涙腺崩壊の結末!「旅猫リポート」原作小説あらすじ・ネタバレ&感想

叔母さんの家へ

香島法子は悟の叔母。姉夫婦が事故で亡くなった時に悟を引き取り、1人で育て上げた彼女。学生時代に父が亡くなったので、経済的に支えてくれたのが姉(悟の母)だった。

法子は大学法学部を卒業し、今では判事として活躍出来ているのも姉のおかげ。そんな姉の忘れ形見を自分以外が引き取ることは考えられなかった。

悟が学業を終えて一人暮らしを始めて13年、久しぶりの再会と同時に一緒に札幌で暮らすことになった二人。

「悪性の腫瘍が見つかった」という悟の連絡で、札幌から東京へ急いで飛んでいったけど、医者から言われた言葉から回復の見込みは一切なく余命は1年と聞かされた法子。

法子は悟を受け入れるために判事の仕事を辞して、法律事務所に弁護士として就職。さらにナナのために「ペット可」のマンションに引っ越してくれたのだ。

転職・引っ越し・初めてのペットなど法子にとって慌ただしい毎日が過ぎ、悟は病院へ行く回数が増えていく。

とある日、悟が叔母に「引き取ってくれてありがとう」と伝えると、思わず涙を流す叔母。引き取った時に、あんな酷いことを言ったのに・・・

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悟の本当の両親は?

幼い頃に事故で亡くなった両親は本当の両親ではなかった。生みの親は悟に食事を与えず衰弱させビニール袋に入れてゴミ捨て場に遺棄したとんでもない人間だった。

ゴミ袋が動いて不審に思った近所の住人が袋を開封して発覚。悟の両親は子供が出来なかったので引き取ったという。

ただ、幼い頃の悟に事実を伝えてしまった法子は今でも後悔の念に苛まれていた。幼い頃に両親を亡くし、それを乗り越えようとしていた悟に追い打ちをかける一言。

法子は自分が朴念仁であることを十分理解しており、大人になった悟は叔母の「ちょっぴり愛想がない」性格を熟知している。

こんな情けない叔母に「引き取ってくれたのが叔母さんで良かった」という悟の言葉に涙腺が崩壊してしまうのも無理はない。

最後の別れ

やがて悟は病院に泊まる回数も増え、体もやせ細り、とうとう入院することになった。ナナと一緒に撮った写真をカバンに詰める悟を見て、察したナナは激しく抵抗したけど悟は振り切るように部屋を出ていってしまった。

寂しそうにしている二人を見かねた法子は「外なら」ということでナナを病院に連れて行ったけど、悟と楽しい時間を過ごしてから、ナナは突然逃走してしまった。

ナナは病院を拠点に野良猫生活を始めたけど北海道の冬は寒い。車椅子で外に出てくる悟と遊ぶのが日課になったけど、悟の容態が急変し法子が病院に駆けつけた時は、ナナも事態の深刻さに気づいていた。

もう・・残された時間はない。本当はダメなんだけど、法子は外に居たナナを病室に連れてきて、悟に呼びかけた。

悟は声を出さずに(ありがとう)と唇を動かし、息を引き取った。

悟は幸せだったのかな?家に連れて帰らなきゃね、とナナに話しかける法子。

会いに来てくれた友人達

法子は悟がお世話になった人に連絡をすると、どうしても線香をあげたいという人達がいた。そう、悟がナナを託そうとした幸介、大吾、杉夫妻の4人。

4人は同じ日に法子の家を訪問し「悟とナナ」という共通の話題ですぐに打ち解け合い、思い出話に花を咲かせた。

でも、4人の所へナナを連れて行った時、悟はどうして何も言わなかったのか?

事実を話せばきっと暗く寂しい別れになってしまう。それよりも大好きな友人たちと笑顔で別れたかった悟の気持ちがよく分かる、と話す大吾・・・。

時が経ち、幸介は写真館をペットスタジオにしたらしい。大吾は新鮮な野菜を法子に送ってくれて、杉夫妻が営むペンションにナナを連れて泊まりにも行った法子。

ナナは時々悟の夢を見る。

悟「ナナはこっちに来ないのかい?」

ナナ「もう少し待って、ノリコが子猫を連れてきたから、ちゃんと教育してからだね」

猫が苦手?だった叔母が捨て猫を拾ってくるという思いがけない展開に天国の悟もビックリしているに違いない。叔母さんにとって初めての自分の猫。

そしてナナは言う、僕はノリコの猫じゃない。ずっとずっとサトルの猫なんだと。

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「旅猫リポート」の感想

この物語は悟ではなく野良猫だった”ナナ”のリポート。

微笑ましい表現ばかりで、もし猫に感情があったらきっとこんなことを考えているんだろうと思います。

さて、悟の生い立ちは想像以上に壮絶でした。生みの親は自分を捨て、育てられた両親は事故死。そして引き取った叔母に事実を伝えられ、幼い悟には重すぎる現実を背負うことに。

両親が亡くなった後、悟にとって家族は「ハチ」だけでした。しかしハチとは離れ離れになり、高校の時にハチは事故で・・・。

中学の時、友人に「大切な家族なんだ・・」と言った悟。そんな大切な家族を失いましたが、社会人になってハチそっくりの野良猫「ナナ」と出会い、悟の新しい家族に。

今度こそ、大切な家族と一緒に暮らせる・・・と思ったのにガンを宣告されてしまった悟。

そこで、ナナと一緒に新しい家族を探す旅に出ましたが、蓋を開けてみれば悟とナナの思い出旅行。

悟と別れてしまったナナですが、一緒に過ごした楽しい時間をきっと忘れないでしょう。

最後に、心に残った一文を紹介。

「7の形の僕のかぎしっぽは、通りすがりの素敵なものを全部引っ掛けてくれるはずだ」(引用:書籍「旅猫リポート」より)

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