人以上恋人未満。それよりも鴻上は櫻子に興味があるようで、これから先、彼女と仲良く出来ないか奮闘する姿も描かれます。

櫻子を中心に正太郎と鴻上がお互いに嫉妬する複雑な三角関係がこの作品の見どころでもあります。そして警察官で正太郎の友人としてこれからも登場するようになる内海巡査?(交番勤務なので)なのかな。気さくな性格で愛想もよく、一見すると頼り無さそうに見えるけど、正義感の強いお巡りさん。

登場人物が少なかった1巻に対して、徐々に個性的なキャラクターが登場し、物語に深みが出てきて、これからの展開に期待が持てそうですね。

櫻子さんのまとめページに戻る