涙腺崩壊の結末!「旅猫リポート」原作小説あらすじ・ネタバレ&感想

福士蒼汰主演で10月26日に全国で公開されることになった今作。

有川浩の「一生に一本しか書けない物語」というキャッチコピーに惹かれ書店で購入。早速読んでみましたのでご紹介します。

※ネタバレが含まれますので知りたくない方はご注意くださいませ。

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「旅猫リポート」あらすじ(ネタバレあり)

旅に出る前のこと・・・

マンションに駐めてある銀色のワゴンのボンネットがお気に入りの野良猫が居た。普通なら車が汚れるので嫌がる人が多いけど、宮脇悟は違った。

彼は優しく声をかけてくれたり、餌も車の下にそっと置いてくれたり。居心地の良い場所を手に入れた野良だけど、ある日、車に引かれ大怪我をしてしまった。

見つけてくれた悟が銀色のワゴンに乗せて病院に行き、治るまではマンションで一緒に暮らすことになった。ペット禁止のマンションなので大家に頼み込んで「完治するまでなら」という条件で許可を取ってくれたらしい。

治ったら出ていく。そのつもりだったけど、悟は優しく居心地が良くて一緒に暮らすことにした野良。今住んでいるマンションでは飼えないので悟は引っ越しを決意し、かぎしっぽの形が数字の7に見えるこの野良に「ナナ」という名前をつけた。

実は悟は子供の頃にハチという猫を飼っていたことがあり、ナナはハチにそっくりだった。ハチは額に八の字型のぶちが入っていたからハチにしたらしい。

・・・そして引越し先では仲良く暮らしていたのだけど、5年の歳月が流れた今、悟がとある事情でナナを飼えなくなってしまい、1人と1匹は新しい飼い主を探す旅に出かけたのです。

小学校の同級生

澤田幸介は悟の小学校時代の同級生。

二人は小学生の時、捨て猫を拾い幸介が飼いたいと言ったけど、写真館を営む父親に反対されてしまい、家出をして抵抗したけど父親の同意を得ることが出来ず悟が飼うことになった。

猫の名は「ハチ」。幸介は悟の家に遊びに行けばハチに会えるし、悟が幸介の家に遊びに行く時はハチを連れてきてくれた。

ハチが悟の家にやってきて2年。小学校6年生になった二人は修学旅行で恒例の京都へ。楽しい思い出を作る予定だったのに、二日目に悟が急用で家に帰ってしまった。

修学旅行を終えて自宅に帰った幸介は、悟の両親が事故で亡くなった事を父親から聞き、家族で通夜に参列した。

悟が母親に渡す予定だったお土産を悟に渡すと、張り詰めていた糸が切れたように悟は慟哭(どうこく)。親戚の叔母に言われ、幸介は悟を自宅まで送り届けてた。

両親を失った悟は叔母に引き取られることになり、引っ越しをすることになったけど、転勤が多い叔母はハチを飼うことが出来ない。もちろん幸介は引き取りたいと言ったけど、父親は2年前と変わらず頭を縦に振ることはなかった。

ハチは遠縁の親戚に引き取られ、後に交通事故で亡くなったことを聞かされた。

そして現在、幸介は結婚し父親が経営する写真館を継いで頑張っていたけど、父親の心無い言葉で猫好きの妻が実家に帰ってしまった。

妻は舅に腹を立てているだけではなく、父親にはっきりと物が言えない自分の態度に腹を立てている事もなんとなく分かっていた幸介。

幸介が悟の猫を引き取りたいと思ったは、子供の頃に2回も引き取れなかったことが今でも頭から離れず、今回ようやく悟から譲り受けることで過去の負い目を精算できるとも考えていた。

しかし「ハチ」に似た「ナナ」を引き取れば父親に当てつけになるのでは?それなら新しい猫を探して奥さんと一からやり直したほうが良いと幸介にアドバイスする悟。

連絡をしても音信不通だった妻とは猫の話題で夫婦の問題も解決出来そうな予感。

悟はナナをケージに入れて銀色のワゴンで出発しようとした時、幸介に同窓会に誘ってくれたこと、そしてこの町にもう一度来ることが出来たことに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えた。そして一人と一匹は新しい家族を探す旅を再開したのです。

中学の同級生

吉峰大吾と悟は中学の同級生。

幸介と同様、「大切な猫を貰ってくれませんか?」というメールを受け取り、よんどころない事情とは何か疑問に抱きながらも悟の頼みならと引き受けた大吾。

中学2年の春に転校してきた大吾は体格もよく強面の顔なので近寄り難い存在だったけど、一番に声をかけたのが悟だった。

悟が居たことで転校生特有の不安は直ぐに解消され、クラスにも溶け込むことが出来た。

部活に入ってなかった大吾は祖母宅が農家で土いじりが好きなので「園芸部」があるならと言ったので、悟は教師に頼み休止中だった園芸部の顧問をお願いし2人なら始めても良いと許可を取ったという。

そう、わざわざ休止中の園芸部を再開させ、悟も同じ部に入ってくれたのだ。叔母が仕事で忙しかったので、悟は大吾の家に遊びに行くようになり、週末は泊まりに行くなど、すっかり打ち解けて仲良くなった二人。

大吾の両親は仕事が忙しいというのは口実で離婚の準備のために息子を祖母宅に預けていた。結局離婚が成立し、祖母宅で暮らすことになった大吾は親の愛情を知らない。

大吾は両親が死んだ悟のほうが可哀想だと自分に言い聞かせたけど、親の愛情を一切受けずに離婚した大吾の家庭環境のほうが辛いはずだと悟は言い、そんな言葉を聞いて初めて涙を流した大吾。

