もくじ (文字クリックでジャンプ出来ます)
絶体絶命の元子!「黒革の手帖」の結末が怖すぎる
元子の手持ちは5000万円、カルネを売れば2000万円くらいにはなりそう。すみえの慰謝料として橋田から貰う予定の1000万円、そしてこちらも橋田から譲り受ける予定の梅村を売却すれば1億6800万円、合計で2億4800万円になる。
元子は早速、ルダンのオーナーと交渉を重ね、2億6000万を提示されたが、約6000万根切り、2億円を切る価格で交渉が成立した。
4000万を手付金として支払い、オーナーは契約が破断になった場合は更に4000万の支払いを命じるように元子に念書を書かせた。そう、もし元子が支払えなければ8000万円をオーナーに支払わなければいけなくなる。
この4000万と言うのは法外な金額だが保証人が居ない元子に対して確約がほしいと考えるオーナーの真っ当な言い分。期日までに支払えば何も問題はないのだが・・。
そう、1ヶ月後にちゃんと梅村の名義が橋田から元子になっていれば・・・
多人数による壮大な詐欺
ルダンのオーナーに対して支払期日が迫る中、橋田と連絡がつかなかった元子は苛立ちを隠せなかった。
橋田が捕まったのは支払期日ギリギリ。更に橋田の口から衝撃的な事実を打ち明けられる。実は「梅村」の所有者は梅村キミのものだと言うのだ。
確かにごく短期間で橋田名義になった時はあったが、錯誤による抹消が行われたという。これは当人同士が「あれは間違いでした」と申し出れば登記を訂正する事ができるという。
元子は「私に土地を渡すと言ったじゃないの!」と言ったが橋田「確かに言ったが土地を渡すとは言ってない。引導を渡すといったのさ。貪欲のガリガリ亡者根性に」と。
元子は慌てて法務局へ確認に行くと、橋田名前が朱線で抹消され、錯誤によると書かれていた。
当てにしていたお金が入らないのでルダンのオーナーに泣き寝入るが手付金の4000万と違約金の4000万合わせて8000万円を支払わなければいけないが、カルネを売っても足りない。
回収が出来ないとわかったオーナーは早速、仮差押えを裁判所に申請したことで、カルネは営業を続けることが出来るが勝手に売買は出来なくなってしまった。
カルネに行くと黒服の男たちが店を占拠し、経営者が変わったことを告げられ、ルダンのオーナーが総会屋の高橋勝雄に譲り渡したらしい。
このままでは営業できないので高橋の会社に出向くことになった元子。会社は山田波子が運営する「クラブ・サンホセ」があるビルだ。波子と言えば、カルネの上の階でバーをオープンさせようとしたが楢林の援助が休止したため、破断になり、元子を恨んでいた女の子。カルネはサンホセの支店にするらしい。
「銀座で商売できないようにしてやる!」
この言葉をあなたは覚えていますか?
その後は総会屋の社長に拾われ、渋谷で割と大きなバーのママをしていたのだ。さらに社長の人脈を利用して壮大な詐欺を元子に仕掛けたということ。
高橋の会社に出向いた元子は「カルネを手放す」という念書を書かされそうになったが、そんなものを書くわけなく、波子が登場したことでまた彼女と取っ組み合いの喧嘩となり、その時に元子は気を失い、股から血が・・・。
元子は医科進学ゼミナールの元校長で江口議員の叔父が書き残した裏口入学の証拠を手に入れた時、取り合ってくれた安島と関係をもった。彼とはそれ以降連絡が途絶えてしまったが、実は彼も詐欺の一端を担っていた人物。元子は数年ぶりに人を好きになったのに騙されたのである。
叔父が書いたとされる裏口入学のノートは元子がネタにすると思って撒いたエサだった。思えばルダンが売りに出されるという情報をリークした銀座の情報屋もグルだったのかもしれない。
橋田と梅村の女将もグルになり、登記簿の書き換えを行った。ちなみに元子に近づいた梅村の女中・島崎しず江も梅村の内情を元子に知らせるために送り込んだ人物。
ルダンのオーナーも総会屋の社長と顔見知りなのだろう。元子が購入する意思を示した時、もう一人買いたいという人がいると、常套手段であるが購入を焦らせる手口。元子が違約金4000万を承諾した経緯はここにある。
さて、本当の結末はどうなったのかというと、流産してしまった元子は救急車で運ばれ、搬送先の病院はなんと楢林産婦人科医院。執刀するのはもちろん楢林謙治と復帰したと思われる中岡市子。楢林は脱税が発覚して元子を恨んでいるに違いない。
「助けて!この二人に殺される!」
そんな絶叫で締めくくられた今作でした。
この作品のポイント
夜の銀座を舞台に様々な人種がおりなす心理的で壮大なストーリー。客とママの関係、ママとホステスの関係、ママ同士の心理的な対決だけでも面白い作品ができそうですが、本作はそれだけではない。
銀行の架空名義口座の問題や、産婦人科医院の脱税、政治家と予備校の関係や裏口入学の斡旋など社会の闇に鋭く切り込んだ松本清張の渾身の作とも言える。
銀座のママと男たちとの駆け引きが面白く、ママのゆすりの手口も巧妙で大胆。銀座の頂点に君臨するかにみえた元子の急落ぶりは意外だったのか、それとも予想できたラストか。何度もドラマ化されているのは、そうしたサスペンス要素が強いからかもしれません。