2017年5/19に公開されるSF映画『メッセージ』の 原作小説『あなたの人生の物語』を読んでみました。感想や考察、私の解説メモと用語整理をまとめます。(※大丈夫な方はこちらもどうぞ→ネタバレを含む解説&考察へジャンプ)
ジャンル:洋画 SF エイリアン ヒューマンドラマ
映画の期待度 4.0 / 原作の満足度 3.0
おすすめ:夫婦、恋人、1人でじっくりなど
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見どころポイント!
人類より科学力が高そうな知的生物との、初めての遭遇。しかし、言葉が通じない。意味不明のエイリアン文字を解読していく、言語学が面白い。
また、エイリアン語を解読することで起こる、主人公の内面の変化が興味深い。
あらすじと登場人物
地球上のあちこちに謎の人工物(ルッキンググラス)が出現!
未知なるエイリアンが使う、人類には理解できない言葉や文字を使うエイリアンの言語を専門家が解読し、習得することで、人類とは違う世界観を体感することになる・・・。
- ルイーズ(言語学者。主人公、女性。)
- ゲーリー(物理学者。ルイーズの解読チームの一員、男性。)
- ウェーバー大佐(アメリカ軍人。主人公にエイリアン語の解読を要請。)
- ヘプタポッド(エイリアンの呼び名。)
- ルイーズの娘
映画の原作本レビュー 小説『あなたの人生の物語』
苦戦したけど、面白くなってきた
短編小説(文庫本で約100ページ)ですが、読むのに時間が掛かりました。難しくて、ややこしい~。
物理学の変分原理に対する興味から生まれた。(文庫本『あなたの人生の物語』巻末「作品覚え書き」より抜粋)
というこの物語は、専門的な用語のオンパレードで読み取りにくく、現在・過去・未来のエピソードが入り混じる(違和感があって分かりにくい)展開だったので苦戦しました。
読んでいる間は、(これと言ってドラマティックな盛り上がりもなく、静かに終わってしまったので)物足りなさを感じましたが、こうして読書記録を書こうと読み返してみると、面白みが出てきました。
ヘプタポッド(エイリアン)の姿はタコっぽいけど、物語はスルメみたいに噛むほど味が出てきます。私には、かなり硬いスルメ(困難)でしたがw
未来形で語られる娘のエピソード
パッと見ではエイリアンとのやりとりが一番目立つけど、気になるのはここ。
なぜ、まるで妄想を語っているような、未来形で語られる娘とのエピソードが(エイリアン言語の解読物語の)間にちょいちょい挟まっているのか?
読み進めて理由が分かると、なるほど。
未知なる言語を習得する過程で得てしまった、未知なる世界観(人類と違う思考回路)の影響が出ていたのですね。内面に影響する『物理学の変分原理』、このあたりが、まさにSF、科学的なフィクションだったわけです。
違和感があって読みにくい、未来や過去が混じる展開は、主人公の内面の変化っぷりを読者に体験させる作家さんの仕掛けなのでしょう。
(読んでいる感覚では、さかのぼって)ルイーズの夫はこの人だったのかぁ♪と、次第に分かってくるあたりが好きです。
後半に続きます!
繰り返し読んだ後、ラストシーンで思ったこと
静かで、穏やかそうなラストシーン。未来形で語られる物語の終わりは悲痛なものだったから、切ないな。
人類の思考回路で読む私は「苦境の未来を変えるルートを選んで欲しい」と思っちゃうのだけれど、来訪したエイリアンの思考にどっぷり浸かっている主人公の人生は、変わることはないようです。
将来、ネガティブなことが起こるかもしれないと不安になって心配をする人類達。かもしれない未来だと不安になるけど、決定している未来に突き進むのが当たり前だと思っているなら、たとえ不運な運命だとしても不安も心配も生まれないのだろうか?そんなことを考えちゃいました。
Arrival
映画化された作品のタイトルは、原作のタイトルとは雰囲気もイメージも違います。
『メッセージ』というタイトルだと、なんかそのメッセージ自体が重要に思えちゃいますが、原作を読んだ限りでは、そういう内容ではありません。(もしかしたら映画はそういう内容なのかもしれないけど)
それもそのはず、 原題は『メッセージ』ではなく『Arrival』でした。Arrivalの意味を調べてみると「到着、到来、出現」などの文字が並んでいます。
タイトルとしてのArrivalは、どの意味なんだろ?エイリアンの到来、謎の物体の出現、その他ネタバレ的な意味など、複数の意味が含まれているのかしら?
うむ~、これはますます、映画を観てみなきゃ!という気持ちになります。
面白そうな予告編、サスペンス調の映画に期待!
読書後に予告編を見てみましたが、イイ雰囲気ですね!SFビジュアル的に。
謎の空飛ぶ巨大物体、観ていて不安になるBGM、未知との遭遇に?怖がって震えている登場人物。人類よりも科学力が高そうな来訪者が、何をしたいのか分からない緊張感と恐怖!
ちなみに・・・
小説では、映画の予告編みたいな緊迫感はなく、(エイリアンが設置した通信装置が、人類の領域である牧草地に置いてあって、それを人類のテントが覆っているので)敵地侵入するアウェー感もなく、新言語の解読に集中している様子でした。
そのあたりの物足りなさと、読みながら気になっていた「無防備に接触したら(未知のウィルスとか)危ないんじゃないの?」という素朴な私の疑問が、映画では解消されているようですね。
ネタバレ注意!【私の解説&考察メモ】
- ヘプタポッド(エイリアン)は、なぜやって来た?
- 現在・過去・未来を整理
- 小説に登場する用語まとめ