両親は予定通り離婚。どちらも息子を引き取る意思が無かったことを思春期の大吾は悟っていた。

中学3年になり、福岡へ修学旅行に出かけた悟たち。初日のホテルで親戚の住む小倉に行きたいと言い出した悟。小学生のころ、飼えなかったハチを引き取ってくれた親戚が住んでいる。

大吾は、たかが猫だと思ったけど、悟は「大切な家族なんだ・・」と言うので、じゃあ二人で抜け出して行こうということになり、ホテルのロビーを強行突破したものの、最寄りの駅で教師が待ち構えていて御用に。

こっぴどく叱られたけど、機転を利かした大吾は同情を引くような嘘を教師たちにいい、深く追求されることはなかった。皮肉にも離婚した両親のおかげだった。

そんな中学時代の思い出話に花を咲かせた悟と大吾。ナナを託そうとしたけど、大吾が最近拾ったという子猫とナナの相性が悪く、とても一緒には飼えそうにない。

悟は仕方なくナナをケージに入れて銀色のワゴンに乗せた時、嬉しそうな表情をしたのをナナは見ていた。もちろんナナも悟と別れたくなかったので、わざと子猫と喧嘩したのである。

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高校の時に出会った幼馴染の二人

杉修介と妻の千佳子は悟の高校時代の友人。富士山が一望できるペット可のペンションを夫婦で経営。

今回、やむにやまれぬ事情で愛猫を引き取って欲しいと悟から連絡があり、修介は大規模なリストラを敢行した大手企業の関連に悟が勤めていたのでそれ以上の詮索はしなかった。

ペンションでは甲斐犬の「虎丸」とキジトラ猫の「モモ」を飼っており、虎丸は修介、モモは千佳子が世話をしていた。虎丸は客が猫を連れてきても大人しく、吠えることは絶対にない。しかしナナを連れてきた悟にけたたましく吠えた。これには深い理由があった。

杉修介と千佳子は今でこそ夫婦だけど、高校時代から大学まで修介は嫉妬の塊のような人間だった。幼馴染の千佳子を悟に取られてしまうのではないかと考えていた修介は2度も悟に身を引いてくれと頭を下げた。確かに一度目は頭を下げたわけではないけど、「子供の頃から千佳子のことが好きなんだ」と打ち明ければ悟は諦めると考えた修介の姑息な手段だった。

両親が事故で亡くなり、叔母と二人暮らしという複雑な家庭環境にも関わらず優しい悟は誰からも愛されるキャラで、当然千佳子も悟の事を気に入っていた。

身を引いてくれた悟のような優しい人になりたいという憧れと嫉妬心で葛藤する修介は、引け目と後ろめたさを今も感じている。

良き友人ではあるものの、永遠のライバルだという想いは消えず、結婚した今でも暖かく迎え入れる反面、悟を目の前にすると記憶が蘇ってしまうのだ。

虎丸は主人(修介)のそうした心の僅かな動きを読み取って悟を敵だと判断し吠えてしまった、ということ。

虎丸は悟だけじゃなくナナにも吠えるので、杉家に託すことは断念し、銀色のワゴンに乗せて出発しようとした時、悟は高校時代に好きだったと千佳子に打ち明けた。今更何言ってるのよと二人が談笑している姿を見て、杉は初めて余裕の笑顔を見せた。

悟とナナが出発した後、修介は千佳子に「高校の時に悟から告白されたらどうする?」と聞いてみた。もちろんその時に言われないとわからないけど、どちらを選ぶかは迷うだろう、と。

引け目を感じていた修介は千佳子から悟と対等に見られていたことにホッとし、長年の僻みがすぅ~と取れていくのを感じた。

今度はきっと、笑顔でアイツを迎え入れてやれる、と。

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両親が眠る北海道へ

銀色のワゴンは北海道行きのフェリーに乗って悟の両親が眠っているお墓に向かった。

これが悟とナナの最後の旅になる。

フェリーは人間とペットは別々の部屋で休むことになり、ペット専用のルームにナナを預けた悟は頻繁にナナの様子を見に来ていたので、他の動物達に「過保護だ!」とからかわれていた。

でもそんなにからかうなよ、あの飼い主からはもう長くないにおいがしてるぞ・・。ナナの下に居たチンチラの一言でペットルームは静かになった。

さて、北海道に到着した銀色のワゴンは一路、悟の両親の墓へ。道中、すすきが一面に広がる場所に停車して悟とナナはすすきの中に入った時、ナナを見失った悟の言葉が心に残る。

置いていくなよ そばに居てくれよ」と。

悟は友人にナナを託そうとしたけど、本音はずっとそばに居てほしかった。

最後にどうしても来たかった両親のお墓には道中に摘んできたコスモスとセイタカアワダチソウを花生けが一杯になるほど入れて、その場を後にした。

帰り道に小雨が降り虹が出たのを見て、お墓に活けてきた草花がなんとなくレインボーカラーだと思い「ぼくらはお墓に虹を供えてきたね」とナナに話しかける悟。

二人の最後の旅に、ささやかなご褒美なのかもしれない。

主人公はもう長くない・・というのは想像できるけど、さらに衝撃的な事実が判明!

次のページでは「旅猫リポート」の結末が書かれているのでご注意を・・・